2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760334
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 智昭 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90515115)
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Keywords | 制御工学 / システム工学 |
Research Abstract |
前年度の研究実績では,放物型非線形偏微分方程式のモデル予測制御系設計手法及び縮小写像法と呼ばれるモデル予測制御問題の高速数値解法を構築した.一方,Navier-Stokes方程式は運動量保存式と質量保存式から構成されており,運動量保存式は放物型非線形偏微分方程式で記述されるが,圧力を表す未知変数を含んでいる.この圧力変数は連続の式と呼ばれる質量保存式(拘束条件)によって決定される未知パラメータである.Navier-Stokes方程式の数値解法の代表例としてSMAC法(Simplified Marker and Cell method)がある.SMAC法とは,連続の式が満足されるように逐次未知圧力パラメータをアップデートしながら,流速変数からなる運動量保存式を解く計算方法である.連続の式(拘束条件)の取扱いが特殊であるため,前年度までに構築されたモデル予測制御系設計手法が直接,単純に適用できるわけではない.そこで,本年度の取り組みとして,Navier-Stokes方程式のモデル予測制御問題を適切に定式化し,解析的にその停留条件を導出した.得られた停留条件に対してNavier-Stokes方程式の数値解法でよく用いられるスタッガードメッシュ(staggered grid)を採用し,その差分化を行った.導出された停留条件において,共状態に関する時間発展方程式とその拘束条件が,Navier-Stokes方程式の運動量保存式と質量保存式と各々双対な関係であることに着目して,SMAC法と縮小写像法を組み合わせることによって,Navier-Stokes方程式のモデル予測制御問題を解くための新しい数値解法を構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では,一般化された放物型非線形偏微分方程式のモデル予測制御問題の定式化を行い,停留条件と呼ばれる評価関数が最小となるための必要条件を解析的に導出し,その高速数値解法を構築した.次年度では,Navier-Stokes方程式で記述される流体システムに対して初年度で構築された制御系設計手法の適用を試みた.Navier-Stokes方程式における未知圧力パラメータの取り扱いを工夫する必要があり,SMAC法と縮小写像法を組み合わせることで,Navier-Stokes方程式のモデル予測制御問題に対する新しい数値解法を構築した.これまで,概ね計画通りに研究が進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
当年度までに確立された放物型非線形偏微分方程式のモデル予測制御系設計手法を他のクラスの非線形偏微分方程式に適用できるように拡張する予定である.まず,シュレディンガー方程式と呼ばれる複素状態変数を用いて量子ダイナミクスを記述する支配方程式に対して,同様にモデル予測制御系設計問題を定式化する.評価関数を複素状態変数とその共役複素数の内積で記述することにより,適切に問題の定式化が行える.さらに,これまでの研究成果と同様にして,変分法と部分積分を有効活用することにより,停留条件の導出が可能であり,同様の数値解法の構築が可能であることを示す.一方で,双曲型の非線形偏微分方程式に対しても同様にして,モデル予測制御系設計手法の構築が可能であることを示す.時間に関する2階微分を含むシステムモデルに対して,変数変換により放物型のモデル予測制御系設計問題に帰着できることを示し,これまでに得られた研究成果と同様にして,双曲型非線形偏微分方程式のモデル予測制御系設計が可能であることを示す.
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