2012 Fiscal Year Research-status Report
常温下熱機械変位方式高速高感度光パワー標準器の開発
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24760326
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
雨宮 邦招 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (60361531)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 計測機器 / 光カロリメータ / 光吸収体 / レーザパワー / 計測標準 |
Research Abstract |
1.熱型標準器の高速高感度化方式の評価と選定:熱型光パワー標準器の温度センサ部に採用する機械的変位検出方式について、有限要素法による数値解析などを元に応答感度、応答速度を評価し、その最適化設計の探索を行った。温度上昇に伴う機械的変位発生法としては、性能や製作・オペレーションの難易度も加味して、熱膨張率の異なる2種類の材料を貼り合わせたバイメタル方式を主に検討した。機械変位検出に特有のノイズや電力置換の等価性も含めて評価した結果、有感面積5㎜角を有する並進変位のMEMS構造で、従来器よりも応答感度・応答速度とも1桁以上の性能向上が見込まれる体系を見出した。一方、微小変位の検出法として当初想定していた光てこ技術は、並進変位の検出には必ずしも適切ではないため、ファブリペロ干渉計方式の変位計測法を採用することとし、必要な測定系の整備に着手した。 2.波長感度一様性の高い光吸収体の原理検討: NiPウルトラブラックの超低反射率および波長感度一様性の原理解明を目指し、これまでの文献で公表されている表面構造や光吸収層のサイズ、黒化層の組成の情報を元に、FDTD法による光の伝播のシミュレーションを行った。その結果、光吸収体表面のピット構造のサイズ、アスペクト比、吸収層厚、基板材料、光入射角が反射率に影響を与えることがわかり、実験的に得られた反射率データを説明できる構造の存在を明らかにした。また、可視から近赤外に渡っての波長感度一様性を保証するための評価法についても提案した。本内容は論文としてApplied Optics誌に投稿し、受理・掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MEMS型センサの設計については、被測定レーザビームを漏れなく捉え切れるサイズでありながら、高速高感度化が達成できる構造を見出すことができたため、次年度中にもセンサ試作に着手できる下地が整った。また同MEMSセンサの変位検出方式の選定も完了して必要物品の調達・整備を進めており、次年度早々にも基礎実験を開始できる見込みである。 光吸収体部分については、NiPブラックの極低反射率および波長感度一様性の原理を明らかにすることができた。同タイプの光吸収体を採用することで、光カロリメータの波長感度一様性保証が達成できると考えられ、着実に前進できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
高速高感度熱型光パワー標準器の試作:初年度において検討したMEMSセンサの最適化設計に基づき、機械変位検出方式熱型光パワー検出器の心臓部を試作する。具体的にはまずMEMSセンサの仕様を確定して試作を進める。完成したMEMSセンサには熱リンク(熱伝導接着)に注意を払いながら補償用ヒータの実装を行い、熱変位計測系も組みつけて熱量計測の体系を構築する。この試作実機について応答感度、ノイズ特性、応答速度など基本特性を評価する。光吸収体の実装まで完了できていれば、電力置換熱量計測の等価性なども従来方式の国家標準器との比較を通じて評価する。 光吸収体の試作と熱型標準器への実装:初年度に数値シミュレーション等で得られた知見に基づき、NiPブラックと同様の構造を有した光吸収体を試作する。試作した光吸収体はSEMによる構造観察を行なう他、国家標準トレーサブルな標準反射板との絶対反射率比較や斜入射系での反射率特性評価を行い、理論予想の検証を行なう。光吸収体はMEMS熱量センサに熱伝導接着もしくは直接黒化を施すことで実装し、熱的特性への影響なども確認・評価する。 得られた成果については、学会発表等を通じて公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度はMEMSセンサの方式選定・設計まで順調に進んだ一方で試作の着手までは及ばなかったこと、及び微小変位検出方式については見直しが必要と判明し再検討が年度末近くまでかかった結果、測定系に必要な物品の納品が次年度早々にずれ込んだことなどから次年度使用額が発生したが、既に大半の物品は初年度中に発注手配済みである。 また次年度は実際にMEMSセンサの試作を行う予定であり、評価の必要性も考えると比較的多くのリソースを割く必要があると考えられる。次年度使用額の一部はこの試作に加算充当することで研究計画を加速させることとする。
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Research Products
(3 results)