2012 Fiscal Year Research-status Report
巨大津波後の火災に対する津波避難施設の安全性能評価と防火対策の立案に関する研究
Project/Area Number |
24760492
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西野 智研 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00609894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 津波火災 / 重油 / 瓦礫 / 津波避難ビル / 津波避難タワー / 火災安全設計 / 発熱性状 / 火災外力 |
Research Abstract |
「津波火災」とは、地震後の津波により浸水した市街地で発生する火災のことを言う。本研究では、浸水市街地における一時的な避難空間として、その重要性が指摘されている津波避難ビル・津波避難タワーの安全設計について、津波火災による延焼リスクを考慮した防火対策を、いくつかの火災実験を通じて提案することを目的としている。 現状、津波避難ビルの安全設計では、構造的な要件として、地震と津波に対する力学的な抵抗力を通常の建築物とは別に要求しており、火災安全については、通常の建築火災を想定した設計が適用されている。しかし、津波火災により津波避難ビルが類焼しても、海水や瓦礫に取り囲まれた状況では、在館者はビル内に籠城せざるを得ない。こうした状況は、通常の建築火災を想定した安全設計では考慮されていないため、津波避難ビル特有の防火対策が必要になる。 平成24年度は、二種類の取り組みを行った。まず、東北地方太平洋沖地震(2011)において、津波避難ビルの周りで発生した火災の状況を、映像記録の観察と被災者の証言を基に整理した。これにより、様相の異なる三種類の津波火災の存在と、各火災の燃え草や火災外力といった特徴について、今後の研究を進める上で重要な基礎資料を得た。次に、防火対策の有効性を物理的に評価する上で重要な津波火災の発熱性状に着目し、海面に浮遊する重油と瓦礫が一体的に燃焼する火災を600mm角のプールで再現することで、瓦礫の種類や重油の露出面積を変化させた場合の発熱速度の測定を行った。これにより、津波火災の発熱速度についても、通常の建築火災で採用されるt2(時間二乗)火源として扱えることが示された。また、火災成長率の目安値を推定するとともに、火盛り期の発熱速度と火災の継続時間を物理的に予測可能なモデルを開発したことで、津波避難ビルの延焼リスク評価に利用可能な発熱速度曲線の設定手法を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度における当初の研究計画では、津波火災の外力推定に必要な火災の発熱性状について、津波火災を模擬した燃焼実験を行い、基礎データの収集を行うことを目的としていた。実際には、東北地方太平洋沖地震における津波火災の映像解析や証言の収集に時間を要したため、予定していた実験条件の七割程度が実施済みの状態にある。このため、現在までの研究進捗は、当初の計画内容よりやや遅れていると言え,残りの実験条件については,平成25年度に実施することになる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、まず、津波火災の発熱性状に関する実験のうち、平成24年度に実施できなかった条件を実施する。その後、津波避難ビルに作用する火災外力の推定を目的とした二種類の火災実験を行い、火災外力のモデル化を行う。一つ目は、津波避難タワーの屋上における温度分布の把握を目的とした実験であり、津波避難タワーの高さや寸法,火災の発熱速度を変化させることで、相似モデルを構築する。二つ目は、津波火災による外部空間での高温上昇気流が存在する場合の噴出火炎の性状を把握する実験であり、開口部の形状や火災の発熱速度、ひさしの有無等を変化させることで、相似モデルを構築する。 平成26年度は、平成25年度に構築した火災外力に関する相似モデルと平成24年度に構築した発熱性状に関するモデルを統合することで、津波避難タワーに要求するべき高さや面積、噴出火炎による上階延焼を防止するために必要な津波避難ビルの開口部周りの性能について、ケーススタディを行い、津波火災を考慮した防火対策の提案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する研究費が生じた主な理由は、東北地方太平洋沖地震における津波火災の映像解析や証言の収集に時間を要したことで、予定していた火災実験条件のうち年度内に実施できない条件が発生したためであり、実験に使用する燃料の購入に必要な費用に相当する。平成25年度は、まず、こうした未実施の実験条件を行うことから、これに必要な燃料購入に支出する。
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