2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子定量技術を利用した水源におけるカビ臭産生微生物の早期検出・定量手法の開発
Project/Area Number |
24760440
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
岸田 直裕 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (10533359)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 用排水システム / 土壌・水環境 |
Research Abstract |
本研究では、カビ臭の産生微生物・発生箇所の新規特定手法として、遺伝子定量技術(定量PCR法)に着目した。定量PCRは、微生物由来の遺伝子を対象とした定量手法であり、再現性が高い手法として知られている。水環境分野では、ノロウイルス等の病原微生物や藍藻毒を発生する有毒シアノバクテリアの定量に利用されている。カビ臭産生微生物に対しては、これまであまり用いられていない技術であるが、近年、「geo A」、「2-MIB cyclase gene」等のカビ臭合成にかかわる遺伝子の存在が報告され、これらの遺伝子領域を対象とした定量PCR系の構築が期待されている。 以上の背景に鑑み、本研究では、操作が簡便かつ迅速で、定量的な結果が得られる定量PCRを利用して、水道水源におけるカビ臭産生微生物の早期検出・定量手法を開発することを最終目的としている。 第1年度は、geo A遺伝子を対象とした定量PCR系について検討した。国内の貯水池からカビ臭原因物質の一つであるジェオスミンを産生するPhormidium属等の微生物を分離・培養し、定量PCR法を適用した結果、geo A遺伝子を検出することができた。また、培養を経ずに、貯水池の水試料から直接遺伝子(核酸)を抽出し、定量PCRに供した場合も、カビ臭産生微生物由来のgeo A遺伝子を検出できることが明らかとなった。このことから、本研究で開発した手法を用いて、水道水源におけるカビ臭産生微生物の早期検出が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、geo A遺伝子を対象とした定量PCR系について検討を進めている。 カビ臭被害が発生しやすい国内の複数の貯水池から、カビ臭原因物質の一つであり、国内において浄水被害が高頻度で発生しているジェオスミンを対象として、Phormidium属、Anabaena属等の産生微生物を分離・培養した。Proteinase Kを用いた核酸抽出方法によって、培養後の微生物試料から遺伝子を抽出し、定量PCR法に供した。その結果、geo A遺伝子を簡便に検出することができた。一方、適用した微生物の数に限りがあることから、今後適用微生物数を増やし、定量PCR系の特異性について検討する必要がある。 また、高濃度のジェオスミン被害が発生している貯水池から水試料を採取し、培養を経ずに、水試料の濃縮後に直接遺伝子(核酸)を抽出し、定量PCRに供した場合も、カビ臭産生微生物由来のgeo A遺伝子を迅速に検出できることが明らかとなった。このことから、本研究で開発した手法を用いて、水道水源におけるカビ臭産生微生物の早期検出が可能であると考えられた。今後、ジェオスミンが低濃度で検出されている水試料でもgeo A遺伝子を検出できるかどうか調査する必要がある。また、適用試料数にも限りがあり、貯水池内のジェオスミン濃度とgeo A遺伝子数との相関関係については現在のところ不明である。今後、適用試料数を増やし、相関関係について解明していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
geo A遺伝子を対象とした定量PCR系の特異性を明らかとするため、カビ臭被害が発生している国内の複数の貯水池より、ジェオスミン産生・非産生微生物をできるだけ多く単離・培養し、定量PCR系に適用する。特異性に問題が生じた場合は、定量PCRのプライマー・プローブの再設計等を行う。 また、ジェオスミン濃度や産生微生物種が異なる多くの水試料を国内の貯水池より採取し、直接核酸抽出と定量PCRに供することで、定量PCR系の実用性について評価するとともに、geo A遺伝子数とジェオスミン濃度の相関関係を調査する。その際、試験水量を変化させた実験も実施し、水試料中のgeo A遺伝子の検出下限を明らかとする予定である。一部のカビ臭産生微生物は、底生性であり、貯水池、河川等の底部に生息することから、今後は水試料のみでなく、底泥試料についても適用試料とする予定である。底泥からの核酸抽出は、水試料からの抽出に比べて困難であると一般に考えられているため、抽出方法についても検討を行う。 また、ジェオスミン以外のカビ臭を対象とした定量PCR系についても今後検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、国内の複数の貯水池から、できるだけ多くの水試料を採取するため、調査旅費、試料の運搬費として研究費を多く支出する予定である。また、培養株や水試料からの核酸の抽出や遺伝子定量のための試薬や水試料を濃縮するための遠沈管等の消耗品代としても支出する。さらに、情報収集や成果発表のための旅費・学会参加費としても支出する予定である。
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