2012 Fiscal Year Research-status Report
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24760387
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川村 里実(山口里実) 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (70399583)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 河川工学 |
Research Abstract |
河床低下によって河床の岩盤が露出した河川では,近年,岩盤上の流砂によって岩盤が異常に侵食される現象が生じている.このような岩盤の異常侵食現象は国内外の多くの河川で生じているにも関わらず,流砂による岩盤の侵食現象に関しては学術的根拠に基づいた物理的知見はほとんど存在しない.本研究は,近年の河川環境に大きな影響を与えている岩盤河床の侵食現象の中でも,最も急速に進行している流砂による異常侵食現象に対して学術的根拠に基づいた物理的メカニズムの解明を行うものである.流れと流砂および流砂による岩盤侵食の相互作用を再現できる河床変動数理モデルを構築することによって,岩盤河床の異常侵食およびそれに伴う岩盤河床形状の変動メカニズムを物理的に解明することが目的である. 本年度は,まず,上流の露岩箇所が拡大しつつあり河床低下が深刻な問題となっている札幌市を貫流する豊平川において,H23年9月に生じた出水時の河床変動特性を明らかにし,実河川における現状の把握を行った. また,岩河床上における流砂移動モデルの構築と粒子の運動形態の解明を目的とし,特に横断方向流砂量に着目した実験を実施した.横断方向に傾きを有するモルタル河床水路上の粒子運動を観測することによって,粒子の移動方向,跳躍距離(河床との衝突頻度)や流下する流れに対する流砂の横断方向への集中度合いを検討した.また,従来の実験結果と合わせることによって,岩床上の横断方向流砂量をモデル化した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題内容のうち,本年度は特に次のような課題に重点を置いて研究を実施した. 砂礫河床において一般的に平衡流砂量モデルとして用いられる流砂量式は,上流から十分な土砂供給のある条件下で掃流力と河床勾配の影響(重力項)によって定式化されている.一方,岩盤上では上流からの供給土砂が限られ,流砂に対する河床勾配(重力)の影響や流れの追従性など砂礫河床上の流砂現象とは特性が大きく異なる.しかしながら,従来岩盤上の流砂量の推定には単に平衡流砂量モデルを拡張したものが用いられており,岩盤上の流砂現象の特性を反映したモデルとはなっていない.本研究において岩盤上の流砂過程に関する基礎的な実験を行うことによって岩盤上の流砂特性を反映できる流砂量モデルを提案することが本年度実施した課題内容である. 本年度得られた成果により,岩床上の粒子の運動形態を把握しただけでなく,横断方向の流砂移動モデルを構築することが出来,研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
礫河床では流水と河床変動の相互作用によって河床波や砂州等の様々な河床形態が生じる.これに対して岩盤河床では河道内に澪筋が形成さているのがよく見られ,流れと流砂が集中し更に局所的な深掘れが集中することで異常侵食現象が更に進行している.このように,岩盤侵食による河床変動・流れの変化・流砂量の空間的分布の変化の相互作用の結果として澪筋状に集中して侵食が進行する岩盤河床形態が現れ,最深河床部が際限なく低下していると考えられる. 次年度は軟岩を模擬したモルタル河床水路を用いた移動床実験を実施する.平坦床または適当な初期河床状態から通水および給砂を開始し,岩盤上の流砂,特に流砂の集中過程および侵食の進行過程を計測することによって,流れ・流砂・侵食の相互作用による侵食の進行過程を再現し,岩盤の異常侵食現象を実験的に解明する. また,次年度は,本年度の成果より得られた岩盤上の流砂量モデルを適用した岩盤河床変動数値モデルを構築する.実験および実河川を対象とした再現計算を実施し,流れと流砂および流砂による岩盤侵食の相互作用を明らかにすることによって,異常侵食現象を引き起こす岩盤河床変動メカニズムを解明する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
移動床実験を予定していたが,まずは固定床上の砂礫の挙動を詳細に把握する必要があったため,今年度は固定床実験を中心に行ったことや,個々の砂礫の挙動に着目したため,当初予定していた大量の礫購入の必要がなく,その分の予算が未使用となっている。 次年度は,計画のとおり,大量の礫を用いた移動床実験を行う予定であり,この礫購入に今年度の未使用額を充てる。
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Research Products
(2 results)