2012 Fiscal Year Research-status Report
黒海周辺地域における中世組積造建築遺産の系譜と保存継承に関する研究
Project/Area Number |
24760528
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
Principal Investigator |
鈴木 環 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 特別研究員 (20523757)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東欧 / 文化遺産 / 教会 / 修道院 / ブルガリア / ルーマニア |
Research Abstract |
黒海周辺地域の中世建築を対象に、建築技術の視点で広域的なフィールド調査を行い、その系譜と今日までの継承過程を宗教・民族・イデオロギーに偏らない視点で再構築することを目的とし、またその成果を文化遺産の保存と活用へ還元することを目指す。 1.Balkan Heritage Field School (BHFS)と連携した調査活動 ブルガリアのBalkan Heritage Field Schoolは、2007年より中世の教会・修道院建築と壁画のドキュメンテーション活動「Fresco Hunting Photo Research Expedition to Medieval Balkan Churches」を実施している。この活動と連携し、ソフィア~ドラゴマン地域一帯(ブルガリア・セルビア国境付近)に分布する組積造教会建築と壁画を包括的・横断的に調査し、同時に将来的な保存修復にむけた基礎資料の整備を目指した調査を実施した。2012年5月の調査では、①カロティナ教会(1331-34)、②チェパルネツィ教会、③バルシャ教会、④マロマロヴォ教会、⑤ベレンデ教会(14C)を主な対象とした。現地・海外のボランティアと連携し、建築の実測調査(簡易測量、写真測量)と壁画の写真撮影を実施し、最新の現況図面を作成した。 2.組積造教会・修道院建築の調査(ブルガリア、セルビア、コソヴォ、アルメニア)では、 12世紀~15世紀頃の教会建築を中心にフィールド調査(写真撮影、簡易実測)を行い、また各国の研究機関・アーカイブにおいて、図面史料、古写真、絵図等の収集を行った。 3.トルコ・カッパドキアに関する調査では、過去の修復に関する資料の収集と整理を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.組積造教会・修道院建築に関するフィールド調査(ブルガリア、セルビア、コソヴォ、アルメニア)では、バルカン半島の建築が後期ビザンチン建築から独立し、外来様式(ロマネスク・イスラーム・コーカサス)を受容してゆく過程の一端が見られ、研究計画時の仮説に沿った成果が得られたといえる。今後の調査の継続によって、その全体像の解明が期待される。 2.Balkan Heritage Field School (BHFS)と連携した調査活動では、当該年度に予定していた、カロティナ教会を中心としたデジタル図面の作成を達成した。この図面を基盤とし、平成25年度はさらに発展した調査を実施する予定である。詳細な保存状態の調査、石積み等構造調査、図像学的調査等における活用、および現地専門家との情報共有が期待される。 3.トルコ・カッパドキアにおける現地調査は、現地機関との事業の調整により次年度に延期した。 以上の研究の最新の成果は、中世建築研究会、日本建築学会東洋建築史研究会、日本ビザンツ学会において発表した。また、東京文化財研究所が実施したアルメニア文化省副大臣招聘・研究会を通して知識を共有した。 以上の通り、3年間の研究計画の導入としての調査成果が十分に得られており、また諸機関との協力体制においても今後の調査の準備が整っていることから、予定される研究計画を十分に達成できると期待される。よって、研究計画は全体的に順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Balkan Heritage Field School (BHFS)と連携した調査活動 今年度も、ブルガリアのBalkan Heritage Field Schoolの活動と連携し、ソフィア~ドラゴマン地域一帯(ブルガリア・セルビア国境付近)に分布する組積造教会建築と壁画のドキュメンテーションを実施する。とりわけ①カロティナ教会(1331-34)、②チェパルネツィ教会、③バルシャ教会、④マロマロヴォ教会、⑤ベレンデ教会(14C)を主な対象とし、現地・海外のボランティアと連携し、建築の実測調査(簡易測量、写真測量)と壁画の写真撮影・写真測量、および将来的な保存修復にむけた損傷調査を実施する。 2.組積造教会・修道院建築の調査(セルビア等旧ユーゴ諸国、ルーマニア、トルコ、コーカサス) 12世紀~15世紀頃の教会建築を中心にフィールド調査(写真撮影、簡易実測)を行い、また各国の研究機関・アーカイブにおいて、図面史料、古写真、絵図等の収集を行った。本年度もフィールド調査を継続し、建築計画、技術、構法、材料、装飾を包括的に分析する。ビザンチンの伝統的な形式とロマネスク・ゴシック・イスラーム・コーカサスの多様な外来様式が折衷してゆく、中世の技術交流のダイナミズムを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.Balkan Heritage Field School (BHFS)と連携した調査活動の実施のための旅費、および実施に必要とされる消耗品購入費用を計上する。 2.組積造教会・修道院建築の調査(セルビア等旧ユーゴ諸国、ルーマニア、トルコ、コーカサス)の実施のための旅費、および実施に必要とされる消耗品購入費用を計上する。 また、上記の実施した教会・修道院建築の調査図面の整理・デジタル化のための謝金、学会・研究会等における成果発表のための費用、その他消耗品等費用を計上する。
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Research Products
(6 results)