2014 Fiscal Year Research-status Report
都市広域対する災害避難シミュレーターの高効率化および機能拡張
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24760359
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 津波避難 / 自動車を使用した避難 / 自動車・歩行者相互作用 / ハイパフォーマンスコンピューティング / スケジューリングと優先順位付け |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度に達成した主な項目について述べる.以下に要点を示す. 1. 自動車と歩行者の相互作用の実装と妥当性検証 2. 開発したシステムを,避難過程を迅速かつ円滑にするための避難計画の有効性の定量的な推定へ適用 津波避難時に自動車を使うことは禁止されているものの,2011年の東北地方太平洋沖地震における津波の際には,多くの避難者が,徒歩による避難では時間が足りないと判断し,車を使って避難した.現在,沿岸部の地方自治体および災害管理部門は自動車を避難に使うことを認めることを検討している.明らかに,避難できる自動車の数には限界があり,それは人口,人口統計,道路状況などに依存する.甚大な被害を抑えるために,自動車の最善の利用方法を研究することが求められる. 避難過程を改善するために,複数の異なる自動車利用計画を定量的に評価することを目的として,自動車の導入により避難シミュレーションコードを高度化した.自動車モデルは,高速道路での交通観測データを用いて妥当性が検証されている.自動車と歩行者の相互作用が避難時間を増加させるため,その相互作用モデルも実装した.観測データと数値解析結果の比較から,実装したモデルが細い路地における自動車と歩行者の相互作用をよく再現していることが確認できた.開発したシステムの性能を実証するため,石巻市における徒歩・自動車避難のシミュレーションを複数ケース実施した.6.5kmx6.0kmの領域を解析対象とした。最初の10分間のうちに自動車が避難を始める場合,人口の25%程度に自動車使用の許可を与えることができ,その結果地震発生から40分後までに避難を終了できる人数が6%増加した.このケースでは,自動車使用者はランダムに選択されている.次に,自動車を必要とする人々,すなわち高齢者や妊娠中の女性が優先的に自動車を利用できるとした場合,有意な改善を見ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このプロジェクトの実施過程は「おおむね順調に進展している」と判断できる.その理由として,2014年度初頭に計画した事項はすべて実行された.さらに,文献調査によれば,この研究は細い道路にて自動車と歩行者の相互作用を実装した最初の例となる.
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に実施を計画している項目は,実装したアルゴリズムの整理と改善,京コンピュータでの性能を改善するためのコードチューニング,高層ビルから/への避難の実装,研究内容の国際誌への投稿である.各項目の詳細を以下に示す. コードの整理と実装したアルゴリズムの改善はシステムを堅牢なものとし,長期にわたる使用,および他の研究者と共用していくという観点から重要である.過去三年の間に,より高度化されたエージェント,ハイパフォーマンスコンピューティングへの拡張,自動車エージェント,自動車と歩行者の相互作用など,いくつかの機能がシステムに追加された.これらにかかわるアルゴリズムはより堅牢で高速なものへと改良されるべきである.さらに,3つの機能のインターフェイスも,プログラミングを専門としない他の研究者と共用するために,わかりやすいものへと改良する必要がある.整理されたシステムは,アルゴリズムを京コンピュータのアーキテクチャに沿う形でチューニングされる予定である.これらの改善とチューニングにより,実行時間を50%程度削減できる可能性がある. ビル避難のシミュレーションの基礎的なモデルを改良し,新宿のような超高層ビル街における緊急避難をシミュレーションできるようにしたい.高層ビルにおける迅速かつ円滑な避難は火事や地震災害において人命を守るために重要と考えられる.目的は,高層ビルの内部環境の詳細なモデルと,その環境と相互作用できるエージェントをシステムに組み込むことである.これにより,地震や火事により物体が散乱した状況を考慮してシミュレーションすることができる.また,新宿のような都市において,1万人が超高層ビルからビルの外の狭いスペースに出てきた場合の混雑を検討する予定である.
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Causes of Carryover |
平成26年度において予定していた、1つの国際学会での2名分の発表を、実際には行わなかった。該当する発表は、27年度において改めて行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シミュレーション結果の保管のため,大容量のNAS(network attached storage)ハードディスクを複数購入予定である. 研究結果は,いくつかの国際・国内学会にて発表予定である.現在投稿を予定している学会は,ICEM2015 と PRIMA2015である.
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