2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒューマノイドの高安定移動を可能にする摺足動作の実現と実環境での適応的摺足制御
Project/Area Number |
24760218
|
Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
小枝 正直 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 准教授 (10411232)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ヒューマノイドロボット |
Research Abstract |
現在のヒューマノイドロボットの大半は足踏みを繰り返して移動しているが,短距離移動には不向きで安定性に難があり,狭領域・劣姿勢移動は困難である.このような状況での移動方法の一つとして,摺足運動による移動が提案されている.摺足移動は脚の上下動が不要で,かつ両足が常に地面に接地しているため安定した状態で移動することが可能である.我々はこれまでにヒューマノイドロボットによる摺足移動を実現してきたが,この動作は実験的に得られたもので根拠が薄かった.そこで平成24年度は,まずヒトが摺足をする際に活発に活動すると思われる筋付近の筋活動を調査した.筋電計測にはP-EMG plusを使用した.左脚の8箇所(大腿筋膜張筋,大腿四頭筋 外側広筋,大腿二頭筋,半腱様筋,大腿四頭筋内側広筋,下腿三頭筋腓腹筋 外側頭,下腿三頭筋腓腹筋内側頭,前脛骨筋)にセンサを取り付け,直立状態と屈脚状態で左周り45,90度程度,摺足方向転換を行った.方向転換の際は踵・つま先に重心を置く「回れ右」的な動作とした.計測結果から,回転初期時に臀部の筋活動が活発で,これが回転力を与えていると見られる.また脛・脹脛の筋活動は回転中つねに活発であるが,これはバランスをとるために使っていたと考えられる.この結果を検証するために,シミュレータを用いて実際と同様の摺足動作が実現されるかを確かめた.ODEを用いた等身大のヒト型シミュレータを構築した.関節は下半身のみで各脚6自由度,全体で12自由度とし,リンク長や重量配分は日本の成人男性24から29歳をモデルとした.ヒップ関節の各軸にトルクを与えて動作を観察したところ,ピッチ軸回転時に実際にヒトが行った摺足と同様の回転,最終姿勢となった.このことから,摺足方向転換にはヒップのピッチ軸が大きな役割を果たしていること,またここで用いた制御方法が摺足方向転換に有効であることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,1.摺足移動に必要なモデルの改良と安定性検証,2.人の摺足モーションの計測と回転メカニズムの解析,3.環境を考慮した摺足による適応的摺足制御を予定していた.1に関しては,今回の筋活動計測実験とシミュレーションによる検証により,新たなモデル構築へ一定の目処がついた.安定性については,以前の研究で用いたZMPもしくは重心位置の安定余裕を使って評価する予定である.2に関しては,今回の筋電計測と実験で得られた実験と結果により,方向性が定まった.3については,まだ実験的には手を付けていないが,制御方策の案はできている.具体的には,以前提案した摺足方向転換を組み合わせた摺足移動法を連続的に使って,指定した軌跡上の代表点と現在位置とを比較し,その差分に応じて次の方向転換のに角度にフィードバックすることで追従させることで,環境に適応した摺足移動が実現できると考えている.まずは,シミュレータで実験を行い,問題点の洗い出しとパラメータチューニングを完了させた後に,実機のヒューマノイドロボットで実験を行う予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年に達成できなかった,適応的摺足制御の実装にかかる.今年度に構築した等身大ヒト型シミュレータ上で実装を行って実験をする予定である. ここで問題点の洗い出しとパラメータチューニングを完了させた後に,以前購入した実機ヒューマノイドロボット(Robovie-PC)で実験を行う.実機ロボットでの自己位置の計測には,本学の大型モーションキャプチャを用いる方法,以前購入した床面分布圧センサ(LLセンサー)を用いる方法,3次元画像センサ(例えばKinectなど)を用いる方法などが考えられるが,精度やリアルタイム性などを考慮して使い分ける.適応的摺足制御を実機ロボットで行うために,フィードバック制御ループを組み込む必要があるが,Robovie-PCでのリアルタイム動作生成はまだ完成していない.今年度の調査で,単体サーボモータの直接制御の方法が分かったため,これを使ってまずはすべての脚関節のをプログラム的に操作可能な状態にする.その上で各種外部センサ群により環境計測し,これらの情報と組み合わせて環境に適応した摺足移動を実現する.2013年7月に開催される国内会議(ROBOMEC2013)と国際会議(CLAWAR2013)での発表が決定しており,今年度の研究内容について報告して多方面から意見を聞いて,必要があれば今後の方針を修正する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現有の床面分布圧センサでは,計測可能面が狭く,ヒトの摺足移動時に足裏に掛かる圧力は計測できなかった.そこで,靴底に敷くタイプの足圧分布計測装置を購入し,様々な状況・環境での摺足移動時に掛かる圧力を計測し,実験精度を向上させる.またこの実験では,被験者が移動しつつ計測するする必要があるため,実験に支障をきたさない極力小型で軽量なコンピュータも同時に購入する予定である.実機ロボットでの適応的摺足制御の,実環境での有効性,実用性を示すためには,適当な形状の床面を準備する必要があるため,予算の一部をこの製作に用いる予定である.またロボットの位置を計測するための外界センサなども購入する予定である.その他,研究成果を国内学会および国際学会での発表のための旅費や,投稿論文の出版費として使用する予定である.
|