2012 Fiscal Year Research-status Report
X線CT法を用いた揮発性有機化合物による汚染地盤の浄化機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
24760382
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
椋木 俊文 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (30423651)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は,難水溶性の揮発性有機化合物(例えば、ガソリンやトリクロロエチレンであり、以下VOC (Volatile Organic Compound)と呼ぶ)による汚染地盤の浄化問題を対象に,VOC流体の浸透実験および空気注入法と界面活性剤注入法をそれぞれ利用した浄化実験を実施し、間隙中へのVOC残留機構および浄化現象をX線CTスキャナを利用して3次元画像解析とその定量評価するものである。さらに、画像データを導入した数値解析によって、間隙中の流速分布を評価することにより、浄化条件としての空気(あるいは界面活性剤)注入圧と注入量の検討が可能となり、最終的に、有効な浄化・修復技術を創生することを目的としている。本研究では、まず水よりも比重が小さい有機溶剤を研究対象とした.これまでに得られた成果を以下列挙する。 1) マイクロX線CT対応型のVOC流体の一次元浸透実験装置を開発し、既に開発した間隙構造の定量化画像解析手法により、各種地盤材料中のVOC残留分布を可視化および定量化する手法を確立した。 2) 上記の実験より得られたマイクロX線CT画像から3次元間隙構造データを抽出し,格子ボルツマン法を用いた数値解析手法により、間隙中の流体の密度分布および流速分布を求め、X線CT画像では評価が困難なVOCの流体挙動のシミュレーション手法を確立した. これらの手法の確立により、本研究では特にガソリン系の有機溶剤としてイソパラフィン溶剤(LNAPL)を対象に砂地盤中の間隙における水とLNAPLの3次元空間分布を定量的に抽出でき、かつ地下水の流動の影響を模擬した水注入実験でもどの程度の割合でLNAPLが残留するかを評価できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロX線CTスキャナを用いたVOCの地盤内残留状態および浄化挙動を可視化する実験的研究からその画像処理および数値モデルによる解析的研究に発展させるために以下の研究項目を計画している.1)マイクロX線CT対応型VOC鉛直圧入実験および可視化実験装置の開発は完了し、現在改良中であると共に実験を継続している。2)地盤材料の間隙構造の3次元データ化および残留VOC量の画像解析手法の開発は終了しており、得られた結果の解釈について検討中である。3)X線CT画像データを用いた格子ボルツマン法によるVOC汚染機構の定量評価手法については、3次元解析のコードは完成しているが、PCのスペックの問題上、2次元問題を解析対象としている。4)1)の装置を応用した空気および界面活性剤浸透流現象に伴う残留VOCの可視化実験は25年度実施予定である。5)1)-4)を総括して,地盤中におけるVOC浄化条件の提案も25年度実施予定である。 以上より、研究計画の5分の3は終了しており、24年度の開発した手法を応用して、研究計画4)と5)に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
浄化現象を可視化するために,同実験供試体中に空気を注入する浄化方法と界面活性剤に相当する流体を注入する浄化手法を模擬し,VOCの3次元的な浄化挙動を可視化する実験の実施を計画している.ここでは2)の解析結果を踏まえて、空気圧や界面活性剤の注入圧条件、また注入量を検討し、画像解析により、VOCの体積減少量を定量評価することで、浄化の効果を評価していくことを想定している。特に、24年度ではマイクロCT室外で一次元浸透実験を実施する手法を確立したが、その経験を踏まえ、25年度はマイクロCT室内で実施可能な実験方法を確立することを目指す。これにより、画像解析結果のデータの質向上が期待される。 一方、数値シミュレーション手法として導入した格子ボルツマン法は、本研究では近年注目されつつあるGPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)を取り入れた並列化計算手法を導入している。24年度では、1コアのGPUで2次元領域の計算までを可能とした。最終的に3次元領域の解析実施を目指すため、GPUを2つ以上使用する「マルチGPGPUの並列化処理手法を確立する必要がある。これについても現在取り組んでおり、システムが構築できると、特に界面活性剤に相当する流体の注入シミュレーションがまた、これらの成果を総括して,地盤中におけるVOC浄化条件の提案をする所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究成果として、25年度では少なくとも2つの国際会議(アジア・ヨーロッパ)に3編の論文受理が決まっており、1回の国内全国大会と国内シンポジウムに計3編の論文を投稿している。これらの成果報告の旅費の使用計画を立てている。25年度の実験では、24年度に開発した実験装置を改良するために、消耗品を購入する予定である。最終的に、投稿論文を国内・国際ジャーナルに投稿するための投稿料としての使用計画を立てている。
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