2013 Fiscal Year Research-status Report
音声特徴量の保存度に着目した建築空間における音声品質の実時間評価法の開発
Project/Area Number |
24760467
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 逸人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30346233)
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Keywords | 残響音 / 騒音 / 聴き取りにくさ |
Research Abstract |
本研究は,音声の物理的な特徴量の保存度に着目することにより,リアルタイムに室内空間における音声品質を評価する方法を開発することを目的とする。平成25年度は,主に音声品質の評価指標をリアルタイムで測定可能なシステムの構築を行った。 測定に時間を要するがインパルス応答を介した精度が高い評価指標の算出が可能な相互相関法と,リアルタイムに近い測定が可能だが評価の精度では劣ると予想される平成24年度に検討したメルケプストラム係数(MFCC)のユークリッド距離について検討した。測定システムの概要は以下の通りである。(1) 音声をダミーヘッドに装着されたマウスシミュレーターから再生する,(2) ダミーヘッドの口元(P1)と受聴点(P2)の2点で録音する,(3) それらの録音から相互相関法によるP1-P2間のインパルス応答の算出と,P1とP2におけるMFCCのユークリッド距離を算出する。 相互相関法については,残響音場における音声の「聴き取りにくさ」と対応する物理指標であるC50に着目し,C50の測定誤差が許容範囲におさまる測定所要時間を検討した。測定誤差は,Swept-sine法を測定信号として用いて測定した正確なC50と,音声を測定信号として相互相関法で測定したC50の差で評価した。既往の研究においてC50が1.1dB異なれば音声の明瞭性の違いがわかることが示されていることから,±1.1dBを許容誤差とした。実際に上述のシステムを用いて教室で測定した結果,測定所要時間はインパルス応答長の10倍程度であることを示した。 また,MFCCのユークリッド距離について,相互相関法の測定で録音した音源から算出した。その結果,音声と騒音の音圧レベル差の影響は,4次程度までの低次のMFCCのユークリッド距離の差と対応が見られた。残響音の影響について低次のMFCCに着目して今後検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下2点より,研究の達成度は「やや遅れている」と判断した。 (1) 測定システムの構築に予定よりも時間を要し,H25年度に予定していた心理実験を終了することができなかったため。 (2) MFCCを用いた評価について,低い次数の値に着目すれば騒音の影響を評価できる可能性があることを明らかにしたが,残響音の影響については未検討であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,心理実験を中心に研究を進める。まず,音声品質の連続評価実験を行ない,どの程度の時間間隔で音声品質評価が必要とされるかについて明らかにする。さらにこの心理実験の結果をもとに,MFCCによる実時間評価の最適パラメータを検討する。次に,音声品質の実時間評価を発話者にフィードバックすることにより,音声品質がどのように改善されるかを同様に心理実験で検討する。実時間評価だけでなく,受聴点における音声のフィードバックを同時に行うことにより,さらなる改善がみられるかどうかも併せて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に購入した物品が想定よりも高額であったため,消耗品等の購入をすべて見送った結果,残額が生じた。 消耗品の購入等に充当する。
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