2012 Fiscal Year Research-status Report
ポリマーセメント防水層の微細構造とひび割れを有するRC構造物の塩害抑制効果の関係
Project/Area Number |
24760455
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
塚越 雅幸 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (50579711)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ポリマーセメント / 塩化物イオン / 電気泳動法 |
Research Abstract |
防水層に必要となる基本的な力学的性質として、引張強度と伸び率、下地ひび割れ追従性評価試験を 建築工事標準仕様書・同解説 JASS8 防水工事等を参考に行い、所定のデータを得た。また、漏水の危険性の観点から下地のひび割れ追従性についても試験を行った。次いで、防水層の断面方向での微細構造観察をESEM等を用いて行い、材料分離が生じたケースにおける、断面方向に見た場合での材料の上下で異なった微細構造(構成材料と空隙構造の分布)を観察した。これら物性と微細構造の関係について現在解析中であるが、同様のポリマーとセメント量を用いて作製した防水層においても、水分量や施工条件によって大きく性能が異なり、慎重な調合、施工条件の設定が必要であると考えている。 微細構造の予測シミュレーションに使用する基礎データとして、防水層の造膜過程における、水の消費(表面からの蒸発と、セメントの水和)の影響について検討を行っている。また、水分量はセメントの水和とポリマーの造膜の両者をコントロールさせる要因となるからであることから、水分の減少に伴うポリマーエマルションの造膜(粘度の変化と速度)を測定している。 防水層の下地コンクリートの保護効果(塩化物イオンの浸透抑制効果)の検討として、防水層を塗布したコンクリートを用いた、電気泳動法による塩化物イオンの浸透試験を行い、防水層の調合条件と施工条件を変化させ、その物性や微細構造と、塩化物イオンの浸透抑制効果について検討を行っている。有機系材料であるポリマーと、無機系材料であるセメントが、複雑に絡み合って最終的に造膜するポリマーセメント中の塩化物イオンの浸透のメカニズムについて現在検討を行っている。特に材料分離は、物性に大きな影響を与えるが、物質移動抵抗性についてはどのような影響を与えるのか注意深く観察する必要があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリマーセメント系塗膜防水層の基礎物性と、下地の保護効果の試験についてはおおむね順調に進展している。これらについては、これまで行ってきた研究のノウハウがあり、また、同大学に在籍している、教授等の持つ知識と実験設備などを用いる事でスムーズに研究が進んでいる。 SEMによる断面方向の微細構造の観察については、装置の使用状況など、連続した測定が難しく、材齢などを合わせた測定が難しいが、おおむね順調に測定はできていると考えている。 ポリマーセメント系塗膜防水層の微細構造の予測シミュレーションに関しては、これまでは2次元でのポリマーの造膜とセメントの水和モデルを検討してきたが、現在は3次元での造膜を検討しており、ポリマーの粘土や水分の蒸発の影響をより詳細に検討する必要があると思われるが、問題点の洗い出しもほぼ終えており、シミュレーションプログラムの作成に早急に取り掛かれるものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ポリマーセメント系塗膜防水層の基礎物性については、ほぼ測定が終わり、今後は微細構造観察と防水層の下地コンクリートの保護効果(塩化物イオンの浸透抑制効果)の検討、微細構造予測シミュレーションモデルの構築が主な研究対象であると考えている。 微細構造観察については、SEMによる反射電子像を用いた観察を行っている。水和、未水和部分の判定や、ポリマーとセメントが複雑に混在する部分における、両者の定量的な評価などが課題としてあり、測定方法も含めて現在検討を行っている。 塩化物イオンの浸透抑制効果については、引き続き電気泳動法による塩化物イオンの浸透試験を行い、データの信頼性の確保と様々な防水層の調合パラメータによる試験を行い、データを充実させる予定である。 微細構造予測シミュレーションモデルの作成に当たっては、3次元での予測を試みており、最終的には、先の塩化物イオンの浸透抑制効果と合わせて予測可能なプログラムを目指している。具体的には、ポリマーの造膜と水分の関係(粘性の影響)、セメントの水和とポリマーエマルション(ポリマー+水)の関係について、要素実験を行い、シミュレーションプログラム中に得られたデータを反映させる予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ポリマーセメント系塗膜防水層の造膜後のEPMAおよびSEMによる面分析においては、セメントやポリマーの粒子径は数μmのオーダーであり、さらに、これらが複雑に絡みあって存在するため分布状況の把握には詳細かつ精密な精度が要求されるため、専門機関での測定を予定している。 防水層の最重要項目である漏水につながる下地のひび割れ追従性試験として行う、耐下地ひび割れ性試験と、下地の保護効果の確認として行う塩化物イオンの透過試験では、断続的な測定が必要であり、かつ、様々な調合、養生条件の問題を取り扱うため、測定・試験の管理に関して実験補助員の協力が必要不可欠である。また、微細構造観察用、耐下地ひび割れ性試験用、電気泳動試験、シミュレーションによる要素試験用など、多くの試験体の作製も予定しており、同様に管理には実験補助員が必要不可欠であると考えている。 これまでに得れた成果について、建築学会や土木学会等で発表予定である。 なお、繰り越し額である23337円はすでに執行を終え、4月に支払が完了している。
|
Research Products
(3 results)