2012 Fiscal Year Research-status Report
女性の生活空間としての江戸城本丸御殿大奥および大名屋敷にみる空間構成の実態と変遷
Project/Area Number |
24760517
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
服部 佐智子 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 東工大特別研究員 (20614126)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大名屋敷 / 女性 / 金沢城 / 加賀藩 / 生活空間 / 空間構成 |
Research Abstract |
本研究は、大名屋敷における女性の生活空間の実態と空間的変遷を明らかにすることを通して、上層武家住宅の女性の生活空間の特質について新たな知見を提供することを目的にしている。本調査研究の初年度に当たる平成24年度は、史料の所在が確認されている石川県において、金沢城および加賀藩に関する史料照会、史料収集、現存する金沢城関連施設の調査及び史料所蔵機関関係者との研究・調査打ち合わせを実施した。調査内容は、以下の通りである。 金沢城および加賀藩に関する史料を最も多く所蔵している石川県立玉川図書館近世史料館において、史料照会、写真撮影及び撮影済みのマイクロフィルムの複写依頼による史料収集を2012年12月(約1週間)に実施した。また加賀藩前田家の現存する奥向き御殿である成巽閣において、調査協力について折衝及び史料照会を行った。 また本年度の2回目の史料調査では、史料の所在が確認されている石川県立玉川図書館近世史料館、石川県立歴史博物館、石川県立図書館において金沢城および加賀藩江戸藩邸の建築図面調査及び写真撮影によるデータ収集を2013年2月(約10日間)に実施した。 収集した史料を元にして、各種の絵図史料を経年的に分析し、金沢城二の丸御殿御広式廻りにおける部屋構成に関する検討、金沢城二の丸御殿御広式廻りの居住空間に関する検討等を行い、金沢城二の丸御殿御広式廻りにおける計画理念について一定の知見を得た。なお、上記の研究成果の一部は、2012年度日本建築学会関東支部研究報告集II、2013年度日本建築学会大会学術講演梗概集等において報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料調査に関して、本年度は2回調査を実施したが、そのうち1回は、石川県立歴史博物館のリニューアル工事に伴う来年・再来年度の休館のため、石川県立玉川図書館近世史料館の史料調査予定を変更し、石川県立歴史博物館、石川県立歴史博物館で実施した。この変更は、本年度と来年度の史料調査の順を入れ替えただけであり、研究計画に全体に影響を及ぼすものではない。またこの変更により、史料照会について、石川県立玉川図書館近世史料館だけではなく、石川県立歴史博物館、石川県立歴史博物館でも行うことができ、収集すべき史料の全体把握を広範囲で行えたことから、当初の計画以上に進展しているといえる。さらに、今年度の史料照会により、絵図史料以外に、工事記録や行事記録などの文書関連史料についての所蔵が確認されたことから、当初の計画通り、設備空間・室内意匠・実態から空間構成を包括的に捉える手法で検討を進められると予想される。 研究分析については、収集した絵図史料の分析を着実に進めている。また当初は加賀江戸藩邸を中心に行う予定であったが、金沢城の御殿についても検討することにより、加賀藩前田家の奥向き御殿を総合的に検討することが可能となると考え、研究分析を進めている。なお、金沢城の御殿に関する史料は、同じ史料機関で史料収集が可能であることとから、研究計画に全体に影響を及ぼすものではない。 以上から、現在までの達成度としては、「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
○国内での史料調査の継続:平成24年度に引き続いて、金沢城、加賀藩江戸藩邸の各種絵図史料や文献史料について、石川県立玉川図書館近世史料館、財団法人前田育徳会などで継続して史料収集を行う。また、今年度の資料所在調査の結果、金沢城、加賀藩江戸藩邸の各種絵図史料について、成巽閣、富山県立図書館、三井文庫、東北大学付属図書館などにも数点あることが確認されたことから来年度以降の調査に加えることとする。調査は1名で行い、1週間程度の滞在を2回程度もしくは、2週間程度の滞在を1回程度予定している。 ○史料考証の総括:新たに収集した史料の史料考証を行う。前年度の検討結果を踏まえ、時代的変遷を復元的に考察する上で最も適正と考えられる絵図の選定を行う。 ○平面構成の検討の総括:加賀藩江戸藩邸の奥向きにおける平面構成の変遷について分析し、造営年代による変化をとらえる。 ○設備空間、室内意匠の検討:御湯殿・御用場の仕様や変遷の検討を通して、藩主や正室をはじめとする女性の生活空間の変容を考察する。部屋の室内意匠の特徴を明らかにし、その仕様が各部屋によってどのように使い分けられていたかについて検討をする。 研究分析の結果を、各種学会の研究報告会、論文等で随時報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記した通り、本年度の調査は、所蔵史料機関の都合上予定を一部変更し、石川県立歴史博物館、石川県立歴史博物館で実施した。一方、本来の史料調査予定であった石川県立玉川図書館近世史料館では、史料の一部がマイクロフィルムもしくはデジタルデータ化されている。複写依頼する場合に、1データにつき複写料金が発生するため、規模の大きい絵図について、複写代金が高額に上ることが予想される。また首都圏及び石川県以外の機関に所蔵されている史料については、数が限られていることから、出来る限り郵送による複写申請を予定しており、今年度以上に複写代金が掛かると予想される。以上から、若干ながら、可能な限り予算を次年度のために残すこととした。 したがって、次年度使用額を含めた次年度の研究費の大部分は、今年度同様に、史料調査の旅費、書籍購入費に充てることを予定している。また、必要に応じて、調査機器の更新のための費用に充てることを予定している。
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