2012 Fiscal Year Research-status Report
歴史的町並地区で多世代が同居近居により支え合う持続可能な居住環境整備に関する研究
Project/Area Number |
24760511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
細田 智久 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40324496)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 都市計画・建築計画 / 近居同居 / 居住環境 / 歴史的町並地区 |
Research Abstract |
平成24年度の交付申請書に記載した通り、平成24年度は歴史的町並地区で多世代が同居近居により支え合う持続可能な居住環境整備手法を明らかにするためのモデル地区として、島根県安来市母里地区での調査を実施した。 調査内容は、1)住民代表者と行政担当者へのヒアリング調査として、まず母里地区の現状を把握するため、現地で地区代表者に案内していただき、旧家の内部を含めた現地の把握を行った。安来市の行政担当者(建築住宅課など)にもヒアリングを行い、現在と今後の市街地における居住環境整備への取り組み状況を確認した。さらに、2)町並み写真調査として、町歩きの際に主要な通りの写真撮影を行い、地図上に整理した。そして3)住民アンケート調査として、安来市母里地区の中心部である4つの大通りに面する169軒の世帯主を対象に2012年7月に住民アンケート調査を行った。配布は母里地区中心部を形成する各自治会に委託し、回収は訪問で行った。委託数は169、回収数は133(回収78.7%)であった(一部重複回答のため母数を135とした)。これらの調査結果の集計と分析結果から、母里地区住民の町並みや多世代居住への意識、および現在の世帯の状況を把握することができた。少子高齢化の問題もあるが、母里地区の自然や町並みへの評価は高く、住み続けたい・次世代に受け継いでいきたい、さらに77%が同居近居を希望していることが分かった。 平成24年度の研究のまとめとして、先行して調査を実施していた地区との比較考察として、島根県安来市広瀬地区の研究成果との比較考察も実施した。母里地区と広瀬地区は同市内にあることから共通した状況が多いが、町の形成に由来する商店の経営歴や駐車場の確保状況が異なる。少子高齢化の問題もあるが、地区の自然・歴史・町並みへの評価は高く、2地区ともに7割以上が同居近居を希望していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の交付申請書に記載した通り、平成24年度は歴史的町並地区で多世代が同居近居により支え合う持続可能な居住環境整備手法を明らかにするためのモデル地区として、島根県安来市母里地区での調査を実施できた。そして先行して調査を実施していた地区との比較考察として、島根県安来市広瀬地区の研究成果との比較考察も実施できた。これらの研究成果として、平成24年度中に以下の3編の学術論文を執筆し、研究成果を公表することができた。 1)細田智久、島根県安来市母里地区における多世代居住にむけた住民意識調査の分析、- 歴史的町並み地区における居住環境に関する調査及び持続可能な多世代居住例の分析 その3 -、日本建築学会中国支部研究報告集第36巻、No.503、pp.547-550、2013.3 2)細田智久・古安真紀子・小椋弘佳、安来市広瀬の歴史的町並み地区における居住環境と多世代居住例に関する考察、日本建築学会技術報告集 第19巻 第41号、pp.249-254、2013.2 3)細田智久、島根県安来市広瀬町の歴史的な町並み地区での多世代居住への意識と住まい方に関する考察、日本建築学会大会学術講演会梗概集(東海)、pp.1425-1426、2012.9
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Strategy for Future Research Activity |
安来市母里地区の中心部である4つの大通りに面する169軒を中心とした詳細な町並み写真の撮影を行い、撮影した町並みの写真と建築年代等のアンケート調査で得られた項目を照合した整理表を作成する。主な整理項目は、アンケート調査からは建築年代・改修年代・駐車場有無・駐車場場所・商店経営歴を、写真調査からは階数・ファサード・間口長さを予定しており、町並み外観変化と居住環境や近居同居の実態との比較分析を行う。 さらに、アンケート調査より、現在同居をしている世帯の中で、3世代以上が同居し、かつ歴史的な住居と想定される建物の最も古い部分が明治・大正時代のものを調査対象として、居住環境と家族構成の経年変化にともなう使われ方やプライバシー確保の方法についての調査を詳細に行い、歴史的町並み地区を構成する住居における円滑な同居や次世代への住居の継承方法についての具体的な工夫点を明らかにする。 また、これまでの調査対象地区である安来市母里地区と広瀬地区では、平成25年前半に安来市役所による大規模な空き家調査が行われる予定であり、これらの統計的なデータも加えて今後の歴史的町並み地区の保存対策への総合的な提案を検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費100万円の使用計画は、以下のように考えている。 物品費20万円として、360度撮影レンズ10万円と映像記録用大容量ハードディスク10万円の購入を計画している。 旅費35万円として、日本建築学会大会学術講演発表会(北海道)への旅費15万円、日本建築学会中国支部研究報告会(広島)への旅費5万円、日本建築学会図書館での資料収集旅費5万円、次年度以降の調査対象町並み地区へのヒアリング調査旅費10万円の使用を計画している。 人件費・謝金30万円として、アンケート集計の補助作業15万円(5000千円×5人×6日)、町並み写真および動画の合成と編集の補助作業15万円(5000千円×5人×6日)の使用を計画している。 その他15万円として、日本建築学会や都市計画学会の学術論文誌への投稿掲載料10万円、調査にご協力いただいた地区の各世帯に研究成果を小冊子として配布するための印刷費5万円の使用を計画している。
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