2012 Fiscal Year Research-status Report
津波に対する橋桁の流出防止システムの設計に関する研究
Project/Area Number |
24760370
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
中尾 尚史 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (50514171)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 津波 / 橋梁 / 作用力 / 水路実験 |
Research Abstract |
本年度は,発生した津波の特性や,津波により橋梁に作用する力の発生メカニズムを把握するために,文献等による被害分析および水理実験により検討を行った. 文献等による被害分析により,津波には段波状の津波(波の勾配が大きい津波)と,徐々に水面が上昇する津波(波の勾配が非常に小さい津波)があり,前者の津波が橋梁に作用して橋桁が流出する場合は橋桁が裏返って流出し,後者のような津波が橋梁に作用して橋桁が流出する場合は橋桁が裏返らずにそのまま流出することが分かった.このことから,津波による橋桁の流出を防ぐためには,このような津波特性を考慮して検討する必要があることが分かった. 水理実験では,4主桁断面模型を用いて,段波状の津波が橋桁に作用したときの津波作用力の発生メカニズムと,小型の流れ制御板(模型の高さの1/2および1/4の大きさ)を4主桁断面模型(津波作用側)に取り付けて,津波作用力がどれくらい低減させることができるか検討を行った.その結果,段波状の津波が模型に作用した直後に,津波作用側の主桁および床版張出部底面に津波が作用することで,津波作用側の桁が持ち上がるような回転が作用することが分かり,この力により津波作用側の支点に大きな負反力が作用することが分かった. 小型の流れ制御板を4主桁断面模型に取り付けた実験では,垂直の流れ制御板を取り付けた場合,主桁から離れた位置に設置するにつれて,水平および鉛直方向の津波作用力を小さくすることができることが分かった.さらに,流れ制御板を斜め45度にして模型に取り付けると,垂直に流れ制御板を取り付けた場合に比べて,水平および鉛直方向の津波作用力を小さくすることが分かり,流れ制御板の有効性を知ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験装置の利用申請等により時間を弄したが,一定期間に集中して実験を行うことができたため,スムーズに実験を進めることができた.さらに先行的に流体力低減対策の実験(小型の流れ制御板を取り付けた実験)も,実験を行うことができた.データ整理および分析に時間がかかっているが,概ね計画通りに進展しているといえる. さらに,前年度で格子ボルツマン法に関する情報を収集することができたので,この解析法による津波解析も新たに行う予定である. しかし,論文等による成果公表ができていないので,早急に成果を公表したいと考えている.現在,土木学会論文集に投稿するために,原稿を作成している.さらに,海外ジャーナルへの投稿も検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度では,津波による橋桁に作用する力を実験により計測した.これにより得られた知見を参考にして.水理実験や数値解析により津波作用時の橋桁に作用する流体力の発生メカニズムを検討する.それらの結果を基に,津波作用力の低減対策の検討や,橋桁の補強方法,流出防止ケーブルについて検討を行っていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,橋梁部材に作用する圧力等を実験や数値解析により検討する.実験では,圧力計を製作して実験を行う.数値解析では,格子ボルツマン法を用いた流体解析を行い.これらの結果と,初年度で得られた知見から,津波作用力の発生メカニズムを総合的に解明する.この結果をまとめて,今後行う流出防止ケーブルを検討するための資料にする. また,前年度に行った流れ制御板に関する実験結果を用いて,もっとも最適な流れ制御板の形状および設置位置および流れ制御板を設置したことによる,橋桁への影響について,数値解析(有限要素法など)により検討する. さらに,津波による被害状況から,側道橋が存在した橋梁では,側道橋は流出したが,本橋は流出を免れた橋梁があった事例を踏まえて,4主桁断面模型よりも津波作用側に側道橋を模擬した模型(水管橋のような構造も含む)を設置して,津波作用時の4主桁断面模型の挙動について,実験や解析により検討を行う. 主に実験では,圧力計や側道橋を模擬した模型を製作するための材料費,流れの様子を撮影するための照明等の材料費,実験装置の使用料として使用する.また解析では,コンパイラソフトや記録用メディア,解析スピードを向上させるためのグラフィックボードを購入するための費用として使用する.また,前年度に引き続き,津波に関する資料の収集や研究成果を公表するのに要する旅費,および論文投稿料にも使用する予定である.
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