2012 Fiscal Year Research-status Report
地方自治体による低炭素都市・地域エネルギー計画のヒートアイランド対策評価
Project/Area Number |
24760438
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
平野 勇二郎 独立行政法人国立環境研究所, 社会環境システム研究センター, 主任研究員 (70436319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低炭素都市 / 再生可能エネルギー / ヒートアイランド / 冷房負荷 |
Research Abstract |
研究対象事例を選定するため、地方自治体による環境都市計画の一環としての省エネルギー・再生可能エネルギー利用技術とその導入施策の提案や計画についての調査を行なった。とくに震災復興まちづくりの事例や環境未来都市、地域の再生可能エネルギー等を活用した自立分散型地域づくりモデル事業の事例について情報収集し、新地町、横浜市、川崎市、紫波町、瀬戸内市などの複数の自治体を今後の解析対象地域の候補として選定した。 これと同時に、都市キャノピーモデル・ビルエネルギーモデルを連成した熱環境シミュレーションにより、種々の空調負荷低減技術の都市ヒートアイランドへの影響評価を行なった。とくに対策導入ケースのシナリオ作成に重点を置き、窓面の日射遮蔽、高断熱化、内部発熱削減、建物・地面緑化、高アルベド化、PVパネル導入、空調設定温度の変更の各シナリオについて効果を定量化した。この結果、本研究では局地気象・空調負荷の連成計算により、現状および各種対策ケースでの地上気温や室内熱収支、空調負荷パターンの特性を明らかにし、また、屋外温熱環境との相互作用も含めて施策導入によるCO2排出削減効果を定量化することができた。屋上緑化については、屋根面水収支の観点から散水量を定量化し、水道水利用やポンプ動力によるCO2排出量も算定し、冷房によるCO2削減量と比較し十分に小さいことを確認した。都市全体のマクロ評価では、今回の計算条件では例えば川崎市では緑化や高アルベド化による冷房負荷軽減により300~400[t-CO2/日]のCO2削減効果が得られるという結果を得た。ただし、本研究で想定した施策導入シナリオは必ずしも各施策を対等に比較し得る導入条件とは言えないため、今後シナリオ設定については検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は当初の目標通り、地方自治体による環境都市計画の事例について情報収集し、本研究の対象候補地域を選定した。この結果、各自治体が独自の工夫をして提案した事例も多く、単に研究対象地域の選定だけではなく、より一般性のある事例調査としても有益な知見を得た。この結果は例えば環境省のモデル事業に関する委員会においても活かすことができたため、社会的貢献に結びつけることができたと考えている。また、候補地域の一つとして選定した新地町では、自治体と連携した今後の震災復興まちづくりの計画の提案に結びつけることができた。 都市キャノピーモデル・ビルエネルギー連成モデルによる熱環境シミュレーションでは、当初の計画通り種々の空調負荷低減技術の都市ヒートアイランドへの影響評価を行なった。この結果は様々な観点から有益な知見を多く含んでおり、国際会議1件を含む5件の学会発表に結びつけた。また、このモデルをベースとし、低炭素評価を含む新たな空間立地モデルと低炭素型ライフスタイルの研究提案に結びつけることができたことから、当初の計画から超過達成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はこれまでに行なった情報収集の結果を基にして、各自治体の提案や取り組みの事例を体系的に分類・類型化し、整理する。その上で、典型的な事例や特徴的な事例を取り上げ、評価対象事例として選定する。これと同時に、評価対象とする省エネルギー・再生可能エネルギー利用技術やその導入施策について、後述する評価モデルに組み込むための検討を開始する。評価対象は今後精査を行なうが、例えば地域熱供給や分散型電源、工場廃熱利用などの事例は、本研究の目的では重要であると考えている。また、地域内の現状の土地利用分布や建物更新の予測、将来人口予測などに基づいて政策的な実現可能性を考慮した評価シナリオの設定を行なう。 平成26年度は、平成24、25年度に得た各都市の諸条件をモデルに組み込み、シミュレーション評価を行う。最終的には、得られた結果を低炭素やエネルギー安定供給と都市空間の熱環境改善とを両立するためのヒートアイランドの予測評価や対策提案、最適配置提案などの形で取りまとめ、成果の発表を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は各自治体が作成した環境モデル都市の提案書や地域エネルギービジョンなどのインターネット上で公開された情報を収集・整理する作業を想定して研究協力者の人件費・謝金を積算したが、実際には当初の想定以上に多くの各自治体の政策担当者と直接協議する機会を設定できたこと、環境省の委員会を通じて多くの情報収集ができたことから、この作業は大幅に効率化した。低炭素都市計画の関連では初年度で種々の有益な成果を得たため、計画通りの調査旅費等に加えて、平成25年度では成果発表のための旅費や学会参加費を増額して使用する予定である。
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