2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760329
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
椿野 大輔 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (00612813)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 制御工学 / 分布定数系 / 偏微分方程式 / 状態変換 |
Research Abstract |
本研究では,偏微分方程式でモデル化される分布定数系に対して,不連続性を有する状態変換を用いた系統的な制御器設計法を提案することを目的としている.特に,制御対象を有限次元システムの可制御正準形の構造に類似した,安定化が容易な形にすることを考える.その状態変換を具体的に導出することが,最も重要な課題である.平成24年度は,熱伝導などの拡散現象を記述する放物型偏微分方程式でモデル化される分布定数系の制御問題に重点をおいて研究を行った.得られた成果は以下の通りである. (i) 空間に分布する入力をもつ1次元放物型偏微分方程式に対して,2階偏微分を含む状態変換を用いて,制御器設計法を導出した. (ii) 境界で結合されている2つの異なる1次元放物型偏微分方程式に対して,不連続関数を核とする積分項をもつ状態変換を新たに提案し,制御器設計法を導出した.また,片側の安定性があらかじめ保証されている場合は,システム全体ではなく,部分的な変換だけで安定化が可能であることも同時に示した. どちらの結果においても得られる制御器は状態フィードバック則によるものである.制御則を特徴付けるゲインは閉ループ系の収束率を決定する設計変数を含む線形偏微分方程式の解に帰着される.さらに,この方程式は数値計算により容易に数値解を得ることができる.よって,期待する性能(収束率)を設定し,それに応じた方程式を数値的に解きゲインを計算するというような,系統的な制御器設計手順を提供している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,様々なクラスの分布定数系に対して状態変換を用いた制御器設計法を確立することである.本年度は,放物型の方程式に重点において研究を行ったが,既に述べたいくつかの成果が得られた.特に,境界結合系の安定化問題については,不連続な積分核を用いた状態変換を新たに提案することで,任意の収束率で指数安定化する制御器の設計に成功し,非常に大きな進展が得られた.この結果は,次年度以降で双曲型の方程式を扱う際にも有用な知見をもたらすことが期待できる. しかしながら,計画に含まれていた高次元の空間領域で定義された放物型分布定数系の安定化については,十分な成果を得ることはできず,課題が残ることとなった.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は,当初の計画通り放物型の方程式に加え,双曲型の方程式の安定化についても考察してゆく.ただし,放物型分布定数系については,本来の計画であった導出した制御器の制御性能解析に加え,本年度に残った課題である多次元領域上でシステムが定義される場合の安定化についても引き続き考察する.放物型および双曲型の線形分布定数系についての知見を十分に得ることで,最終年度の非線系問題の考察へと繋げていきたい.なお,研究遂行と並行して本年度得られた結果について,国際学術雑誌への投稿と,国際会議による発表を予定している. 多次元領域上の問題については,これまで1次元放物型分布定数系の場合の拡張としてとらえていたが,単純な拡張では十分な結果が得られなかった.よって,異なる視点が必要となることが予想される.一つのアプローチとして,空間離散化を用いて一度集中定数系で近似する.そして,既に多くの結果が得られている常微分方程式の正準形の理論から課題解決の手がかりを模索することを検討している.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では,交付申請書に記載した通り,数値シミュレーション用の計算機を購入予定であった.しかしながら,購入予定の計算機の更新が本年度は十分に行われず,満足する性能ではなかったことから,一旦研究室で所有している計算機を使用し,平成25年度に新たな計算機を購入することとした.そのため,計算機費用に相当する予算が,次年度使用予定額として計上されている.以上より,次年度の研究費の使用計画については,計算機購入が当初の計画と異なるのみで,その他の変更はない.
|