2013 Fiscal Year Research-status Report
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24760329
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
椿野 大輔 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (00612813)
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Keywords | 制御工学 / 分布定数系 / 偏微分方程式 / 状態変換 |
Research Abstract |
本研究は、偏微分方程式でモデル化される分布定数系に対して、不連続性を有する状態変換を用いた系統的な制御器設計法を提案することを目的としている。特に、制御対象を有限次元システムの可制御正準形の構造に類似した、安定化が容易な形に変換し、安定化制御則を導出することが主たる研究課題である。前年度に引き続き平成25年度も、熱伝導を代表とする拡散現象を記述する放物型偏微分方程式でモデル化されるシステムを対象とした。得られた成果は以下の通りである。 1. 不連続な係数をもつ放物型方程式を特殊な場合として含む境界結合系に対して、不連続積分核をもつ状態変換を用いた出力フィードバック制御器の設計法を導出した。これは、前年度得られた状態フィードバック制御器をさらに拡張したものである。これより実装の面でより現実的な制御器の設計が可能となった。 2. 従来の手法では扱えなかったすべての空間領域上の点での状態値に依存する項をもつ放物型方程式に対して、1 のものとは異なる不連続性を有する積分核をもつ状態変換を提案し、状態フィードバック制御則を導出した。 どちらの手法においても、所望の収束率を設定し、数値的に解くことが容易な方程式の解から、制御器を設計するという系統的な設計法になっている。1 の一部は、国際会議 52nd IEEE Conference on Decision and Control において発表を行った。2 についても国際会議に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放物型偏微分方程式でモデル化されるシステムの安定化については、多くの成果が得られたといえる。特に、研究実績の概要で挙げた 1 の境界結合系の安定化では、状態フィードバック制御器設計における境界条件の影響や、出力フィードバック制御器における積分核の不連続性の影響など、当初の想定になかった多くの問題が存在することが明らかになった。これらの問題の考察により、本課題の具体的な研究計画としては遅れることになったが、本課題が目指す、状態変換に基づく分布定数系の安定化のための基礎理論の構築としては、有益な知見が多く得られた。これらは、現在研究が遅れている双曲型偏微分方程式で記述されるシステムの安定化を考察する際、有益な情報となることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた放物型偏微分方程式の安定化だけではなく、双曲型偏微分方程式の安定化についても考察を進めたい。前者では、全ての点での状態値に依存する項をもつ場合について、現在までに得られている理論をさらに発展させる予定である。特に、現状では方程式に含まれる係数への制約が厳しいため、積分方程式論を中心とした線形作用素論を駆使し、その制約をなくす、もしくは緩和して行きたい。後者では、境界結合系だけでなく、全ての状態値に依存する項をもつ双曲型偏微分方程式の安定化について、放物型の場合に得られた知見をもとに研究を進めて行く。どうちらにおいても、一般論としての理論構築だけではなく、実在のシステムに対して、数値実験などによる理論の有効性検証も検討している。なお、空間全体に依存する項をもつ偏微分方程式の安定化は、あるクラスの連立偏微分方程式で記述されるシステムに対して、単一の境界制御入力だけで安定化が可能となるなど、多くの応用が期待できる。上記の研究課題の進捗状況に応じて、当初の計画にあった非線形問題も取り組んで行きたい。得られた研究成果については、これまでと同様に国内・国際会議において発表を行い、学術雑誌への投稿も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の報告書に記載した通り、本年度に小規模の数値シミュレーション用計算機を購入予定であった。しかしながら、購入を希望していた計算機の本年度中の納入が困難となったことや、研究代表者が本年度末から次年度途中にかけ在外研究を行うことになったため、購入を次年度にすることになった。そのため、その相当分が次年度使用分として生じている。 平成26年度の予算使用計画は次の通りである。物品費:本研究は理論研究が主体であるため、主に必要となる物品は、制御理論・数理解析などの書籍である。それらに加え、上記の計算機購入(200千円程度)を検討している。旅費:2度の国際会議、および2度の国内会議参加をそれぞれ予定している。人件費・謝金・その他:論文投稿やそれに関わる英文校正のための費用を計上している。
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