2012 Fiscal Year Research-status Report
ハイボリュームフライアッシュコンクリートの初期強度の改善とひび割れ抵抗性
Project/Area Number |
24760349
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
吉武 勇 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (10335771)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 石炭灰 / 石灰石 / コンクリート / ひび割れ / 耐久性 / リサイクル |
Research Abstract |
石炭火力発電所から定常的に排出されるフライアッシュ(FA)は,資源の保全や再利用といった環境的観点から,その有効活用が求められる.FAをセメントの一部代替置換して用いると,コンクリートの水和熱の低減や施工性の改善,これに伴う体積変化(温度・収縮)の低減を期待することができ,長期材齢においてポゾラン反応を示すことから,組織構造を緻密にして強度発現し,耐久性にも優れた建設材料である.一方,初期材齢においては,実質的な水結合材比(W/B)が大きくなり,強度発現が緩慢となる.特にセメント質量に対して高い置換率のハイボリュームフライアッシュ(HVFA)コンクリートでは,その傾向が顕著となる.この問題に対して,初期強度改善効果のある石灰石微粉末を適量添加するHVFAコンクリートを考えた.さらに骨材もすべて石灰石起源のものを用いることで,この解体後のコンクリート塊がセメント原料の一部となるような完全リサイクル化も考慮に入れた. 本研究では,石灰石微粉末の単位添加量を50kgとし,さらに細・粗骨材に石灰石を用いたFA置換率50%のHVFAコンクリートをレディミクストコンクリート工場の実機プラントを用いて作製した.このHVFAコンクリートについて初期材齢を中心とした一軸引張強度試験を実施し,さらに他の力学性状を調べながら力学性状を実験的に評価した.特にHVFAコンクリートは養生環境の影響を強く受けることから,標準養生の試験に加え,夏期・冬期に打設・養生したコンクリートについても同様の試験を実施した.これらの試験結果を用いて,3次元温度応力解析を実施しマスコンクリートへの適用性を調べた.その結果,長期的には比較に用いた標準コンクリートと同等性状の強度発現性が得られるものの,コンクリート構造の形状・寸法によっては,初期材齢の引張強度の低さに起因した温度ひび割れに留意する必要があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究の特徴のひとつに,骨材全量を石灰石起源のものを使用することにある.細・粗骨材ともに石灰石を使用しているレディミクストコンクリート(生コン)工場は近隣に一工場しかなく,計画段階において製作を予定してしていた.配合選定と2回目までの試験体製作が終わったところで,生コン工場集約化に伴い同工場が閉鎖となり,予定してたHVFAコンクリートの実機製作の見直しが必要になった.昨秋には閉鎖した工場を所有する会社の別工場に石灰石を搬入し,これまで同様に製作できることになったが,これらの試験体製作では,骨材タンクを入れ替えが必要になるため,複数日にわたる多様な配合の試験が困難となり,研究計画の見直しが必要となった.
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Strategy for Future Research Activity |
コンクリート製作を行う生コン工場の条件変更に伴い,複数パターンのHVFA配合の試験ができないことから,配合の絞り込みを行うことにする.特に初年度に実施し水結合材比50%程度の汎用レベルのコンクリート配合では,初期強度発現が著しく緩慢であったことを踏まえ,実機練り可能なレベルで,最も水結合材比の小さいHVFAコンクリートに注力して,引き続き同様の実験を行う予定である.さらにこれらの実験結果を基に,市販の温度応力解析ソフトウェアに利用できる形で力学性状・温度性状・変形特性をモデル・定式化し,このHVFAコンクリートのマスコンクリート構造物への適用範囲を検討していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に必要とする機器・型枠等は初年度に製作済みのため,これらを用いて配合を換えたHVFAコンクリートの製作・試験を継続的に実施する.これらの成果をまとめて,HVFAコンクリートの研究が盛んな北米の学会や主要論文誌に研究成果を適宜発表していこうと考えている.
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