2013 Fiscal Year Research-status Report
PC鋼棒により能動的横拘束を受けるRC柱のせん断伝達機構の解明
Project/Area Number |
24760457
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
中田 幸造 琉球大学, 工学部, 准教授 (80347129)
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Keywords | 耐震補強 / プレストレス / せん断強度 / トラス機構 / アーチ機構 |
Research Abstract |
本研究の目的は,緊張PC鋼棒で能動拘束したRC柱のせん断伝達機構を解明することである。PC鋼棒をRC柱の外周に外帯筋状に配置して緊張力を導入することで,「能動的横拘束効果」,「受動的横拘束効果」,「せん断補強効果」の3つの補強効果を期待できる。通常のRC柱に配筋される帯筋においては,柱が膨れて始めて帯筋の横拘束効果が発揮される「受動的横拘束効果」,せん断伝達能力の向上効果である「せん断補強効果」の2つを期待できるが,本補強法ではPC鋼棒に導入する緊張力によってRC柱を能動拘束するため,他には見られない「能動的横拘束効果」も期待できる。この「能動的横拘束効果」がRC柱のせん断伝達機構にどのような影響を与えるのかについての研究は他には見当たらない。 平成24年度は,アーチ機構の理解を進めるために主筋の付着を除去した単純な試験体により,せん断破壊実験を行い,せん断伝達機構の検証を行ったが,平成25年度は主筋の付着がある試験体によりトラス機構とアーチ機構の検証を進めた。即ち,主筋の付着がある試験体と主筋の付着を除去した試験体に加えて,付着がある主筋と付着を除去した主筋を混合配筋した試験体を製作し,せん断破壊実験を行い,その応力伝達機構の変化を検証した。その結果,隅主筋のみに付着がある試験体と中主筋のみに付着がある試験体の最大水平耐力は,全主筋に付着がある試験体よりもやや小さくなった。これは,付着がある主筋の付着応力度が付着強度計算値に到達,あるいはその近傍にあり,付着劣化が生じたことが理由として考えられる。また,実験で得られたトラス機構の角度φを用いて,全試験体についてトラス機構およびアーチ機構負担分をそれぞれ求めた。その結果,付着劣化が生じるとアーチ機構負担分は増加するが,それ以上にトラス機構負担分が減少すること,また,トラス機構の存在によりアーチ機構負担分が変化することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではPC横補強RC柱のせん断伝達機構を検証するため,主筋の付着がある試験体で主にトラス機構,主筋の付着がない試験体でアーチ機構を検証する。主筋の付着がある試験体ではトラス機構とアーチ機構が混在するため,平成24年度は主筋の付着がなくアーチ機構のみが発生する試験体に主に着目し,軸力や能動側圧がアーチ機構強度に及ぼす影響を検証した。平成25年度は,付着がある主筋や付着がない主筋を混合配筋した特殊な試験体でせん断伝達機構の検証を行った。実験の結果,付着がある主筋と付着がない主筋を混合配筋した試験体では付着劣化を生じたが,付着劣化はアーチ機構負担分を増加させるがトラス機構負担分はそれ以上に減少すること,トラス機構の存在はアーチ機構負担分を変化させることを明らかにした。一方,混合配筋試験体では付着劣化が生じたものの,付着がある主筋の配筋位置の相違は(付着があるのは断面4隅の隅主筋のみか,あるいは中主筋のみかの相違),トラス機構負担分には影響を与えておらず,せん断伝達機構に変化は見られなかった。 今後は,トラス機構を卓越させることを考え,せん断スパン比1.5で主筋の付着がある試験体のデータを集積し,せん断伝達機構の解明を進めていく。以上より,研究は概ね順調に前進していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の実験結果を踏まえ,平成26年度はせん断スパン比1.5のせん断破壊実験を計画する。これまでは,まず,アーチ機構をより単純に理解するために太く短いせん断スパン比1.0,かつ,主筋の付着を除去したRC柱によりせん断破壊実験を行ってきた。その結果,アーチ機構はある程度理解が進んできたと言えるため,平成26年度はトラス機構に焦点を当て,前年度よりやや長く(せん断スパン比1.5),かつ主筋の付着がある試験体を用いてせん断伝達機構の検証を行う。実験変数にはPC鋼棒の緊張ひずみと軸力比を設定する。この実験変数の値はすでに取得済みのせん断スパン比1.0と同じ水準を設定し,そのデータと比較検証を行う。その後,これまでのデータを総合的に検証し,せん断強度への能動拘束の効果を明らかにし,学術論文の発表へとつなげていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,平成26年度の配分予定額がやや減少することを見越し,効率的に,かつ節約して予算執行に努めたためである。 平成26年度は,これまで同様に試験体製作,加力実験を継続するため,製作にかかる消耗品費,試験体製作費,コンクリート費用,加力装置メンテナンス費用,加力装置組み換え(せん断スパン比1.0から1.5へ),ひずみゲージ費用,国内学会出張旅費などが平成26年度の執行計画の主な内容である。
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