2013 Fiscal Year Annual Research Report
電界操作型次世代磁気記録デバイスの動作可能温度の向上に関する研究
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24760262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野崎 友大 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10610644)
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Keywords | 交換結合 / ブロッキング温度 / Cr2O3 / Fe2O3 / 電気磁気効果 / スパッタ |
Research Abstract |
本研究は、ナノオキサイドレイヤーと呼ばれるCr2O3とFe2O3を含む1nm程度の極薄酸化物層で得られた高いブロッキング温度(動作可能温度)を拠り所に、エピタキシャル成長したCr2O3薄膜で350K程度の高いブロッキング温度を達成することを目的とした。初年度は、良質なCr2O3薄膜やCr2O3/Fe2O3積層膜を作製することに成功した。最終年度ではこれらの積層膜を用いて、より詳細に磁気特性の検討を行った。Cr2O3薄膜の動作可能温度を決めているのはCr2O3のネール温度と、Cr2O3/強磁性体界面の磁気結合が切れる温度(ブロッキング温度)の2つであり、前者はCr2O3中のCr-Cr間の結合を強化することで、後者はCr2O3の磁気異方性を向上させることで増加させられる。ナノオキサイドレイヤーで見られた高い動作可能温度は、単にCr2O3に高いネール点を持つFe2O3を磁気的に結合させた結果ではなく、Cr2O3への格子歪やCr2O3の配向性の影響も含めた複合的な効果であったことが明らかになった。これらの効果を、エピタキシャル成長したCr2O3薄膜を用いて検証を行い、下記の3点を明らかにした。(1)Cr2O3/Fe2O3積層体を作製すると、磁気的な相関を介してネール温度を上げることができるとともに、磁気異方性も増加しブロッキング温度も上げることができる。(2)Cr2O3はa軸長を伸ばすひずみを入れることで磁気異方性が向上し、ブロッキング温度が向上する。(3)磁場印加方向を磁化容易軸から意図的にずらすことによって、ブロッキング温度をネール温度付近まで増加させることができる。本研究では、350K以上のブロッキング温度は達成できなかったものの、ネール温度とブロッキング温度を個々に制御することに成功し、今後のさらなる動作温度の向上の指針を得ることができた。
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