2012 Fiscal Year Research-status Report
高結晶性有機薄膜の静電スプレー成膜と高速動作可能な有機トランジスタの作製
Project/Area Number |
24760255
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小野島 紀夫 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (40500195)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / 高結晶性有機薄膜 / 静電スプレー堆積法 |
Research Abstract |
本研究課題は,有機エレクトロニクスの普及・発展の鍵を握る,低コスト・省エネルギーな溶液プロセスで高速動作可能な有機トランジスタを作製することを目的としている.実施期間内に2つの研究テーマ:1. 高結晶性有機薄膜の静電スプレー成膜技術の確立,2. 静電スプレー堆積法を用いて作製したボトムコンタクト型有機トランジスタの高速動作化,を設定して研究に取り組んでいる. 平成24年度の研究実績として以下の2点を述べる:1. 静電スプレー堆積法を用いて大面積(数百ミクロンサイズ)TIPSペンタセン結晶ドメインの形成に成功したこと,2. 単結晶ドメインを活性層に用いたボトムコンタクト型トランジスタを作製し,電界効果移動度0.1 cm^2/Vs以上を達成したこと(チャネル長5ミクロン). 1. TIPSペンタセン(有機半導体)溶液の作製に,アセトンとオルトジクロロベンゼンの混合溶媒を用いることにより,結晶ドメインサイズの大幅な拡大に成功した.また,静電スプレー堆積プロセスの成膜温度を60度以下にすることでクラックの発生を防ぎ,溶液供給スピードをシリンジポンプにより制御することで1分間という短時間での成膜に成功した.これらは印刷技術に必須の高速・大面積・高均一成膜につながる成果といえる. 2. TIPSペンタセン結晶ドメインの大面積化に成功したので,単結晶ドメインを活性層に用いたボトムコンタクト型トランジスタを作製し,チャネル長5ミクロンで電界効果移動度0.1 cm^2/Vs以上を達成した(チャネル長50ミクロンでは0.5 cm^2/Vs以上).静電スプレー堆積法では,シャドウマスクを用いて有機半導体活性層を直接パターニングし,また溶液プロセスと気相プロセスの中間的方法のため乾燥工程が不要である.したがって本研究で得られた成果は,学術的意義だけでなく実用的にも重要な結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施期間内の本研究の目的:(1)高結晶性有機薄膜の静電スプレー成膜技術の確立,(2)静電スプレー堆積法を用いて作製したボトムコンタクト型有機トランジスタの高速動作化,それぞれについておおむね順調に進展している. (1)について,平成24年度に行った研究の結果,静電スプレー堆積法を用いて数百ミクロンサイズのTIPSペンタセン結晶ドメインの形成に成功している.しかしながら,大面積で高均一にデバイスを作製するためにはさらなる結晶ドメインサイズの拡大が必要である.そこで平成25年度に行う研究では,ミリメートルオーダー以上の大面積結晶ドメインの形成を目指して取り組む. (2)について,平成24年度に行った研究で,単結晶ドメインを活性層に用いたボトムコンタクト型トランジスタを作製し,電界効果移動度0.1 cm^2/Vs以上を達成している(チャネル長5ミクロン).交付申請書に記載した研究目的:動作周波数が1 MHz以上の論理回路(RFIDなど)への適用を見据えて,線形領域の実効移動度が0.1 cm^2/Vs以上,オン/オフ電流比が10^4以上のトランジスタ特性(チャネル長5ミクロン以下)を実現すること,をおおむね達成する成果を得ている.しかしながら,ソース・ドレイン電極と活性層蓄積チャネル間の寄生抵抗の影響が大きく,単結晶ドメインを活性層に用いることによる真の性能は引き出せていないと考えられる.また,現在のデバイス構造は寄生容量が大きく,高周波特性の劣化が考えられる.そこで平成25年度に行う研究では,これらの寄生成分の影響を抑えるためのデバイス構造の設計および実証を目指して取り組む.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに数百ミクロンサイズのTIPSペンタセン結晶ドメインを静電スプレー堆積プロセスにより形成し,トランジスタチャネルを単結晶ドメインで覆うことに成功している.今後さらに結晶ドメインサイズを拡大するためには,結晶核形成の位置制御と分子配向の方位制御を行うことが重要と考えている.本研究では,さらなる大面積化(ミリメートルオーダー以上)を行うために静電スプレー堆積プロセスで用いるシャドウマスクに温度勾配をつけることで結晶成長の素過程を制御することを考えている.また,静電スプレー堆積プロセスでは堆積状態(ドライまたはウェット)が結晶ドメインのサイズに強く影響するため,溶液作製条件をさらに検討していく. 現在,単結晶ドメインを活性層に用いたボトムコンタクト型トランジスタ(チャネル長5ミクロン)で電界効果移動度0.1 cm^2/Vs以上を達成している.今後さらなるトランジスタ特性の向上を図るためには,ソース・ドレイン電極と活性層蓄積チャネル間の寄生抵抗を低減する必要がある.また,高周波特性を改善するためには寄生容量を低減することが重要である.これらの課題を解決するために,本研究ではトップゲート構造の適用を考えている.トップゲート絶縁膜の作製には,静電スプレー堆積法を用いる予定である.したがって,今後の研究課題として,(1)トップゲート絶縁膜の形成条件の確立,(2)トップゲート絶縁膜/有機半導体界面の電子物性制御,に取り組んでいく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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