2012 Fiscal Year Research-status Report
封じ込め技術の信頼性向上に向けた、遮水壁の品質管理手法の開発と汎用性の向上
Project/Area Number |
24760379
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (30598347)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 土壌地下水汚染 / 遮水工 / ソイルベントナイト / 静的コーン / 品質評価 / QC/QA / 透水係数 / 地盤環境工学 |
Research Abstract |
土壌汚染や廃棄物が存在する土地を活用する際,対策方法の1つとして「原位置封じ込め工法」がある。これは当該範囲を遮水材で囲むことによって,汚染物質の拡散を防止する技術であるため,均質性を確保することが極めて重要である。しかし,原位置土とベントナイトを混合することで構築されるソイルベントナイト遮水壁は,施工後も柔軟性が高く,また地中で構築される構造体であるため,品質評価が困難である。 そこで本研究では,初めに地盤調査等に広く用いられている静的コーン貫入試験を応用し,ソイルベントナイトの品質の差異を検知すべく,実験的検討を行った。具体的には,高さ100cm,直径80cmの大型土槽内に,実際の遮水壁に見立てたソイルベントナイトを異なる配合で充填し,鉛直方向に配合の差異を検知可能か,検証を行った。その結果,先端抵抗,周面摩擦といった強度特性が,ベントナイト量が減少すると増大すること,過剰間隙水圧はベントナイト量によって異なる挙動を示すことが明らかとなった。また間隙水圧の消散速度は,周辺地盤の透水性に大きく影響を受けることから,間隙水圧消散試験を実施し,透水係数の算出を試みた。その結果,間隙水圧消散試験によって,透水試験で得られる透水係数と同程度の透水係数を算出でき,静的コーン貫入試験を品質評価手法として適用しうる可能性が示唆された。 次に,新たに変形付与型透水試験装置を作製し,地震等で遮水壁に変形が生じた場合であっても遮水性能を保持しうるか,検討を行った。実験の結果,現時点では定量的な評価には至っていないものの,平均せん断ひずみで15%程度の変形量であれば,ソイルベントナイト遮水壁に破断は生じず,著しい漏水量の増加には至らないことが実験的に明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,土壌地下水汚染対策として有効な「原位置封じ込め工法」に用いられるソイルベントナイト遮水壁を対象に,原位置での品質評価手法の確立,及び地震時挙動の評価を通して,汎用性の向上を目指すものである。 初年度にあたる平成24年度は,(1)静的コーン貫入試験の品質評価への実施可能性を検証すること,(2)地震等でソイルベントナイト遮水壁に変形が生じた場合,健全性を保持しうるか検証すること,を計画目標とした。(1)については,大型土槽試験を実施し,現在までに定量的な評価を実現できており,ある程度の実現可能性が確認できていると判断できる。(2)については,当初計画では一般的な透水試験を通して評価する予定であったが,より実現象を再現しうる試験装置を開発し,実験に着手することができた。現在のところ,定量的な評価には至っていないものの,変形発生時であっても顕著な漏水が生じないことを定性的に確認できている。そのため,全体として概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
大型土槽試験を通じ,静的コーン貫入試験による品質評価手法は,平成24年度で概ね実現性を確認できたと判断できる。そのため,次年度以降はパイロットスケールの試験に重点を置き,現場試験の実施可能性を検討する。ただし現場試験は関係企業との連携も必要となるため,状況に応じて室内試験により試験方法,品質評価手法の高度化を図る。 変形付与型透水試験については,現在開始したばかりであるため,今後試験装置,試験方法含め高度化する必要がある。ソイルベントナイト遮水壁は極めて高い遮水性能を有しているため,水位差による動水勾配のみでは評価に相当な時間を要する。そのため空気圧を付与,制御しながら,短期間でかつ高精度に定量化する試験装置,試験方法の確立が求められる。次年度以降,配合を変えてソイルベントナイトを作製し,一般的な柔壁型透水試験(ASTM D 5084)と並行しながら,変形付与型透水試験の検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大型土槽試験による評価が当初計画よりも順調に進捗したため,物品費に余裕ができたため当該繰越額が発生した。その他,旅費等については当初計画どおりに使用している。 変形付与型透水試験は,一般的な透水試験と比べより実現象を再現した条件下で試験を行えるという観点から,当初計画を変更して平成24年度に導入した。そのため,現時点で技術が確立されておらず,次年度以降に試験装置,方法に改良を加えながら継続していく必要がある。一般的な柔壁型透水試験では,直径6cm,高さ2cm程度の円筒型供試体を試験に用いるが,本試験で用いる供試体は幅20cm,厚さ5cm,高さ25cm程度の比較的大きい供試体であるため,当初計画と比べ消耗品に要する費用が大きくなる。そのため平成24年度の繰越額は,次年度以降の物品費に充て,有効に使用する。
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Research Products
(4 results)