2012 Fiscal Year Research-status Report
フェムト秒パルス収束電子線によるワイドギャップ窒化物半導体の時空間同時分解計測
Project/Area Number |
24760250
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
羽豆 耕治 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30367057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光物性 / 時空間同時分解カソードルミネッセンス計測 |
Research Abstract |
時間空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)装置を用い、ハライド気相エピタキシャル法により成長されたGaN基板の欠陥ドメイン近傍の評価を行った。SEM像には顕著に見えない、表面よりやや深い場所にあるクラック構造や、貫通転位に起因する暗線、暗点がバンド端(NBE)発光の強度マッピングイメージ像で顕著に可視化された。また、スペクトル形状には場所的不均一生はないものの室温の発行寿命に大きな差があることが分かった。 局所計測で得られるNBE発行強度の温度依存性を計測した。室温における発光寿命は、比較として評価した欠陥密度の高いGaNテンプレート(サファイア基板上のGaNエピ層)の値よりも長く、効率も高かった。室温における等価的内部量子効率と、室温における発光寿命は線形関係を示した。これは、NBE発光強度が室温では非輻射再結合寿命により制限されることを示しており、半導体の発光過程として妥当である。すなわち、STRCLにおいて打ちこみ電子数がパルスあたり1から2個であれば弱励起条件下にあると言える。また、弱励起条件下において室温の輻射寿命がおよそ10~40ns程度であった。局所計測を行うことにより、広域計測でのGaNの室温での発光寿命および等価的内部量子効率の最高値よりも高い値が得られた。すなわち、貫通転位を避けられただけでなく、非輻射再結合中心の正体であるGa空孔複合体密度の低い部分の計測が可能になったことを示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
化合物半導体の発光特性を、サブマイクロメートル台の空間分解能とピコ秒台の時間分解能でスペクトロスコピックに可視化することは、構成元素や不純物の不均一取り込みによる混晶組成の不均一性やキャリア密度分布を定量化したり、転位など欠陥構造の発生メカニズムや非輻射再結合寿命への影響を解明する上で重要である。本年度は、禁制帯幅が広く深紫外線波長で光る半導体を励起できる「フェムト秒レーザ前面入射型高輝度光電子銃」の開発に注力し、光電子量を従来の背面入射型に比べ1桁改善した。これと2次電子検出器の改良により、当該光電子銃を走査型電子顕微鏡に組み込んだ時間空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)計測装置の空間分解能も電子検出効率も約10倍に改善した。 これら一連の成果により、加速電圧を広範囲に変化させられる、高空間分解能STRCL測定が可能になった。また、低加速電圧(6.5 kV)においてサブマイクロメートルの空間分解能を維持しつつ、表面近傍の構造に対するSTRCL測定の感度が向上することを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
空間分解能を更に高くするべく、点線源型光電子銃の開発に着手すると同時に、深紫外線波長域に禁制帯幅を有する多様なワイドバンドギャップ半導体の局所的な観察への応用を推進してその局所ダイナミクスの解明を試みる。具体的には、AlN、AlGaN、BN系窒化物半導体の研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)