2013 Fiscal Year Research-status Report
デコヒーレンスフリー量子情報処理のためのシステム制御理論
Project/Area Number |
24760341
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 直樹 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (40513289)
|
Keywords | 量子系 / デコヒーレンス / デコヒーレンスフリー部分系 / 量子メモリ / 制御理論 |
Research Abstract |
1年目(2012年度)の成果は次である:量子系の状態が量子的ノイズ(デコヒーレンス)の存在下でも保持されるような「デコヒーレンスフリー部分系(DFS)」が存在するための条件を、対象が一般の「線形系」である場合に明らかにした。2年目では、この成果をさらに発展させ、次の3つの成果を得た。(1)DFS内に保持された状態をどのように操作できるかを、トラップされた原子系の場合に明らかにした。この系は量子計算のための典型的なプラットフォームであり、「操作=計算」である。結果、1(連続)量子ビットに対しては任意の操作が可能であることを示した。(2)もとの対象系がDFSをもたないとき、補助系を用意して、全体系がDFSをもつための設計法を与えた。とくに、振動子系において、具体的な設計法を示した。(3)DFSは、状態保持のためのデバイスすなわち量子メモリとして機能する。そこで、メモリDFSへの状態の書き込み・保持・読み出しを適切に行う必要がある。本研究では、この一連のプロセスをロスなしで実行するためのプロトコルを、一般の線形系で明らかにした。とくに、制御理論における「伝達関数のゼロ点」および「ゼロダイナミクス」の概念が設計のために本質的に有用であることを見いだした。以上の成果のうち(1、2)は、前年度の成果を加えて論文としてまとめ、IEEE Transaction on Automatic Control に受理された。(3)の成果は論文としてまとめ、投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年目の計画は基本的に「DFSの設計論」に関するものであり、この意味で、上記の成果(1、2)は予定通りに得られたものである。他方、成果(3)は当初は計画していなかった内容であり、量子メモリの研究分野において重要な知見を与えるものであると考えている。事実、得られた成果は既知のプロトコルを一般化し、さらに制御論の観点から統一的な見方を与える、見通しの良い一般的設計論となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の成果(1、2)で説明した通り、2年目までの研究計画は順調に遂行されている。3年目は、さらにDFSにフィードバック制御などの適用を目指す計画を立てている。それを実行するための準備は整っている。同時に、新たに得られた量子メモリに関する成果(3)を具体的な系に適用し、その有用性を検証したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費の予算に関して、当初の計画から差額が生じたため。 次年度の旅費予算に組み込んで使用する。
|
Research Products
(11 results)