2013 Fiscal Year Research-status Report
海中構造物周辺の底質浮遊・洗掘機構の解明と波浪・土砂・地形の相互作用系の統合解析
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24760389
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
楳田 真也 金沢大学, 環境デザイン学系, 准教授 (30313688)
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Keywords | 底質輸送 / 浮遊砂 / 掃流砂 / 渦 / 砂連 |
Research Abstract |
海の波による海底砂の移動とそれに伴う海底面の地形変化の過程を厳密に再現可能な数値解析モデルの開発,および数値解析の際に必要な砂の移動限界条件を正確に与えられる新たな実験式の考案を行った. 数値解析モデルは3次元流体解析モデルを乱流解析に対応するためLES化して,浮遊砂と掃流砂の底質輸送モデル及び海底地形変動モデルを連成的に組み込んで高度化した.本モデルの妥当性を調べるため,波による砂連の形成過程の再現計算を行った結果,本モデルは十分発達した砂連の特徴を良好に再現できること,その再現性は周期の異なる波でも維持されること,それらは計算範囲の設定に関係ないことを確認し,本モデルは流体・底質輸送・地形変化の相互作用の過程を精度良く解析可能なことを検証した.また,海底砂の移動限界条件の設定を変えると,浸食・堆積速度の変化と共に,平衡状態に達した砂連地形も変化するため,移動限界条件を正確に与えることが重要であることが分かった. 海底砂の移動限界条件を簡単な方法で正確に評価できるように,従来実験と自前の実験の結果をできるだけ多く収集・分析した.その結果,移動限界のShields数は移動限界の波高水深比の関数で表されること,移動限界の波高水深比は粒径・水深・波長を用いた無次元パラメータで関係付けられることが分かった.また,それらの関係に基づいて,細砂の移動限界のShields数・流速・波高を正確に求められる陽的で簡単な代数式を考案し,その適用性を検証した結果,大規模実験の移動限界Shields数を精度良く推定すると共に,移動限界流速を従来方法に比べて正確に推定でき,計算が容易で実用性に優れることを示した. さらに,広域的な沿岸海浜地形の変化を考慮した海中構造物の設計の重要性に着目して,海浜変形問題を考える上で重要になる河川からの土砂供給量や関連する河道地形の長期的な変動特性を究明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つである流体運動・底質輸送・地盤変動の相互作用の統合解析モデルの構築を進めるため,波による砂連の発生・発達過程を対象に,各要素モデルの構成やアルゴリズムを変えながら最適化・高速化して計算した結果,砂連が動的な平衡状態に達するまでの一連の過程を再現計算することが可能になり,かつ計算精度も良好であることが分かった.構造物スケールの現象を再現可能な統合解析モデルの構築に必要になるベースモデルの開発は計画通り今年度中にほぼ完了できた.また次年度開発予定の統合解析モデルの適用性の検証の際に必要となる実験データは前年度から収集・整理しており,次年度の準備は順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,今年度までの研究から得られた知見に基づいて波浪・構造物・底質・地形の相互作用系の統合解析モデルの開発と適用性を調べる.今年度開発したベースモデルに境界適合格子を用いた構造物モデルを組み込み,様々な形状を持つ海中構造物周辺の複雑な流動構造を精度良く計算できるようにする.小口径円柱構造物周辺の洗掘に関する初年度実施した金沢大学での小規模実験及びハノーファーで別途実施された大規模実験を対象に再現計算を行う.小規模実験の再現計算では,主に波浪・底質条件による洗掘形態の変化や洗掘の発達・埋め戻り過程の再現性及び構造物周辺洗掘への砂漣の影響に着目して検討する.大規模実験の再現計算では,主に洗掘深・洗掘形状の再現性や最大洗掘深と粒径・構造物スケールとの関係に着目する.また,既存研究による洋上風力発電施設周辺の洗掘に関する現地観測を対象に統合解析モデルによる再現計算を行い,実構造物周辺洗掘の予測の可能性や適用限界を明らかにし,課題や対応方法等を見出す.
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