2012 Fiscal Year Research-status Report
地方都市における小流域を基礎とした環境基盤とその持続再生に関する研究
Project/Area Number |
24760483
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
片桐 由希子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (50508190)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 流域圏 / 緑地計画 / 防災計画 / 少子高齢化 / 環境データベース / グリーンインフラストラクチャ |
Research Abstract |
本研究は、大規模自然災害への備えと少子高齢化への対応として、流域を環境基盤とした都市のあり方を、緑地計画の観点から提示することを目的としたものである。初年度は、この環境基盤の軸として、流域の空間構造と社会的な状況変化を把握するためのデータベースの構築について検討した。当初は東日本大震災の被災地である宮城県の仙南地区を中心に研究を進める計画であったが、現状の復興状況を鑑み、将来起こりうる大規模自然災害に対する事前復興と社会変化に対応する、流域のグリーンインフラストラクチャの可能性とその計画手法について検討するものとし、本年度は資料収集と基礎的な調査を行った。 仙南地区については、研究の基礎フレームとして対象地の小流域区分図を設定し、農業の生産基盤としての小流域の機能の概況を把握するため、ため池台帳を小流域と併せてデータベース化をはかった。対象地区においては、生産基盤としてのため池による灌漑区域は、震災による被害は少なかったものの谷部の比較的小規模な水田であり、農業の経営規模の拡大や人口縮退の影響を直接的に受けやすいことがいえる。また、東京の郊外にあたる狛江市を対象とし、農業の生産基盤であった水利施設、農業用水路の基軸とし、環境資源として地形条件、緑地環境、社会的状況として、土地利用とその時系列の変化、集落の変遷、公共施設に関して、戦前からの生活基礎単位である小字界に基づいた環境資源データベースの構築、地域構造の分析を行った。水路跡としての敷地は狭小であるが、生産緑地や公園などのオープンスペース、公共緑地を繋ぐネットワーク軸として、流域を基盤としたグリーンインフラストラクチャとしての可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は東日本大震災の被災地である宮城県の仙南地区を中心に研究を進める計画であったが、現状の復興状況を鑑み、将来起こりうる大規模自然災害に対する事前復興と社会変化に対応する、流域のグリーンインフラストラクチャの可能性とその計画手法について検討するものと修正したため、資料収集や文献調査が中心となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1年目に検討したデータベースの構成に基づいて、首都圏郊外の流域におけるデータベース作成と、環境基盤とその持続再生の評価手法の開発と計画論の検討を行う。地方都市の持続再生のストックとしての環境基盤の評価フレームを提示しその対象地域における持続性を明らかにする。分析のアプローチは以下の2つである。 1、流域環境基盤データベースにもとづき、小流域における環境基盤が町の発展と生活圏の変化にどのように貢 献し、変質したかを明らかにし、その持続性に対する評価手法を開発する。小流域における土地利用、水循環、 、住民の生活・経済活動における小流域への依存性に着目し、長期的には歴史的変遷と突発的なインパクトとしての大規模災害への被害から、流域の環境基盤の脆弱性と頑強性のポイントを把握する。 2、歴史的変遷に対する環境基盤の持続性について、近世の構造が残る明治期、第二次世界大戦後に関する各要素を流域環境基盤データベースに追加し、これをもとに、交通や住宅施策など都市基盤整備と開発動向の変遷を明らかにし、脆弱性と頑強性のポイントを把握する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現状の復興状況を鑑み、将来起こりうる大規模自然災害に対する事前復興と社会変化に対応する計画手法について検討するものと修正し資料収集や文献調査を中心とし、現地調査やデータ入力に係る作業を次年度の計画を修正したため、それにかかる費用に関して次年度予算が発生した。次年度の予算の使用ついては、データベース作成のための機器を購入と当初より予定していた対象地の調査を行うとともに、阪神・淡路大震災の被災地である神戸市や南海トラフ地震とともに大規模水害対策が急務である紀伊半島を対象とした現地視察を行い、大規模自然災害による社会的変化の実状とその環境への影響について把握する。
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