2012 Fiscal Year Research-status Report
理想数値実験による都市内熱環境場に及ぼす河川・緑地・風況の影響評価
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24760480
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
馬場 雄也 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (60512861)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 都市気候 / 熱環境 / 気象 |
Research Abstract |
都市スケールのシミュレーションモデルを確立するために、風洞実験結果と詳細な比較・検証を行なって、シミュレーションモデルが現実を再現し得ることを確認した上で、建物、河川、樹木による熱環境変化の解析を行った。都市部の熱環境を左右する影響には放射伝熱、潜熱・顕熱フラックスなどが考えられるが、熱環境に及ぼす影響の組み合わせが無数に存在してしまうため、都市によって熱環境が悪化する原因として風環境の悪化に着目した。すなわち都市とメソスケール現象の相互作用に影響を及ぼし得る要素として都市による大気との摩擦効果に着目し、その影響変化を検証した。 河川を都市部に配置することで建物平均高さ以下の高度で大気摩擦が大幅に減少する。一方緑被率を上げると、都市部の密集度を表す指標である建物前面投影面積に寄らず、緑被率が増加することで大気摩擦が大きく減少することが分かった。加えて、気象条件が内包するランダム性を考慮する目的で風向による都市と大気の摩擦変化を検証した。結果、風向によって同一の都市構造でも摩擦が増加する傾向があることが分かった。これらの傾向は都市と大気の摩擦効果を代表する重要なパラメータである粗度長の変化として表すことができ、気象スケールのシミュレーションモデルへと組み込むことができる。 今年度は研究計画にある都市スケールシミュレーションモデルの構築と並行して、関東域を対象としてメソスケールシミュレーションモデルの構築も行った。この気象スケールを対象としたモデルはヒートアイランド現象のスケールが都市スケールに比べて時間・空間スケールが季節単位・関東全域となることから、領域気候モデルとして構築を行った。構築した領域気候モデルから都市部の熱環境とその日変化が観測と比較して定量的によく一致することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現実を再現しうる都市スケールシミュレーションモデルの確立および、関東域を対象とした領域気候モデルの構築に想定外の時間を必要とした。これには都市スケールシミュレーションモデルの確立に必要な風洞実験データが不足していたこと、およびヒートアイランド現象を再現しうる領域気候モデルを構築するにはモデルが内包する不確実性を把握し、その改善が必要であったこと、加えてモデルの再現性を改善するために必要な感度解析が膨大なケース・スタディを必要としたことに原因がある。 以上の理由から、都市スケールの熱環境場の評価については膨大なケース・スタディを排除し、建物、樹木、河川の流体力学的な効果を先行して評価することとなった。従って、これらの都市構成要素の熱力学的な効果については評価が未検討である。しかしながら、現実を再現しうるシミュレーションモデルを都市・気象スケールにおいて構築・確立したことで、シミュレーションモデルによる検証の妥当性は飛躍的に向上した。さらに、熱環境の評価を流体力学的な効果に限定したことで都市のメソスケールへの影響を単純化することができ、都市構成要素の多様性、気象条件のランダム性を考慮した多くのケースにおいて詳細な検証を実施することができた。 従って、本研究における検証内容には一部の変更があったものの、実施内容は研究目的に沿っており、概ね研究実施内容は達成できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は都市スケールシミュレーションで得られた都市と大気の相互作用効果の建物、河川、樹木による変化をメソモデルに組み込める形へとモデル化する。次にこれを関東域領域気候モデルとして構築したメソスケールシミュレーションモデルへ反映する。都市スケールシミュレーションで得られた効果はメソモデルのモデル要素であり、気象スケールにおいて都市を考慮する都市キャノピースキームへと導入する。都市スケールシミュレーションで得られた効果を反映した場合、反映しない場合で領域気候モデルによって都市部の熱環境場をシミュレーションすることで、気象スケールにおける都市構成要素の熱環境場への影響を検証することができる。最後に、気象スケールから得られた熱環境場を都市スケールへと反映させることで、気象スケールからのフィードバックによる都市スケールの熱環境場を評価する。以上の実施内容と並行して、前年度に積み残した都市スケールの熱環境場における建物、河川、樹木の熱力学的効果の見積もりを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ処理用ソフトウェアの購入が必要となる解析が前年度までに間に合わなかったため、次年度に購入を予定している。また、前年度まではモデルの構築、結果の検証に時間を費やしたため、これまでに得られた研究成果が十分に外部へ公開されていない。従って、学会での研究発表、情報収集および論文化にかかる費用にも次年度の研究予算を使用する。
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Research Products
(1 results)