2012 Fiscal Year Research-status Report
都市広域対する災害避難シミュレーターの高効率化および機能拡張
Project/Area Number |
24760359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 集団避難行動 / マルチエージェントシミュレーション / 高性能計算手法 |
Research Abstract |
2012年度において,次の2項目について研究を進めた.一つ目は2012年度研究計画にあるエージェントの能力の改良であり,周囲の環境把握や検索能力を付加・強化し,またエージェント同士の相互作用について改良を行った.二つ目は,当初計画では2014年度に割り当てられていた大規模都市域でのシミュレーションに対する高性能計算機能を実装である.これらの結果の詳細について以下に記す. 最初の項目は,エージェント避難シミュレーションの現実性と信頼性を強化するものである.改良前のシステムにおいては,エージェントは周囲1mの状況しか把握する能力できず,検索能力や他との相互作用は低いものであった.しかしエージェントの視覚的認識範囲を30m~100m程度に増やし,高解像度境界認識論理の実装,避難可能な経路の解析能力の実装により,エージェントの把握能力は飛躍的に向上した.開発されたアルゴリズムにより,エージェントは視覚情報のみにより目的地に到達することが可能となった (これはあらかじめ目的地への情報が必要ないことを意味する.).また,衝突回避能力の実装は,群衆を形成した際の無駄な経過時間を削減し,正確な避難時間の予測を可能とした.また,異なった応答や情報量を区別した人々のモデルを行うために,住民,訪問者(観光客など),誘導員(警察官,消防員等)の3つに分類可能とした.基礎的研究として,避難時間を減少させるため誘導員の行動の有効性を検討し,総人口に対して約0.5%の誘導員を導入することで,多くの人命が助かることが解った.今後,より詳細な検討を行う予定である. 大規模都市域での避難シミュレーションを可能とするため,高性能並列計算手法が導入された.このような改良により,京コンピュータを用いた予備性能テストにおいて,2048CPU使用時まで,線形なストロングスケーリングが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画で2012年度に割り当てられた項目は全て完遂された.加えて,2014年度に割り当てられていた大規模都市域問題に対する高性能計算手法の導入に関しても本年度に行うことができた.この計算手法の導入を本年度に行うことができたため,今後の検証においても効率的にシミュレーションを行うことができ,計画よりも進捗は進んでいると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度には,避難行動の移動手段として車の導入,ベクターデータ地図に基づく自主的な経路検索,開発されたシステムの事例適用を行う予定である.車による避難行動は離れた場所への移動手段として最もよく用いられるものであるため,大規模都市域での避難シミュレーションでは必要な機能である.これを導入するためには,道路幅や進行方向(一方通行などの規制)などの詳細な地図情報が必要であり,このようなデータの抽出は現状の格子状のデータでは難しく,車による避難行動の実装には道路ネットワークの格子状のデータからベクターデータ地図の自動構築が必要である.このベクター地図は,より精度の良い避難過程をモデル化するために自己学習型エージェントの実装にも利用されることとなる 当初計画では,非常時避難時の人の認知過程は2013年度に実装される予定であった.この認知過程の導入の一年の延期は,道路ネットワークのベクター地図の欠如によるためである.この認識過程の実装するために,エージェントには目的地へ到達するための複数経路を見出す能力や道路幅や地域の人口などの情報を基にしたリスク因子を評価する能力が必要である.これらの必要な情報は,現状の格子状のデータでは難しい.故にベクター地図の実装が2013年度に先行して行わなければならない課題である. 当初計画において,京コンピュータ上での大規模都市域の避難シミュレーションの高効率化は2015年に行われるはずであった.避難前時間の削減事由(対象領域での可能な自動車数,日中と夜間での避難行動の違いなど)の確認を行う予定である. 研究対象地域として,2011年3月11日での宮城県相馬市,石巻市の間の沿岸地域を取り上げる.提案手法の信頼性を向上させるために,モンテ‐カルロシミュレーションも行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多くの利用者が共有しているスパーコンピュータ上で,並列コードのデバッグを行うことは難しい.並列コードの開発,デバッグを効率的に行うためのワークステーションの購入を2013年度の物品費として120万円を計上する.また,成果を学会などで発表したり,旅程中でのコード開発のために,高性能ノートパソコンも物品費として20万円計上する.また,消耗品として,データ保存用HDD,書籍,ソフトウェアなどの購入費として,30万円を計上する. 旅費としては,スペインで開催されるInternational Conference on Computational Science (ICCS2013)へ参加を予定しているため,そのための海外旅費として45万円を計上している.また,国内で開催される土木学会等の学会へ参加するために,15万円を計上している.
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