2013 Fiscal Year Research-status Report
薄板軽量形鋼造建物における耐震要素の合理的な設計法の構築
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24760450
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 篤司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00362319)
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Keywords | 薄板軽量形鋼造建物 / スチールハウス耐力壁 / 耐力 / 剛性 / 変形能力 / 垂壁 / 袖壁 / 靭性低減係数 |
Research Abstract |
平成25年は垂壁付き耐力壁の実大実験を実施し,垂壁が耐力壁の力学的性能(耐力・剛性・変形能力)に与える影響を考察した。垂壁は耐力壁頂部の曲げ戻し効果を期待するものであり,耐力壁との接合ディテールも重要な実験パラメーターとなる。そこで,実験では垂壁と耐力壁との接合形式を実験変数とした。接合形式の一つは,既存建築で用いられている方法であり,接合部ではせん断力の伝達のみが期待でき,曲げモーメントの伝達はほとんど期待できないものである(曲げ戻し効果がほとんどない)。一方の接合形式は、曲げ戻し効果を期待する試験体であり,フラットバーを用いて接合部を補強し,曲げに対して抵抗できるように設計されている。本研究で求める垂壁付き耐力壁の性能は基本寸法である1.0P(910mm)と同等以上であり,垂壁付き耐力壁の耐力壁は0.5Pであり,垂壁が0.5P耐力壁を接合する門型の架構を対象としている。実大実験においては,以下のことが明らかとなった。【耐力】0.5P耐力壁の耐力を2枚単純累加した値は,1.0P耐力壁よりもわずかに大きい。接合部をフラットバーで補強した門型架構がその中でも最も大きな上昇であった。【剛性】垂壁の曲げ戻し効果により架構の剛性は大きくなると想定されたが,接合形式に関わらず,剛性には大きな違いは見られなかった。これは,耐力壁の変形はせん断変形が支配的であること,柱脚部を固定する金物のスタンスが狭くなったことにより作用する引張軸方向力の絶対値が大きくなったためと考えられる。【変形能力】門型架構とすることで,最大耐力到達時の変形能力は大きくなった。また,耐力壁を固定する柱脚部の引抜力は,門型架構とした場合に低減が確認できた。これは,垂壁の効果であり,柱脚部設計において垂壁による影響が有効に活用できる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試験体設計のために実施した事前の数値シミュレーションでは,垂壁による効果が架構の剛性に顕著に表れる結果であったが,実大実験においては垂壁を用いて門型とした効果が顕著に表れなかった。これは、数値シミュレーションで用いたモデルに多くの仮定が含まれていたことが原因であり,現在有限要素法解析(FEM)などを用いてより詳細な解析を実施している。しかし,垂壁効果による柱脚部の引抜力低減など,低減量などの絶対値に差異はあるものの,想定した効果も確認できている。構造設計で用いることができる構造モデル化は、当初の計画よりも遅れているが,モデル化が適切に行えなかった原因は実験より確認できており,その部分を改善することで,適切な構造モデルの構築と対応する設計法に結び付けられると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
有限要素法(FEM)を用いて構造要素を分析したことで,垂壁付き耐力壁の構造モデルが実挙動を追跡できる状況に近づいている。実験結果を追跡できる構造モデルが構築できることで,垂壁付き耐力壁の力学的な性能が把握できるため,構造要素の設計,建物の設計へと反映することが可能となる。 今後は,シミュレーションを行うための構造モデルの構築と構造設計に陽に反映できる設計式の提案を行う。設計式として示すことで柱脚部の軸力低減率など,垂壁効果を定量的に把握できることになり,経済設計に結び付けることが可能となる。 これらの成果は審査付き論文に投稿予定である。
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