2012 Fiscal Year Research-status Report
戦後住宅建築の評価の確立と良好な住宅ストックシステムの構築に関する研究
Project/Area Number |
24760524
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
亀井 靖子 日本大学, 生産工学部, 講師 (50386083)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戸建建売 / 住宅ストック / DOCOMOMO / 維持保存 / 価値評価 / 初等教育 / オープンアーキテクチャー |
Research Abstract |
1)戸建建売住宅団地コモンシティ星田の経年変化に関して、アンケート調査・観察調査・ヒアリング調査を行った。分譲後20年を迎えて居住者の平均年齢は41.3歳から58.5歳へと高齢化し、夫婦のみの世帯は14%から31%に増えている。住戸の更新は良好で、空き家と借家が各1戸あるのみである。世代交代はもう少し先と考えていいいだろう。建築協定に守られていることもあり、住戸改変は数えるほどしか起こっていない。居住者はコモンシティ星田が建築家設計による実験住宅であることを認識し、建築協定委員を中心に維持管理を行っていた。一昨年には建築協定の更新を行っている。居住者の住まい方が、住宅自体や団地景観に影響を及ぼすことは少なく、分譲当初とほぼ変わらない団地景観を維持している結果となった。 2)DOCOMOMO Japanに選出されている住宅31作品の資料収集を行い、ミニマムフィッシュ(建物のカルテのようなもの)の登録項目に基づいて整理を行った。首都圏にある6作品については現状の外観調査を、4作品については見学会で内部状況の把握もできた。宮脇壇の「松川ボックス」についてはリビングの照度と明るさ感(Feu値)を測定し、模型による実験値と比較した。結果、①天窓からの壁が斜めであるため、光が壁をなめるように伝い障子で反射拡散されて室内にやわらかな明るさを作り出していること、②日中は人工照明によらなくても十分な明るさがあることが分かった。 3)ICOMOS20世紀委員会についての資料収集では、20世紀建築遺産の保存のための取組み手法について書かれた「マドリッドドキュメント」についての勉強会に参加した。国ごとに建物の保全管理に関しての考え方やとらえ方に異なる部分があるため、マドリッドドキュメントの日本版を作成する必要があるとの見解が出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ICOMOSから2011年に発表されたマドリッドドキュメントについては、ICOMOS20世紀委員会の委員である山名善之氏を交えた勉強会に出席し資料を得た。その他、モダンムーブメント建築の維持保存・評価についての資料をフィンランドで開催されたDOCOMOMO International Conferenceの発表会や見学会で収集することができた。 2)コモンシティ星田の住戸改変と維持管理に関する調査については、居住者を対象にアンケート調査を、建築協定委員会と居住者6人を対象にヒアリング調査を行った。建築協定委員会に出席し情報を得ることもできた。住戸プランの実測調査は居住者の協力が得られず行えなかったが、住戸外構の観察調査は全住戸について行った。これにより、建築家設計の建売住宅団地における経年変化と維持管理について知見を得ることができた。平成25年度の建築学会大会で発表予定である。 3)DOCOMOMO Japan 150に選出されている住宅建築31作品については当時の雑誌からの資料収集と整理を行った。見学可能な住宅については4件の観察・参加型調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Mutural Housing Associationを対象とした調査が難しいことが判明したため、日本・海外(欧米・アジアを中心)における戦後戸建住宅の事例収集と、可能であれば事前調査を行う。また、欧米で先進的に行われているオープンアーキテクチャーの事例収集を行い、住宅建築の評価と一般市民の建築への関心(評価)に関するヒアリング調査や資料収集を行いたい。 DOCOMOMO Japan 150に選出されている住宅建築31作品については引き続き文献調査を行い、調査協力をいただける住宅についてはヒアリング調査を行う。一般公開している住宅についてはボランティアガイドなどの関係者へのヒアリング調査と見学者へのアンケート調査を行い、住宅建築の維持保全と価値評価についての知見を得る。 Docomomo Asia開催に合わせ、韓国・香港・台湾を中心としたアジアの近代住宅建築の維持保存や住宅評価についてもヒアリング調査と現地調査を行い、可能な限り資料を収集する予定である。 日本の初等教育機関や自治体を対象に、住宅や建築に関連する教育・活動についての調査を行い、現状を報告する。一般市民の建築への価値評価の確立や維持保全活動への一助になればと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)日本と海外の戦後戸建建売住宅の資料収集と現地事前調査を行うことから、現地までの渡航費と調査補助学生の渡航費・作業費が必要となる。 2)DOCOMOMO Japan 150選出の住宅建築で見学可能な住宅について、アンケート調査もしくはヒアリング調査を計画をしており、協力者への謝礼、交通費、補助学生の作業費が必要である。 3)初等教育機関もしくは自治体に建築教育・活動について、郵送によるアンケート調査を考えているため、郵便代と印刷費が必要である。また、協力いただける学校や自治体にはヒアリング調査も行いたいため、その交通費と謝礼を予定している。
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