2013 Fiscal Year Research-status Report
沿岸浅海域における高精度海洋環境シミュレータの開発
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24760398
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田井 明 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20585921)
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Keywords | 潮汐 / 数値実験 / 有明海 / 現地観測 |
Research Abstract |
東シナ海周辺におけるM2潮潮汐振幅の経年変化特性と将来予想される海面上昇が潮汐振幅に与える影響について検討を行った.まず,実測データの解析より,1998年前後に東シナ海に面した験潮所において急激な海面上昇とM2潮潮汐振幅の減少が生じたことが明らかとなった.次に,数値実験を用いて海面上昇による東シナ海の潮汐振幅の変化を検討した結果,朝鮮半島西岸や台湾海峡などで潮汐振幅が増加することが分かった.日本で最も潮汐振幅の大きい有明海と八代海でも同様の検討を実施した結果,共振潮汐の理論に反して,湾全体で潮汐振幅が増加する結果となった.地球温暖化による海岸災害のリスクを予測する際,平均海面の上昇に加えて,その影響による潮汐振幅の増減についても考慮を行う必要があることが示された. 潮汐・潮流や波浪などの物理的なデータは,水環境を考える上で必要不可欠な基本情報であることから,現在までに多くの観測が行われてきた.しかし,経年的な変化の抽出や潮流の数値シミュレーションの精度検証に使用可能なデータセットは佐賀大学観測タワーでの観測(山口ら,2009)や小田巻ら(2003)によるものなどに限られ,場所や季節により海況が大きく異なる有明海において十分とは言えず,その特性も不明な点が多い.一 方で,諫早湾内の観測櫓(Fig.1)においては九州農政局による水質観測が行われており,学術的に非常に貴重なデータセットとなっているが,同地点において流速観測は実施されていない.そこで,本研究では,潮流の特性の解明と水環境の基本データセットを構築することを目的に,諫早湾内の農政局観測櫓付近において流速観測を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,研究実績で示したように,予定通り高精度シミュレータの開発が行えており,昨年度の課題であった検証用データの取得も順調に実施できた.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は2年目までの成果を踏まえて,現在,申請者は東シナ海沿岸で1990年後半に潮汐レジームシフトが生じていたことを明らかにした.しかし,日本沿岸以外の験潮所は対象としていなかったため,潮汐レジームシフトが生じた空間スケールは不明である.また,1990年代後半以外でも過去に潮汐レジームシフトが生じていた可能性は高い.そこで,長期間の潮位データを全球的に収集し,その解析(調和分解,ラページ検定)を実施することで,潮汐レジームシフトの発生実態を明らかにすることで,発生メカニズムの考察も行う.気候のレジームシフトと潮汐レジームシフトが関連している場合,その原因として(1)平均海面の変化による潮汐波の波速の変化,(2)水温上昇を起因とした内部波の発達による潮汐エネルギーの消費,(3)その他の要因(風応力の変化など)が考えられる.・内部波による潮汐エネルギーの消費に関してはその数値モデルでの再現精度が保障されていない.そこで,東シナ海大陸棚斜面上で乱流エネルギー散逸率の観測を行い,数値モデルの精度評価ならびにチューニングを行う. ・東シナ海を対象に3次元バロトロピック海洋流動場モデルによる数値実験を実施し,平均海面の変化や密度躍層の状態を変化させた感度解析を行い,実測された潮汐レジームシフトの発生メカニズムを検討する.新たに確認された潮汐レジームシフトの海域も対象に追加の数値実験も実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定した観測が天候不良のため実施できず次年度に実施するため. 次年度の予算と併せて実施予定であった観測を行う.
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Research Products
(3 results)