2012 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルネットワークを活用した長期自動車排出ガス管理施策
Project/Area Number |
24760414
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桑野 将司 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70432680)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 自動車保有利用行動 / ソーシャルネットワーク / 動的計画法 |
Research Abstract |
本研究では,人と人のコミュニケーションを活用した自動車からの二酸化炭素排出量削減施策を,時間軸上に沿って提案するための分析手法の開発を研究目的とする.本年度の主な研究成果は以下の通り. (1)複数地域の自動車保有・利用実態の把握:世帯の自動車保有・利用行動と社会動向の関係をマクロ統計資料により把握した.さらに,規模の異なる複数の地域で実施したアンケート調査の結果を用いて,地域特性の違いが世帯の自動車保有・利用行動に及ぼす影響を把握した. (2)統合型自動車保有・利用行動モデルの構築:自動車保有の意思決定から,車種の選択(購入段階),利用の仕方(利用段階),買い替えや追加購入等の取替更新行動の時期・種類(維持段階)といった自動車保有・利用行動を構成する各行動を表現するサブモデルを構築したうえで,それらサブモデルを統合し,一連の行動を総合的に取り扱うことのできる統合型モデルシステムを提案した.そして,購入段階,利用段階,維持段階の各段階における施策実施が,他の段階の行動に及ぼす影響を定量的に把握するとともに,自動車二酸化炭素排出量削減にどのように影響するかを分析した. (3)ソーシャルネットワークを考慮した生活行動の調査と分析:各個人を取り巻くソーシャルネットワークの影響を取り入れた集団意思決定に関する調査方法を提案した.また,個人レベルでのインプットが,世帯あるいは社会全体といった集団レベルのアウトプットにどのように変換されるか,社会的な統合過程を組織的にモデル化した.これら結果を基に,特定の個人の選好や行動が他の個人に及ぼす影響と,準拠集団の選好や行動が特定の個人の行動に及ぼす影響を定量的に把握した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画は,(1)複数地域の自動車保有・利用実態の把握,(2)地域別の二酸化炭素排出削減目標量の設定,および(3)世帯の自動車保有・利用行動モデルの開発であった. (1),(2)については,アンケート調査データやマクロ統計資料を用いて,世帯の自動車保有・利用行動と社会動向の関係,地域別の交通システムや人口構成などの地域特性との関係を明らかにした. (3)については,車種選択モデル,利用行動モデル,保有期間モデルの自動車保有・利用行動を構成する各行動を表現するサブモデルを構築した.そして,これらサブモデルを統合し,一連の行動を総合的に取り扱うことができる統合型モデルシステムを開発した.さらに,アンケート調査で収集したデータを用いて実証分析を行い,提案モデルシステムの有効性の検証を行った.その結果,提案手法が従来の分析方法よりもモデル適合度が高いこと,および現況再現性が高いことから,提案手法の有効性が明らかとなった.さらに,提案したモデルシステムを用いて,各種自動車関連税制の変化が世帯の自動車保有・利用行動に及ぼす影響と,その結果として算出される二酸化炭素排出量に及ぼす影響を分析した. 以上の本年度の成果より,本研究は当初の計画通りにおおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
従前は,政策決定者が設定した個別施策の積み重ねによる効果の前進予測が行われているが,どの施策の組合せ,および実施順序が望ましいかの判断ができない.最適な(例えば,施策の総実施費用最小化)施策の組合せや実施順序を検討するためには,効率的に目標値を達成するための時点別政策目標の設定を可能とするバックキャスティング手法による施策シナリオ分析が必要となる. 平成24年度は主に自動車保有・利用行動を分析するためのモデルシステムの構築を行った.平成25年度は,これまでに構築したモデルシステムをソーシャルネットワークを考慮したモデルシステムへと高度化を図る.そして,ソーシャルネットワークを考慮した自動車保有・利用行動モデルシステムを用いて,自動車からの二酸化炭素削減目標量を達成するために最適な施策群の選定を行う.具体的には,アンケート調査結果を用いて推定した各モデルのパラメータを用いて,中長期的な世帯の自動車保有・利用行動をシミュレーションし,動学的最適化問題によって,二酸化炭素削減目標量を達成するために必要な施策群を抽出・選定する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,これまでに収集したデータを用いて研究を進める.そのために必要な経費として,データ加工,整理,解析を行うための統計ソフトウェアの購入,調査データの整理のための学生アルバイト雇用,パソコンの購入,コンピューター消耗品の購入を予定している.また,初年度の研究成果についての客観的評価を受けるため,研究成果を国内外の学会で発表する予定であり,そのための出張経費を計上している.
|
Research Products
(4 results)