2013 Fiscal Year Research-status Report
包括的な力学モデルに基づく月惑星探査ロボットの走行システム設計に関する研究
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24760222
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石上 玄也 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (90581455)
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Keywords | テラメカニクス / ロボティクス / 最適設計 / 粒子画像計測法 |
Research Abstract |
本研究では,優れた不整地走破性能を有するロボット走行システムの実現を目的とし,【1】不整地走行における包括的な車輪力学モデルの構築,【2】確率的アプローチを用いた走行システムの最適設計手法にそれぞれ取り組んでいる.平成25年度の研究実績について以下にまとめる. (A)不整地走行における車輪と砂地との力学モデルについて,より詳細な力学データ(車輪圧力分布や砂地への沈下量,接触角度)を測定することを目的として,車輪内蔵型センサシステムを開発した.これはシート型圧力センサと光センサを車輪表面に実装したものであり,センサ取り込み装置,電源,通信機器を全て車輪内部に搭載した自立センサシステムである.前年度に製作した車輪走行試験装置を用いて,この車輪センサシステムの有用性を評価するとともに,多様な走行条件下において車輪の圧力分布を精密に計測することが可能となった.これらの成果をもとに,従来の車輪力学モデルの改善に着手した. (B)粒子画像計測法(Particle Image Velocimetry, PIV)を用いた砂地と機械との相互力学関係の可視化に着手した.PIVによって,機械の動作に伴って移動する砂のベクトル場を推定することが出来るため,砂深度方向への圧力伝搬メカニズムや,砂の破壊面の幾何学形状の推測が可能となった.この手法と(A)の車輪内蔵型センサシステムを組み合わせることにより,車輪・砂間の力学モデルをより正確に解き明かすことが可能となる. (C)不整地移動ロボットの動力学シミュレータ開発について,国内の大学および独立行政法人所属の研究者とともに近年の動力学シミュレータの研究動向調査を実施し,今後の開発アプローチを策定した. (D)昨年度より取り組んでいる車輪の最適化設計について,走行効率を最大化する車輪幅と車輪径の導出方法を提案し,国内学会にて一定の評価を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記(A)および(B)は,当初の研究計画には含まれていなかったものの,本研究課題である「包括的な車輪力学モデルの構築」におけるモデル精度の向上に大きく寄与するものであり,研究推進の上で効果的な手法を導入できたといえる.(C)に関しても,専門分野の研究者と積極的に情報交換を行うことによって,より幅広い視点から研究に対するフィードバックを得ることが出来た.(D)として述べたように,車輪最適化設計手法についても国内学会にて一定の評価を得ている.平成25年度に目標にしていたシミュレータ開発は完了出来なかったものの,本研究を通じ新しい知見や実験手法を獲得することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては,車輪内蔵型センサシステム,PIVなど平成25年度に新たに獲得した実験手法を活用し,力学モデルの改善を行う.このモデルをもとに動力学シミュレータの構築に着手する. また車輪の最適化設計手法と同様のアプローチを応用することにより,走行システムの重要な要素であるサスペンション機構の最適化設計についても取り組む.走行システムの設計パラメータ群を不確定性パラメータとみなし,ロボットの走行性能評価関数を確率的解析アプローチ(Stochastic Response Surface Method)により,多項式近似する.同近似式の入力値として上記の設計パラメータ群を用いることにより,計算コストを低減した最適化設計が可能になると期待できる.さらに,研究代表者が有するロボットテストベッドに対し,数値解法によって得られた最適な走行システムの解を適用し,実機実験によって本手法の正当性と確認する.
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