2012 Fiscal Year Research-status Report
歴史的煉瓦造建築物の耐震補強に資する振動特性調査と振動実験
Project/Area Number |
24760452
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
多幾山 法子 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10565534)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 煉瓦造建築物 / 固有振動数 / 耐震補強 / 固有値解析 |
Research Abstract |
昨年度の研究では,文化遺産も含めた歴史的な煉瓦造建築物の意匠性と施工性を重視した簡易な耐震補強法の確立へ向けて,実建物を対象として耐震補強前後での常時微動計測を行い,煉瓦壁の振動特性の変化を把握した。また,固有値解析を通じて補強による面外方向振動特性変化のシミュレーションを行った。 既往の研究では,補強前後で歴史的煉瓦造建築物に対して常時微動計測を実施し,補強前後での振動特性(固有振動数・振動モード形状・減衰定数)変化を把握した。鉄骨補強を施した建物とRC壁を施した建物を対象として計測を実施したが,鉄骨フレームとRC壁を増設した場合ではどちらの場合も壁の面外固有振動数が増加するため,壁全体としての剛性を上げることができていると推測できる。壁の面外方向の振幅に着目すると,鉄骨フレームの増設のみを行った場合には振幅を抑えられていないが,RC直交壁の増設をした場合は面外方向へはらみだす振動モード形状の振幅が抑えられていることがわかった。これらの成果をまとめ,15th World Conference on Earthquake Engineering(2012)へ投稿・発表し,日本建築学会技術報告集に投稿し掲載済である。さらに,この調査結果を踏まえ,固有値解析を用いたシミュレーションを行い,補強効果の比較・検証を進め,補強形式の変化による振動特性の変化を分析した。これにより,実建物の補強前後での振動特性変化を解析的に追跡可能であることが確認され,今後,補強法の構築へ向けて有効な手段となりうると考えられる。この成果は,日本自然災害学会へ投稿すると共に,研究発表において平成24年度学術発表優秀賞を受賞した。また,国際会議論文SE-50EEE(2013)へ投稿済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既往の研究において,無補強煉瓦造建物の煉瓦壁を対象として常時微動計測を実施し,また,同建物の補強後においても計測を実施し,補強前後での振動特性を比較可能なデータを得ることができた。補強には鉄骨フレームを用いたものとRC耐震壁を用いたものの2パターンであり,それぞれの補強方法による振動特性の違いも把握することができた。また,補強に用いられた鉄骨の断面寸法や煉瓦壁との接合部仕様など施工に関する詳細データも入手できたことで振動調査のシミュレーション解析が可能な研究となった。 固有値解析による調査結果のシミュレーションにおいては,建物全体ではなく煉瓦壁直交断面で切り出してきた1部分に対して簡易にモデル化した。煉瓦壁と木梁,鉄骨フレーム,RC耐震壁を梁要素に置換し,平面フレームとしてモデル化を行ったものであり,調査結果と比較すると精度良く固有振動数を求めることが可能であることを示した。 また,上述のモデルを用いて鉄骨の断面2次モーメントや耐震壁のコンクリート厚をパラメタとした固有値解析を行い,固有振動数との関係を把握することができた。固有振動数の変化を把握することで煉瓦壁の剛性上昇率についても推定できると考え,補強量と剛性の関係を把握した。このモデル化は1部分を取りだしてきた簡易な方法であるが,今後は,これを拡張し,建物全体についての検討を進める。 以上の検討を通じて,鉄骨や耐震壁の最適配置を検討するにあたり有意義な情報を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は今年度に引き続き,補強煉瓦造建築物の常時微動計測を実施し,補強煉瓦壁の振動特性に関するデータを収集する。また,それぞれに関して固有値解析を行うと共に,建物の1部分ではなく,全体のモデル化方法について検討する。 また,現時点では,組積壁の補強設計に関しては手探りの状況を脱していない。設計法の構築を目指すための必須事項として,面外方向に対して補強煉瓦壁の保有するべき許容耐力を検討する必要がある。 さらに,上述の検討や前年度に実施した実在建物の調査結果やパラメタスタディの結果を踏まえ,RC耐震壁と鉄骨補強を個別に使用した場合,または,併用した場合の鉄骨の配置計画や鉄骨使用量,RC耐震壁のコンクリート厚さなどの決定手法を模索する。補強法には,鉄骨やRC耐力壁を用い,せん断力を軽減する補強形式としたものや床剛性を上げる補強形式としたものなどを検討する。また,検討結果を踏まえて要素実験を行い,補強効果を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)