2012 Fiscal Year Research-status Report
地方都市のボトムアップ型都市形成―近代岐阜における「市区改正」の解明
Project/Area Number |
24760410
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
出村 嘉史 岐阜大学, 工学部, 准教授 (90378810)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近代地方都市 / 市区改正 / 岐阜 / 市制町村制 / 倶楽部 / 有志者 |
Research Abstract |
本研究は,近代地方都市の典型として,岐阜の都市形成の原理を明らかにすることを目的としている.すなわち、これまでに知られている官による都市建設とは全く異なる,地方独自のプロセスがあったことを解明することである.従来の都市形成に関する研究の多くは,大都市を対象として都市計画法などの制度に基づく形成プロセスを示すものが多く,本研究のような,背景の異なる地方都市をとりまく社会的・物理的要因を考慮した解析例は報告されていない.本研究は,日本の都市形成論における新しい領域を拓く試みである. そのために実際の実施主体とその働きを,公的資料や古文書などの史料から調査・解析した.行った手順としては、1)資料収集,2)資料解読(必要な部分は翻刻した),3)整理・分析を進め,本年度明らかにする目標であった、市制開始時(明治20年代)の都市建設をめぐる主体・その意図や技術・資本,そして成果としての都市構造に関する事実を、ある程度実証できた.その他、周辺事象を把握するために、大垣市にも着目している。 把握された事象は以下の通り。鉄道駅の設置に刺激された岐阜では、商工業者を中心とする有志者らによって、市街地を拡張して商工業の町を建設することが目論まれた。そのために官民協働体制が戦略的に構成される。岐阜公園の倶楽部建設は、この体制づくりに重要な役割を果たした。こうして整えられた〈計画する有志者〉と〈実施する官吏〉の体制により、旧市街地と連続する新市街地が形成された。このための事業費は、遊郭を建設して回収することが目論まれ、その出納を有志者が動的に管理しながら計画を動かし、民から県へ事業を発注するような形で都市基盤整備の大事業が遂行された。このように整えられた基盤を背景に、市制執行に耐える都市が瞬く間に出来上がり、自前の「市区改正」を成し遂げた有志たちによる市の運営が始まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、今年度に明らかにしたい内容は、実証することができた。その上で、次年度に見通しを立てている近代都市計画が始まる時期との間に、主体のギャップが予想以上にあることが把握された。 その間の年代において、もう一度「市区改正」が行われている事実が明らかになり、その周辺における主体の関わり及び社会基盤施設のでき方を同様に調査・実証する必要性に気がついた。この点においては、最終年度までの課題としたいと思っている。 また、学内や岐阜市内で同成果を講演する機会を計2度持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、次年度(平成25年度)は、法定都市計画開始時(大正12年~)における都市建設の実態調査を進める。さらに、上記のように、これと並行して明治40年代の第2次市区改正にも着目し、連続的な主体の変化、その要因を明らかにしたい。 途中より上記のように追加して充実させたい研究内容が増えたため、本年度に予定されていた研究経費をやりくりし(ラップトップ一式の導入を遅らせて)、予備調査のために、実質の調査費を増やした。その差額が次年度へ繰り越されることになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度(平成24年度)には、前倒しで関係文書の複写分量が多くなり、また周辺事象を把握するための入手困難な古書や古地図の購入費を捻出するため、購入予定であったデータ処理用ラップトップ一式を購入せずに、その予算の一部を文献調査などの諸費用に充てた。差額で次年度へ繰り越す分は、追加した研究内容と併せて機動力を持って調査が進められるようにラップトップ一式を導入していく足しとしたい。
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