2012 Fiscal Year Research-status Report
細粒分を多く含む表層土の液状化挙動に及ぼす深部地層構成の影響
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24760377
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中井 健太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60402484)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 液状化 / 液状化後の圧縮 / 地層構成 / 細粒分含有率 / 地震応答解析 / 変位制御繰返し試験 |
Research Abstract |
浦安市をはじめとする東京湾沿岸部の埋立地盤で発生した甚大な液状化被害は,1)埋立年代の違いや2)地震動継続時間の長さで説明されることが多い.本申請課題では,上記2つの理由に加えて,液状化層以深に堆積する軟弱粘土層の存在が表層地盤の液状化挙動を助長したことを示す.さらに,実験および数値解析の両手段を駆使して,地層構成(土の種類や層厚,層の傾斜など)が表層土の液状化/変形挙動に及ぼす影響を定性的に調べるとともに,細粒分を含む土の液状化発生メカニズムを説明することを目的とする. 平成24年度は,浦安市でサンプリングした埋立土,沖積砂,沖積粘土の不攪乱試料および攪乱試料の各種力学試験を実施し,試験結果と構成モデルの応答の対比から,浦安市地盤の弾塑性プロファイル(土の物性および状態量)を作成した.さらには,その成果をもとに一次元弾塑性地震応答解析を実施し,深部の軟弱な沖積粘土層厚が表層土の液状化に及ぼす影響について調べた.その結果,液状化層深部に堆積する沖積粘土層厚が厚いほど,粘土層内における加速度増幅の程度が大きく,増幅する加速度の周期帯も大きいため,表層土が液状化しやすくなることを示した.つまり,例え表層の液状化層の条件が等しくても,深部に堆積する沖積粘土層厚の違いのみによって液状化の程度が大きく異なることを示した. また,液状化地盤の地震中から地震後にかけての圧縮特性を把握するために,非排水繰返し載荷後の体積圧縮量を系統的に調べた.その際,多数回の繰返し載荷履歴(液状化履歴)が与えられるように,既存の試験機を改良して変位振幅一定・変位制御非排水繰返し三軸試験を実施した.その結果,相対密度60%に揃えた珪砂6号では体積ひずみ量が最大で10%にまで達すること, 正規化累積損失エネルギーと繰返し載荷後の圧縮量にはよい相関があること,を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画は大きく,1)浦安市埋立地盤直下の土の力学特性を把握し,弾塑性ソイルプロファイルを作成すること,2)細粒分を含む土の液状化発生メカニズムを解明すること,3)地震中から地震後にかけての液状化後の体積変化量を把握すること,であった. 1)に関しては計画通り進んでおり,平成25年度に予定していた数値解析に関しても1次元モデルではあるが,計画に先んじて実施している.その結果,2)に関しても,液状化層深部に堆積する沖積粘土層厚が厚いほど,粘土層内における加速度増幅の程度が大きく,増幅する加速度の周期帯も大きいため,液状化しにくい細粒分を含むシルト質砂であっても液状化することを数値解析的に示し,地層構成の違いが液状化発生に及ぼす影響について示唆した.平成25年度は研究計画通り,2次元解析へと拡張し,深部地層構成だけでなく,地層傾斜の影響について検討していく. 3)に関しては,従来のように応力制御ではなく,変位振幅一定・変位制御非排水繰返し三軸試験を実施することによって,液状化の程度が異なる時の繰返し載荷後の圧縮挙動を把握することができた.平成24年度は分級された砂試料を用いていたが,平成25年度は細粒分を含む広範な土材料へと拡張して試験データを蓄積するとともに,既往研究成果との整合性について検討していく.
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Strategy for Future Research Activity |
〔現在までの達成度〕でも記述したが,平成25年度は,1)2次元弾塑性地震応答解析によって地層構成および地層傾斜が表層の液状化に及ぼす影響を調べる,2)細粒分を含む土の液状化および液状化の圧縮特性について把握する,ことを研究目標とする. 1)に関しては,平成24年度で浦安市地盤の弾塑性プロファイルは同定されており,計算に関するノウハウも蓄積されているため,順調に進むものと考えている.複雑な地層構成を単純化しつつ,傾斜角や層厚,谷地形の影響を系統的に調べていく予定である. 2)に関しても平成24年度で試験機の整備は終えている.細粒分(シルト)を含む土の攪乱供試体を作成するための工夫として,予圧密供試体を凍結して成形する方法を検討している.予備的な試験によりうまくいく感触は得ており,これまで実施の難しかったシルト質土の実験データを蓄積していくことを目的とする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
地震応答解析用のワークステーションを1台購入予定である.計算時間を短縮するために,高スペックワークステーションを検討している.また,研究成果報告のための旅費,論文投稿料としても使用する計画である.
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