2013 Fiscal Year Research-status Report
都市広域対する災害避難シミュレーターの高効率化および機能拡張
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24760359
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
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Keywords | 集団避難行動 / エージェントシミュレーション / 動的に変化する避難環境 / ハイパフォーマンスコンピューティング / 夜間避難 |
Research Abstract |
以下は2013年度に達成した主な事項である: 衝突回避アルゴリズムの実装と検証; エージェントの,動的に変化する環境との相互作用能力の改良; 被害時環境のモデル化の,統合地震シミュレータとの統合; 従来法で考慮されなかった要素を考慮するための,大規模都市領域でのモンテカルロシミュレーション; 道路ネットワークのベクトル地図の自動構築手法の実装. ORCA algorithm (Berg et al. 2011)の実装により,エージェントが,歩行者が従う人口密度・歩行速度関係を,十分な人口密度において再現することを確認した.これにより,本コードが緊急時の人間行動を再現することを確認した. 地震被害下や津波浸水時など非常時の道路状況の不確実性は避難時間を左右する.このモデル化のため,避難環境を高解像度格子とグラフにより表した.格子は,非常時の道路環境を,グラフは通常時の道路ネットワークを表す.エージェントはふさがった経路を視覚的に認識し,グラフの情報を用いて避難経路を再設計するよう改良された.地震被害の自動モデル化のため,本コードは統合地震シミュレータと統合された. 適用例として,構造物の地震被害,津波浸水,旅行者多数の場合,電灯が少ない場合の夜間避難など,あるいはこれらの組み合わせの避難時間への影響推定を試みた.個々のシナリオに対し,50㎞2に分布した75000のエージェント・400ケースからなるモンテカルロシミュレーションを,京コンピュータ3200計算ノードを用いて実施した.これにより,本コードが,既往の手法では不可能な,人間の複雑な相互作用を伴う高解像度な避難環境を必要とする避難シミュレーションを可能とすることを示した.結果からの示唆の一例として,ある状況下では電灯の設置により,避難時間が有意に短縮されることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2013年度初頭に計画したすべての事項は無事達成された.もともと計画していた試験的シミュレーションではなく,考慮すべき多数のシナリオについて詳細かつ高品質のシミュレーションを実施することが出来た.計画した事項と高品質のシミュレーションを達成したことは,当初の計画より大きく進んでおり,プロジェクトの進行程度として(1)を選択できるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度に遂行すべき事項は,乗り物と歩行者の相互作用の実装の完了,誘導員エージェントが任務を共有・動的に更新するためのアルゴリズムのデザインと実装,避難過程をよりスムーズ・迅速に行うための方策を定量的に評価するための適用例の実施である.以下に各項の詳細を示す. 2011年の津波後,津波避難に自動車の使用を許可するかの議論が起きている.許可できる乗り物数には制限があり,それは人口や道路状況に依存する.乗り物数の影響,都市の各ブロックでの自動車避難スケジューリングの定量的評価を目的として,本コードを改善する.自動車と歩行者の相互作用を実装し,観測データによる妥当性検証を行う.妥当性が確認されれば,本システムは上記の目的に適用可能となる. 祭りなどのイベント時の緊急避難は,多数の旅行者に関わるため,高知市のような都市にとって重要となる.津波発生時に旅行者を避難場所へ誘導することは,特に夜間の場合,容易ではない.誘導員の動員も考えられるが,道路の被害状況が不明であるためにリスクが高い.このリスクは誘導員が被害状況の共有,住民への旅行者の手助け要請により低減できる.これらのシナリオを調べるため,誘導員が任務を共有し,助かる旅行者人数を最大化する経路を計画し,計画を状況に合わせて調整できるアルゴリズムをデザイン・実装する予定である. システムが完成すれば,避難過程をよりスムーズ・迅速にするための方策を定量的に評価するための,複数避難シナリオのシミュレーションへと適用できる.まずは,対象都市領域における最大許可乗り物数と,歩行者の避難を妨げないような自動車避難スケジューリングの検討を目指す.次に,夜間の津波時の,旅行者への手助けの効果を定量的に評価する.特に,誘導員,情報共有能力を持った誘導員,住民を用いた場合の効果をそれぞれ評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、可視化用ワークステーションを購入予定であったが、本年度はシステムの開発に注力しており、可視化は結果の是非を確認するための簡易なもので十分であったため、次年度に購入することとした。次年度は高度な可視化により、より詳細な解析結果の検討を行う予定である。 大規模避難シミュレーション解析結果の後処理や可視化のため,ワークステーションの導入が必要である.人間と自動車の相互作用を野外観測し,分析するため,高品質なビデオカメラ,周辺機器,画像解析ソフトも必要となる.必要な知識を得るため,マルチエージェントシステム,アルゴリズムデザイン,データ解析と可視化のための書籍も必要となる. 研究結果は国際会議・国内会議において報告予定である.現時点で参加予定なのはCOMPSAFE2014とAOGS2014である.
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Research Products
(6 results)