2012 Fiscal Year Research-status Report
こどもの育ちと安全の拠点としての学童保育拠点の計画に関する包括的研究
Project/Area Number |
24760504
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
山田 あすか 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (80434710)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 学童保育拠点 / 放課後の活動拠点 / 安心・安全 / 防災拠点 / 適切な人数規模 / 適切な面積規模 / 地域資源の活用 / ロジスティック回帰分析 |
Research Abstract |
学童保育拠点は,学童に放課後を安心・安全に過ごせる場を提供し他者との関わりや成長・発達を保障するとともに,保護者の就労支援の役割を担う。本研究ではコストと質が両立した学童保育拠点の拡充のため,適切な人数と面積規模,面積の有効活用と学童が活動しやすい環境づくり,地域との関わりや地域資源の活用,に着目してその整備への提言を行う。 平成24年度には,東京都23区の学童保育拠点の実施状況をアンケート調査によって調べ,学童保育指導員の評価から適切な人数規模と面積規模を算出する分析を行った。この結果,理想1人あたり面積は現行のガイドライン1.65㎡/人以上では不足であり,75%の拠点が満足する水準として,2.8㎡/人(小学校併設)や6.4㎡/人(児童館併設)という値を得た。理想人数規模は,同様に75%水準で55人(小学校併設)と,51人(児童館併設)という回答を得ており,現行ガイドラインの70人(厚生労働省)注3),40人(学童保育連絡協議会)とは異なる値であった。このような数値の提示は,現在は科学的根拠や検証を伴わずに設定されている規模の基準を,こどもの活動や保育のしやすさから再考する手がかりとなる。また,ゾーニングがある拠点で,面積を有効に活用できる可能性も提示された。これは今後,観察調査による検証を経て,その成果を公開できれば,限られた面積などの条件の下で保育の場としての質を高める方法のひとつとなりうる。この成果は,日本建築学会大会にて発表されており,また査読論文として投稿され,査読を受けている段階である。 また,都内A区を対象として,放課後の児童の活動の様子を,学童保育拠点,自宅,地域の公園等を含めて保護者とこども本人を対象としたアンケート調査によって把握し,学童の活動範囲の拡がりと校区設定などの関係について分析した。この成果は,平成25年度日本建築学会にて発表の予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には,これまでの予備調査などでの研究蓄積を活かして,運営形態,併設施設,人数・面積規模,活動内容の実態についてのアンケート調査を実施し,運営形態等の類型化を行って運営実態を整理すること,また適切な規模についての評価をもとにした規模算定の指標例を提示することを活動計画に掲げていた。結果として,これらの活動計画を充分に満たす進捗であり,予期していた知見を得て学会発表等を含めた研究成果の公開を行うことができた。 また,環境づくりの構造をwebによって公開する素地をつくり,事例の収集と事例の整理に向けた道筋を立て,作業に着手することができた。さらに,平成25~26年度に実施する計画であった観察調査,都市環境調査,通所状況の調査などの準備に着手しており,自治体や拠点事例などとの調整を始めている。加えて,本研究プロジェクトの研究協力者である学校教育施設研究者からの助言により,障碍をもつこどもの学童期の放課後活動や生活の支援の場である児童デイについて,関連研究として調査する方針を当初計画に加えて,その調査の調整に着手している。 このような進捗状況とこれまでに得られた研究成果,研究成果公開の状況に鑑みて,本研究プロジェクトは(1)当初の計画以上に進展している,と評価することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,学童保育拠点の運営形態:対象児の設定(全児童対応/学童のみ/混合)や併設施設(小学校併設/児童館併設/その他地域施設併設/単独)によって,理想とするまたは適切な人数と面積の規模が異なることが明らかになっている。また,これらの運営形態の別によって,こどもの活動の種類,いうなれば遊びや生活の場としての豊かさが異なることがわかっている。このため,今後の研究では運営形態別に詳細な観察調査とヒアリング調査を実施して,運営形態ごとに適切な規模を算出していく。 また,就学前保育施設では室内の設え(家具等によるゾーニング)によって,保育者による室面積への評価,広さ感が異なることがわかっている。このため,面積を有効に活用する観点から,学童保育拠点における設えと活動面積,適切な1人あたり面積について上記調査と関連づけて分析する。 さらに,様々な自治体や各拠点で行われている環境づくりについての様々な工夫は,一定の整理方針によるプラットフォームのもとで整理し公開されていくことで,広く環境の質の向上が図れる。そこで,上の調査に関連づけて環境づくりの事例を保育施設を含めて収集し,整理・公開するフォームをつくる。環境づくりの実践的検証に向けての協力事業所との調整にも着手する。 さいごに,学童保育拠点のあり方を包括的に捉え,その整備と質の向上に向けた提言を行うため,拠点周辺の都市環境条件や拠点の運営形態等踏まえた都市環境との関係を把握し,対象地域の将来推計を参考に,自治体/学校区単位での既存建物/公共施設の余裕スペース等,都市環境資源の実態とその将来変動を分析する。併せて,障碍をもつ児童の放課後活動の場の状況を調べ,連携を検討する。これらより,こどもの見守りや防災の機能をもった拠点を地域の都市環境資源を利活用しながら配置・整備し,運営するための課題整理と整備例を提示する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には,アンケート調査によって典型的事例として絞り込んだ自治体と,学童保育拠点の事例を対象としてヒアリング調査と,規模と建築的設えと利用のされ方を活動で使用される面積と活動内容から図る詳細な観察調査を実施する。また,児童の通所状況(距離,経路)をGISを用いて調べ,通所圏域の設定を検証する。 このため,観察調査を実施するにあたっての交通費,調査人員および調査データの整理要員に対する謝金を計上する。またこれまでの研究成果を論文や学会大会で発表するための交通費や論文掲載料を計上している。 さらに,関連する研究蓄積とこの研究プロジェクトの研究成果,また様々な自治体や個々の拠点事例での環境づくりの工夫を,環境づくりの構造として整理し,webを通してその公開を図る。このための事例収集とデータ収集,その整理,webページ作成(研究成果公開)と管理にかかる交通費,外注作業費等を計上する。
|