2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後住宅建築の評価の確立と良好な住宅ストックシステムの構築に関する研究
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24760524
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
亀井 靖子 日本大学, 生産工学部, 講師 (50386083)
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Keywords | 戸建住宅 / 維持保存 / 住宅ストック / DOCOMOMO / 継承 / 住宅評価 |
Research Abstract |
1)ドコモモジャパン164に選定されている「栗原邸」(1929年・本野精吾)とJIA新人賞受賞作品「笠間の家」(1981年・伊東豊雄)を対象に、保存継承経緯と見学者の維持保存を含む建築への意識を、ヒアリング調査とアンケート調査により明らかにした。 「栗原邸」では継承者(所有者)の保存継承への意識の高さと周りのサポートが、「笠間の家」では所有者の住宅へのこだわりと関係者による維持管理の継続が、住宅の保存継承において重要であった。 見学者は両住宅とも年代・男女比に偏りがなく、建築への興味を持つタイミングもその時期(義務教育・高校大学・社会人以降)に偏りがなかった。一方、興味を持った時期で、何に影響を受けて建築に興味を持ったかが異なり、義務教育では家族など「選べない環境」からの影響が多く、社会人では自宅の建替え等「必然性による影響」が多かった。住宅の保存意識については「笠間の家」のみの調査結果となるが、男女では男性の方が自宅を残したいと考えていた。また、自宅を残したいと考えている人が男女合わせて92名(47%)いるものの、「残したい家」は民家などの古建築もしくは有名建築家による住宅がほとんどで、自宅との回答は1名だった。以上より、自住宅の保存継承には居住者の意識改革が必要であることが分かった。 2)ドコモモインターナショナル代表アナ・トストエス氏の来日に合わせてヒアリングを行えたことで、近現代建築の維持保存に関する考え方・進め方について最先端の情報を得ることができた。特に、神奈川県立近代美術館の価値のひとつを“中世の街並みに近現代の建物が調和していること”に置いており、建物保存においては景観形成や地域・風土との関係性も重要であることと、神奈川県立近代美術館がその稀有な事例であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)保存継承された2つの戸建住宅を対象にアンケート調査とヒアリング調査を行うことができたことは非常に良かったが、回答者の負担軽減を考慮しアンケート項目を減らしすぎてしまったため分析があまりうまくいかなかった。また、「笠間の家」については先方の意見を反映させたことでアンケート内容にばらつきが出てしまった。しかしながら、少ないデータを様々な観点から分析し、ある程度の結果は導き出せたと思う。 2)大学業務や学会関連業務に多くの時間を割くこととなり、メインとしたかった海外出張調査がほとんどできなかった。その分、文献調査を進めるように努めた。 3)予定外に良かったことは、ドコモモインターナショナル会長から建物の維持保存と活用についての意見や世界の動向が伺えたことで、それらの情報は今後の研究指針となると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)平成26年度はドコモモ国際大会がソウルで開催されることから、韓国における住宅の保存継承の課題や先進的な事例についての資料収集を行う。同時に、論文発表やシンポジウムなどの資料から、保存継承の最新事例等の情報収集を行う。 2)ドコモモジャパンに選定されている住宅建築に関する既往論文と設計者による論文を調査し、住宅建築の保存継承に関わる建物価値の所在について明らかにする。同時に一般のファッション雑誌等に掲載される住宅関連特集について、年代による取り上げられ方から住宅建築評価の変遷を明らかにし、良好な住宅ストック運用の有効な資料を提供する。 3)昨年度に引き続き、ドコモモジャパン164に選出されている住宅建築31件を対象に、住宅の保存継承と住宅評価について、見学・参加型調査、関係者へのヒアリング調査を行う。 4)日本の郊外戸建住宅地の中で分譲当初の資料があるものについて、増改築・建替え等の変遷について調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた海外での事例収集・事前調査が、大学業務などにより日程的に実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。 ソウル(韓国)における資料収集をメインに、海外での事例収集・事前調査を行う予定である。 同時に、現実的に長期海外調査の日程を組むことが難しいことから、日本での事例調査を頻繁に行うことも考慮したい。
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Research Products
(2 results)