2012 Fiscal Year Research-status Report
超離散力学アプローチによる非線形分布定数系に対する高精度制御法の開発
Project/Area Number |
24760339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
甲斐 健也 東京理科大学, 基礎工学部, 講師 (60419471)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 離散力学 / 非線形 / 分布定数系 / 数値計算 / 制御 |
Research Abstract |
本研究課題の初年度である平成24年度では,分布定数系に対する離散力学の基礎理論構築を目指すことを目的として,次のような研究テーマに取り組んだ. (1)時間変数のみを離散化した力学モデルである「離散時間力学」の手法を応用し,空間変数も離散化した「離散力学」の基礎概念を提案した.具体的には,時間・空間の離散化方法,離散変分法,離散Lagrangian,離散Hamiltonの原理などの基本原理を定義した. (2)離散Lagrangianに対して離散Hamiltonの原理を適用することによって,離散力学で最も重要であり,システムの振る舞いを記述する「離散Euler-Lagrange方程式」を導出した. (3)分布定数系の重要な物理例である「Euler-Bernoulli梁」に対して,離散Euler-Lagrange方程式を導出した.さらに,離散Euler-Bernoulli梁のモデルについて,von Neumannの安定性解析を行い,数値的に安定なパラメータ条件を導出した. (4)計算機を用いて,様々な初期条件・境界条件の下で離散Euler-Bernoulli梁の数値シミュレーションを行った.その結果,Euler-Bernoulli梁の解析解と同様の振る舞いを示すことが確認できた. 以上のような研究結果より,離散力学の基礎理論が構築でき,さらに数値シミュレーションによって,その有用性が確認できた.提案手法によって,これまでに提案されていない,全く新しい分布定数系へのアプローチを提供できると考えられる.本年度での研究結果は,国際学会・国内学会での発表,雑誌論文への投稿を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では,離散力学の基礎理論を構築することを目的に研究活動を行ってきたが,当初の計画通りにおおむね順調に進展しているといえる.その理由としては以下が挙げられる. (1)従来の時間変数のみを離散化した「離散時間力学」の概念を応用し,時間と空間の両方を離散化する「離散力学」を構築するためには,空間方向の離散化ならびに変分が必要となる.その方法としては様々なものが考えられるが,提案した方法は従来の方法の自然な拡張であり,理論的にも扱いやすいものであった為,理論展開が上手く進む結果となった. (2)変数が増えることに起因して,離散力学の変分計算は非常に繁雑となることが予想されるが,提案した離散化方法を用いることにより,変分計算が効率的に計算でき,その結果,簡潔な形で離散Euler-Lagrange方程式を導出することができた. (3)離散Euler-Lagrange方程式をEuler-Bernoulli梁へ応用し,数値シミュレーションを行ったが,提案手法で得られる離散Euler-Bernoulli梁のモデルは数値計算が行いやすく,計算時間もあまり掛からない為,効率的に数値シミュレーションを行うことができた.また,von Neumannの安定性解析を適用することができ,数値的に安定なパラメータ条件が得られたことも大きな成果であるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では,分布定数系の新しい離散化モデルとして離散力学を提案した.しかし,制御という概念はまだ含まれていない.そこで,平成25年度以降では,システムに外力を加え,その外力を用いてシステムを駆動して制御を行うことを目指していく.そのためには,離散Lagrange-d’Alembertの原理,離散Legendre変換が必要となってくるので,それらの概念の構築を行う.そして,外力を加えた離散Euler-Lagrange方程式を定式化し,制御問題を非線形最適化問題として定式化する予定である.また,有効性を確認するために,提案手法を梁や膜などの分布定数系に適用し,制御目標が達成されることを数値シミュレーションで検証する.さらに,従属変数だけではなく,独立変数も離散化した「超離散力学」の構築を目標として,理論展開を進めていく計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では,理論の検証として数値シミュレーションを行う必要があり,大規模な最適化問題を効率的に解く必要性が発生する.その為,計算機の購入を計画している.また,学会で研究成果を対外的に発表したり,打合せ等で他の研究者と連携を取って研究を進めていくため,国外・国内出張を予定している.さらに,研究成果がまとまり次第,随時雑誌論文に投稿することを考えており,その際の論文掲載料として研究費を使用する.
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