2014 Fiscal Year Research-status Report
自動車に頼らない生活スタイルを持続的に支える都市空間の評価・計画手法
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24760484
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高見 淳史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40305420)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 都市計画・建築計画 / 低自動車依存都市 / アクセシビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,人々の「自動車に頼らない生活スタイル」を持続的・安定的に支えうる土地利用と交通の評価・計画手法について,アクセシビリティ環境に着目し検討するものである。平成26年度は次のとおり研究を実施した。 第一に,前年度に実施したWebアンケート調査のデータから,人々のアクセシビリティニーズや居住地選好・モビリティ選好に関する分析を行った。特に,代表的な活動ごとの自宅近隣におけるアクセシビリティニーズの類型化を行って,年齢やライフステージ,自動車の保有・利用状況といった属性との関係を整理するとともに,長期的な居住地選好・モビリティ選好の推移パターンについて検討した。 第二に,若者(20~39歳)の自動車保有・利用の変化に着目し,過去5時点の全国都市パーソントリップ調査・全国都市交通特性調査のデータから都市類型別・ライフステージ別の傾向を分析した。その結果,自動車利用可能性は地方都市圏既婚女性などを除いて低下傾向にあること,他都市圏では1987年水準から微増~横ばいにある子同居世帯の自動車トリップ原単位も三大都市圏では低下傾向にあること,などを明らかにし,特に三大都市圏で「自動車に頼らない生活スタイル」が広がりつつあるとの示唆を得た。 第三に,平成26年度中に施行された計画制度の重要な変更として,都市再生特別措置法等の改正による「立地適正化計画」と地域公共交通活性化・再生法の改正による「地域公共交通網形成計画」の創設があった。本研究課題の主題である「自動車に頼らない生活スタイル」の実現にも影響が大きいことから,両制度に関する展開を追うとともに,アクセシビリティ概念を基本に据えた計画の立案・実現手法について考察した。関連して,全国諸都市の現行の計画で位置付けられている拠点への商業・医療施設の集積,ならびに拠点間を結ぶ公共交通サービスの現状の把握も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に実施したWebアンケート調査のデータに基づき,人々のアクセシビリティニーズと居住地選好・モビリティ選好に関する分析を実施した。その過程で,それらをより的確に把握するためには同設問の選択肢の設定や文言について改善の余地があり,再度十分な検討を行うことが望ましいとの判断に至った。これら一連の分析・検討に時間を要したことから,研究計画に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
人が持つアクセシビリティニーズと実際に享受するアクセシビリティとのミスマッチを分析するには,前者を適切に評価することが優先的に重要である。しかし,上述のとおりこれを的確に把握するにはいま少しの調査・分析の改善を要すると判断している。また,アクセシビリティ水準を評価するための技法は,国土交通省国土技術政策総合研究所の「アクセシビリティ指標活用の手引き(案)」(2014年)など,既に実務的にも普及に向けた一定の進展が見られるようになった。一方,本研究課題の主題である「自動車に頼らない生活スタイル」の促進を図る観点からは,居住地選好・モビリティ選好との関係にまで分析を深めることが学術的に大きな眼目となる。以上の事柄と種々の制約とを勘案して,アクセシビリティ水準の評価については若干簡略化してでも,アクセシビリティニーズと居住地選好・モビリティ選好,ならびに両者の関係を理解することに重点を置いて進めることとしたい。
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Causes of Carryover |
前述のとおり,平成25年度に実施したWebアンケート調査のデータに基づき,人々のアクセシビリティニーズと長期的なライフステージごとの居住地選好・モビリティ選好に関する分析を実施した。その過程で,それらをより的確に把握するためには同設問の選択肢の設定や文言について再検討することが望ましいとの判断に至った。これら一連の分析・検討に時間を要し,研究計画に遅延が生じたため,未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,上記の再検討を反映した調査・分析を実施し,アクセシビリティニーズと長期的な居住地選好・モビリティの整合関係に関する検討を行うことを計画している。未使用額はこの費用に充当したい。
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