2012 Fiscal Year Research-status Report
コグニティブ無線に適した学習型占有率測定法の最適設計
Project/Area Number |
24760293
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田久 修 信州大学, 工学部, 助教 (40453815)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コグニティブ無線 / ランデブチャネル / 周波数共用利用 |
Research Abstract |
本課題は、周波数資源の高効率利用を目指し、低利用率の周波数チャネルを高速に発見し、送受信機の接続チャネルの整合性を高速化する、学習型占有率測定法の検討を進めている。平成24年度では、次の実績を上げた。 1.学習型占有率測定法における検出誤りを含む場合の検出精度の評価:より実環境を想定し、チャネルの利用を判断する検出器に検出誤りが生じた際の学習型占有率測定法への影響を理論解析により明らかにした。解析の結果から、誤り検出が発生した場合においても、学習期間をより長く設けることで、誤り検出の影響が緩和できることが明らかになった。 2.占有率測定結果の変動を高速に検出し、未来の占有率測定予測に役立てる、消去機能付き占有率測定法の確立。チャネルの占有率が変動する環境に対して、過去の影響を除去する消去機能付きの占有率測定法を提案した。提案法は、占有率の変化に対して敏感に反応し、未来の低占有率チャネルの発見に有効である。特に、占有率の変化を検出する方法として閾値を用いた方法を確立した。占有率の変化を認識できる確率を理論的に導出し、認識確率を最大限に高める適切な閾値を導出した。 3.ISM-BANDにおけるスペクトルアナライザを用いたパケット解析:スペクトルアナライザを用いたISM-BANDにおける周波数と電力の観測実験を行った。電力変動から、パケット及び受信確認応答の有無を識別することで、実効的なチャネル利用率を測定した。測定結果では、パケット長の変動から、レート解析が可能であることが分かった。そして、無線LANの自動レート制御が機能することで、同一周波数干渉への耐性を確保していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初実施計画の9割以上を実施することができた。具体的には、課題2における、占有率の変化に対する適応理論の確立では、消去機能付き占有率測定法を確立することで、占有率の過渡的な変化に対して高い追従性を確保した。また、課題3における実環境測定では、スペクトルアナライザによる周波数と電力の観測実験を実施し、電力強度と無線LANにおけるMAC層プロトコルの仕様と照らし合わせ、既存システムの実効的な利用状況を観測した。ソフトウェア無線機(USRP)を利用した学習型占有率測定法の実装では、既にUSRPを用いて空間上の信号を取り込む機構の開発は完了している。一方、平成25年度の課題1の計画に含まれていた、信号検出に誤りが含まれる場合における、占有率測定への影響について、先行して取り組みを進めた。理論解析に基づきその影響を解析的に明らかにすることができた。 以上の成果達成に対して、平成24年度までに完了できなかった課題として、課題1におけるチャネルの利用状況の数式モデルの確立である。当初想定よりも、環境変化に対する利用状況の変化が激しく、普遍的に適用できる数式モデルの確立は困難であった。このように一部課題が残る結果となったが、その対策としてデータベース化を利用した、利用状況解析の検討を進める予定である。データベースを確立することで、高い環境適応性を有する占有率測定が実現できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度から残された課題1のチャネル利用状況のモデル化については、データベースを利用したチャネル利用状況の観測に置き換え検討を進める。課題は、チャネルの利用状況の変化をとらえるための統計解析法の確立である。そのため、占有率を記録する際の時間的な分解能の適切な設計、さらにはヒストグラム解析を進め、各環境別に傾向をとらえるようにする。 次に、セカンダリシステムがプライマリシステムの利用していない周波数資源を再利用する二次利用を想定した際に占有率測定の変化を観測する検証を進める。セカンダリシステムはプライマリシステムと異なり、低占有率のチャネルの発見に優れた機能を有している。その結果、容易に低占有率に集まりやすい状況となるため、特定チャネルに対して過負荷の状態となる。その対策として、セカンダリシステムのチャネル利用を含めた占有率測定を進めることで、セカンダリシステムの利用による占有率の変化を高速に検出し、負荷の集中を回避する。 また、USRPによる実無線環境の構築では、具体的にチャネル利用状況の観測と接続チャネルの切り替えを実装する。ここでは、無線LANシステムを複数用意して、複数チャネルが並列に動作する環境を構築する。実無線環境において、接続チャネルを動的に切り替えながら低い占有率チャネルを発見する機構を構築する。USRPの実装において、接続チャネルの切り替えや占有率測定の解析において、遅延が生じやすい。このような遅延は、チャネル探索の時間の長期化や占有率変化のへの適応性の低下をもたらす。実無線環境において、実装上生じる遅延がどのように占有率測定に影響を与えるかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に導入したソフトウェア無線機(USRP)が想定よりも低価格で購入することができ、その余剰金が、平成25年度に繰越されている。この余剰金を含めた次年度の使用計画は下記を予定している。 1.計算機環境の拡充:無線通信環境を模擬する計算機シミュレーションを実施するための計算機の拡充を予定している。これは、研究計画2年目において、評価対象の規模が大きくなり必要となる計算量が大きくなることを予想している。計算機をモニタするために備え付ける液晶モニタ等の周辺機器の購入も予定している。 2.USRPの拡充:平成24年度に購入したUSRPをさらに複数台導入することで、占有率測定を空間的に隔てた異なる地点において、同時測定をすることで、空間次元方向の利用状況の観測を進める。 3.専門書籍の購入:学習アルゴリズムや最適化理論などの専門書を購入する。 4.対外発表のための旅費や学会登録料:2年目になり、多くの研究成果が得られているため、国内外において広くその成果を公表する。
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Research Products
(10 results)