2012 Fiscal Year Research-status Report
貧酸素環境下における海底堆積物の生物・化学的酸素消費に関する研究
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24760400
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00527773)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 堆積物 / 生物的酸素消費 / 有機物分解 / 水中二酸化炭素濃度の計測 |
Research Abstract |
閉鎖性海域では底層水の貧酸素化が深刻な問題となっており、貧酸素化対策を考える場合、堆積物の酸素消費特性の定量評価が重要となる。特に、貧酸素環境下では様々な酸素消費要因が混在し酸素消費量が時空間的に変動するため、要因毎に消費特性を評価する必要がある。本研究では、環境に応じて変化する堆積物の酸素消費量を定量的に予測するために、堆積物の生物的酸素消費特性と化学的酸素消費特性を明らかにし、酸素消費特性を要因毎に評価することを目的としている。2年計画の初年度となる本年度は、堆積物の生物的酸素消費特性について明らかにするため、堆積物の生物的な酸素消費要因としてバクテリアの有機物分解に着目し堆積物の酸素消費量と二酸化炭素の生成量について検討した。まず、実験を実施するにあたって水中の二酸化炭素濃度を連続計測する必要があるため、通気性撥水チューブを用いた計測手法に着目し、本手法の有効性について検証した。室内曝気した場合の水中二酸化炭素濃度の時間変化を計測した結果、微小な変動を捉えることが可能であることを確認した。また、本手法の応答速度を確認するため室内曝気している水槽中に炭酸水を段階的に滴定した場合の時間変化を計測した結果、反応速度が2、3分程度であることが分かった。その後、本手法を用いて堆積物を敷いた水槽内の酸素濃度と二酸化炭素濃度の時間変化を計測した。堆積物直上水中の酸素濃度と二酸化炭素濃度濃度の時間変化の関係から、生物的な反応と考えられる領域では両者に負の相関がみられ、生物活性による有機物分解に伴い酸素が消費され二酸化炭素が生成する反応が確認できた。以上のように、本年度は、有機物分解による生物的な酸素消費特性を検討するための手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、酸素消費を生物的要因と化学的要因に分画し環境に応じて変化する堆積物の酸素消費量を定量的に評価することを目的として、(1)生物的酸素消費要因の解明、(2)化学的酸素消費要因の解明、(3)貧酸素環境下における堆積物の生物・化学的酸素消費要因の分画、(4)生物化学的要因を考慮した酸素消費モデルの構築、を課題として設定している。このうち、当初予定では本年度中に、課題(1)、(2)について検討する予定であったが、実験手法の確立に時間を要し特性の解明にまでは至らなかった。特に、水中の二酸化炭素濃度の計測手法については、手法の確立から始まったため有効性の検証等に予定以上に時間を要した。また、化学的実験についても、水槽の作成や実験の初期条件の調整に時間を要した。ただし、本年度に実施した実験手法の確立ができなければ、特性の検討には至らないため、進捗としてはやや遅れているが、有用な成果を得ることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗が遅れている生物的酸素消費特性と化学的酸素消費特性の解明について、次年度の前半に実施する。生物的酸素消費特性については、本年度に確立した実験手法を用いて水温や用いる堆積物の実験条件を変化させて堆積物の酸素消費量と二酸化炭素生成量の関係を整理することで生物的酸素消費特性について明らかにする。また、化学的酸素消費要因の解明については、滅菌処理した堆積物と海水を用いて酸素消費実験を実施し硫化物濃度と酸素消費過程について整理する。その後、貧酸素状態にした水槽内に酸素供給実験を実施し、堆積物の酸素消費過程と、二酸化炭素濃度および硫化物イオン濃度の変動をモニタリングすることで、生物的要因と化学的要因の分画を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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