2013 Fiscal Year Research-status Report
こどもの育ちと安全の拠点としての学童保育拠点の計画に関する包括的研究
Project/Area Number |
24760504
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
山田 あすか 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (80434710)
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Keywords | 学童保育拠点 / 適正規模 / 活動面積 / 広さ感評価 / 児童デイサービス |
Research Abstract |
学童保育拠点は,学童に放課後を安心・安全に過ごせる場を提供し他者との関わりや成長・発達を保障するとともに,保護者の就労支援の役割を担う。本研究では,コストと質が両立した学童保育拠点の拡充のため,適切な人数と面積規模,面積の有効活用と学童が活動しやすい環境づくり,地域との関わりや地域資源の活用,に着目してその整備への提言を行う。 平成25年度には,前年度に実施した東京都23区の学童保育拠点のアンケート調査による現状把握・分析から導かれた適正規模水準を、観察調査によって検証する研究を行った。このなかで、さらに精査された訂正規模数値を導くことができた。また、活動内容によるゾーニングの有無など保育拠点内部の設えによる活動面積と広さ感評価(スタッフが保育の場として適正な規模と感じているかどうか)への影響を調べ、ゾーニングがあることで面積を有効に活用でき広さ感評価が良いという結果を得た。これは、限られた面積などの条件の下で保育の場としての質を高める方法のひとつであり、重要な成果である。加えて、同面積の場合には室数が複数あることで広さ感評価が向上することを明らかにしており、これは2015年に施行されるクラス分割を指導する新ガイドラインの方向性を裏付ける結果である。これらの成果は,日本建築学会大会にて発表されており,また査読論文として投稿され,掲載済みおよび査読中である。 以上の事前計画の調査分析が予定以上の進展をしているため、さらに調査のなかで指摘のあった障がいのある学童のための放課後の保育拠点、児童デイサービスについての調査分析を行い、1事業所の協力を得て室内の改修を行った。その成果の検証によって、障がい特性や活動内容に応じたゾーニングの効果が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には,これまでの予備調査などでの研究蓄積を活かして,運営形態,併設施設,人数・面積規模,活動内容の実態についてのアンケート調査を実施し,運営形態等の類型化を行って運営実態を整理すること,また適切な規模についての評価をもとにした規模算定の指標例を提示することを活動計画に掲げていた。結果として,これらの活動計画を充分に満たす進捗であり,予期していた知見を得て学会発表等を含めた研究成果の公開を行った。 平成25年度には、観察調査によってこどもの活動やスタッフの評価を踏まえた適切な面積規模の検証を行い、[標準]と[最低限]の水準となる数値を得た。さらに、室数や設えによって面積を効果的に活用できることを明らかにし、限られた面積などの条件下での保育の場としての質の向上に資する知見を得た。また当初計画に加えて、障碍をもつこどもの学童期の放課後活動や生活の支援の場である児童デイサービスの活動と設えの調査を行い、改修によって場の質の向上を図るプロジェクトを実施すると共にその効果を検証した。 さらに、平成26年度にとりまとめの成果として実施する計画であった、都市スケールでの学童保育拠点配置等の検討、公共施設等の部分を学童保育拠点に転用することによる必要な数と質の確保についての調査・分析と提言に着手しており、基盤となる知見を得ている。 このような進捗状況とこれまでに得られた研究成果,研究成果公開の状況に鑑みて,本研究プロジェクトは(1)当初の計画以上に進展している,と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た知見では,学童保育拠点の運営形態:対象児の設定(全児童対応/学童のみ/混合)や併設施設(小学校併設/児童館併設/その他地域施設併設/単独)によって,理想とするまたは適切な人数と面積の規模が異なる。そこで、運営形態別に詳細な観察調査とヒアリング調査を実施し,運営形態ごとに適切な規模、また運営形態を超えて、学童保育拠点として適切な規模を分析し、水準をまとめた。また、家具等によるゾーニングなど室内の設えによって,保育者による室面積への評価:広さ感や、児童の活動面積が向上することを示した。 こうした,様々な自治体や各拠点で行われている環境づくりについての様々な工夫は,一定の整理方針によるプラットフォームのもとで整理し公開されていくことで,広く環境の質の向上が図れる。そこで,環境づくりの事例を保育施設を含めて収集し,整理・公開するフォームをつくる。このとき、今後は特に公共施設や住宅の空き室・空きスペースなどを活用した転用事例が増加する見込みであることから、より活用性の高い転用の事例に特に注目する。また、協力事業所を得て、改修など環境づくりの実践的検証を継続し、さらなる知見の検証と精査を図る。 さいごに,学童保育拠点のあり方を包括的に捉え,その整備と質の向上に向けた提言を行うため,拠点周辺の都市環境条件や拠点の運営形態等踏まえた都市環境との関係を把握し,対象地域の将来推計を参考に,自治体/学校区単位での既存建物/公共施設の余裕スペース等,都市環境資源の実態とその将来変動を分析する。併せて,障碍をもつ児童の放課後活動の場の状況を調べ,連携を検討する。これらより,こどもの見守りや防災の機能をもった拠点を地域の都市環境資源を利活用しながら配置・整備し,運営するための課題整理と整備例を提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文掲載のタイミングが年度末にかかり、別刷り代として取り置きしていた金額の執行がタイミング上困難となったため。 少額のため次年度予算に組み入れ、調査・研究費用として効果的に使用する。
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