2012 Fiscal Year Research-status Report
街並み景観における関係性をデザインする創造的ルールの探求
Project/Area Number |
24760489
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
守山 基樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70534303)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 街並み景観 / 関係性のデザイン / データベース / 類似と差異 / 形態 / 意味 |
Research Abstract |
本研究の目的は、京都の街並みを対象として、歴史のなかで育まれてきた街並み景観の多層性とそこに仕組まれた関係性を解読し、関係性のデザインの視点からみた創造的ルールを探求することである。当該年度は、街並みに創出される類似と差異のネットワークの仕組みの一端を明らかにするために、オブジェクト・システムCLOS(Common Lisp Object System)を用いて京都の伝統的街並みを記述した。具体的には、オブジェクト・システムの仕組みを活用し、街並み景観を、定量的なパラメータと形態生成メソッドを持つオブジェクトの集合としてモデル化することにより、形態生成の手続きを含む記号の記述手法を確立し、京都の街並みに現れる記号のヴォキャブラリーを体系立てる基盤を構築した。また、形態生成メソッドを活用しつつ、記号間の空間的な配列の記述を導入することで、多様な記号の集合として現れる街並み景観を記述するためのインターフェイスを構築し、街並みのデータベースの記述と分析を行った。さらに、街並みの形態の精緻な分析を通じて得られたパターンを、歴史・産業・街区構成・土地利用といった街並みのレイヤーと重ね合わせることにより、街並みの形態的構造と結びついた「街並みの意味」の解読を進めた。 当該年度の研究成果は、類似と差異の形態的な構造をオブジェクト指向言語の仕組みを導入してモデル化したこと、特に、建築的記号の形態の記述に連続量で表されるパラメータを導入した点にその意義がある。街並みにおいて、ある特徴が意味の生成に関与しているかどうかを判断する手掛かりとなるのは、その特徴の反復可能性である。連続量から定量的に特徴の類型を判別し、繰り返し現れる特徴の類型の抽出を通じて、その背後に意味を担う可能性のある特徴を探究した点に当該年度の研究成果の重要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベースを拡張し、街並みに現れる形態特徴の類型を判別する手続きを組み込むことで、街並みにおける類似と差異のネットワークを精緻に抽出することができた。また、街並み記述のためのインターフェイスの構築によって、立面図として把握される景観の形態的構造のパターンと、歴史・産業・自然・街区構成・土地利用といった街並みの背後の意味とを重ね合わせ、形態と意味との関係の記述と分析を進めることができた。 当該年度に構築したデータベースでは、3次元VRシステムを導入した景観の記述は行っていないが、交付申請書に当該年度の目的として挙げた(1)類似と差異のネットワークの抽出、(2)街並み景観の多層性の重ね合わせ、(3)街並み景観の意味の記述について、プログラミング言語のAllegro Common Lispに実装されたCLOSによるデータベースを活用して、おおむね順調に達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、諸要素の集合からなる関係性のデザインとしての街並みを形成するために、街並み形成の指針となるような「創造的ルール」を探求する。 (1)街区・通りレベルの固有のデザインルール 街区や通りを単位として、街並みを精緻に記述したデータベースを活用することによって、街区・通りレベルの固有の街並みのデザインルールを探求する。これまでに構築した街並みの分析アプリケーションを拡張し、地域の景観資源の発見を通じて歴史のなかで育まれてきた固有のデザインのパターンとその背後にある意味との関係を解読するためのデータベースを構築する。 (2)敷地を超えた相互関係としてのデザインルール 個別の敷地を超えて、建築相互の関係や、建築と道・樹木・オープンスペースなどの景観構成要素との関係をデザインするためのルールを探求する。我が国では法制度上、原則として所有する敷地内では法律の範囲内での自由な建築行為が認められており、敷地を超えた個別要素間の関係を規定する原理がない。そこで本研究では、街並み景観のデータベースにおいて、構成要素間の関係性から街並み景観を把握する機能を実装し、相互関係としてのルールとしてどのようなものが可能かを探求する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の研究では、街並みのデータベースの構築において主にプログラミング言語のAllegro Common Lispを使用し、3次元モデリングやバーチャルリアリティの構築のためのソフトを使用しなかったため、次年度使用額が生じることになった。次年度の研究では、地域の景観資源の発見・記述、さらに、建築相互の関係や、建築と樹木・オープンスペース・道、といった種々の景観構成要素間の関係をデザインするシステムの構築のために、3D都市景観モデリングソフトウェアのCity Engine、地理情報システムのArcGIS、CAD・CGソフトのAutoCAD・3ds-maxの導入を計画している。また、設備備品としてデータ解析、研究協力者によるデータ作成のためのPCを購入し、消耗品として、データベース保存用の記録媒体と、街並みの現地調査で使用する文具や記録媒体の購入を計画している。さらに、国内外での学会における成果発表のための旅費を使用する。
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