2012 Fiscal Year Research-status Report
地盤内の温度環境を考慮した物質移動―力学連成解析モデルの構築
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24760375
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
濱本 昌一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30581946)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 圧密 / 透水 / 溶質分散 / 温度環境 |
Research Abstract |
H24年度は,熱環境変化による地盤内の物質移動・力学的特性変化把握を目指し,温度調整型圧密試験機および三軸圧縮試験機を用いて,異なる温度環境下で圧密・透水・溶質移動試験を実施した. 模擬試料としてカオリン粘土を用いた圧密試験の結果,温度上昇により試料の圧密降伏応力・圧縮指数およびせん断剛性が増加する結果が得られ,温度上昇により土粒子間のセメンテーション作用が増加したことが理由として考えられた.一方で,水の粘性係数を考慮した場合,温度変化が試料の透水性(透水係数)に与える影響は小さいことが分かった.さらに,同じ試料を用いて二次圧密時の温度変化が圧密特性およびせん断剛性に与える影響について調べた結果,特に間隙比の大きい過圧密粘土で温度上昇に伴い間隙比は減少した.またせん断剛性は温度上昇により急激に減少するが,過圧密粘土ではその後上昇するという結果が得られた.温度上昇による土粒子の吸着水層の減少,水の粘性低下に伴い,粘土粒子間の結合力が増加し,土粒子の再配列に伴う間隙比の減少およびせん断剛性が増加したと考えられた. 温度環境の違いが地盤内の溶質分散特性に与える影響解明を目的とし,15 ℃,40 ℃条件下で埼玉県内荒川低地沖積粘土を用いて溶質移動試験を実施した.トレーサーとしてKClを用いた.結果,同流速,同試料の場合,温度が高ければ塩化物イオンの遅延係数が小さくなる結果が得られ,温度の違いによる溶質の吸着特性の相違に起因していると考えられた.同流速条件では温度環境によらず溶質分散係数に顕著な差はみられなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は当初計画通り,温度調整型圧密・三軸圧縮試験を実施した.模擬試料としてカオリン粘土,さらに荒川低地沖積粘土を用いて,温度環境変化が物資移動特性・力学特性に与える影響について調べた.温度上昇により圧密沈下量が促進しせん断剛性増加する結果が得られた.さらに,異なる温度環境下で溶質移動試験を実施した研究例も少なく,学術的にも貴重な知見が得られた.研究成果の一部は学術論文として発表され,国内学会にて発表も予定されている.従って,本研究は概ね順調に進んでいると言える.ただし,温度調整型圧密試験機を用いた実験については,H24年度は模擬試料を用いた実験に留まり,実地盤材料(沖積粘土)を用いた実験を遂行できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,引き続き温度調整型圧密・三軸圧縮試験を用いて,各種物質輸送係数・力学的パラメータの測定を行う.特に,荒川低地沖積粘土の深度別試料を用いることで,堆積環境・地盤の物理特性の違いが各種パラメータに与える影響を整理する. 室内実験から得られる物質輸送・力学パラメータに加え,同一試料を用いて温度制御下で従来の試験方法により測定される物質輸送パラメータ(ガス拡散係数・吸着/脱離係数・熱伝導度等)測定値を対象とし,温度環境を考慮したパラメータ予測モデルを構築する.異なる試料及で得られる各種パラメータの温度依存性やパラメータ間の相関関係について調べ,間隙率・間隙比や有機物含有量など試料の物理・化学パラメータや地温を関数とする輸送係数・力学定数の汎用的で簡便な予測モデルを構築する. 最後に,物質移動-力学連成解析モデルの構築および環境リスク評価への適用として,地中熱利用ヒートポンプ(GSHP)システム導入サイトにおける地温・地下水質観測データを用いて、構築する解析モデルを検証する.GSHPシステム導入による局所的な地下温度上昇・低下,または都市ヒートアイランド・地球温暖化現象による長期的な地表面温度上昇が,地盤内物質(重金属類)動態および力学的特性(圧密・沈下)に及ぼす影響について感度解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度購入予定であった温度調整型三軸圧縮試験装置一式の一部について,所属研究室にて所有しているものを活用することが可能となったため,H24年度研究費の一部を次年度に繰越すこととなった.ただ,試験装置の圧力系統について改良し,より多様な環境(拘束圧条件)で実験を実施したいため,繰越金と当初H25年度研究費の一部を三軸圧縮試験機の改良費に充てる.残りの研究費については,イオン分析に用いるイオンクロマトグラフのカラム・試薬代などの消耗品費や,国際学会への参加費・旅費,論文投稿費用などに用いる予定である.
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