2014 Fiscal Year Annual Research Report
黒海周辺地域における中世組積造建築遺産の系譜と保存継承に関する研究
Project/Area Number |
24760528
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
鈴木 環 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 研究員 (20523757)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黒海 / 教会建築 / 文化遺産 / 保存 / ビザンツ |
Outline of Annual Research Achievements |
バルカン半島からトルコ、コーカサスにいたる黒海南岸諸国には、東方キリスト教の教会・修道院建築遺産が数多く分布している。多様な民族・宗教が混在するなかで文化面でのアイデンティティの確立が求められ、文化遺産の位置づけが極めて重要な意味をもつ。本研究では、黒海周辺地域の中世建築を対象に建築技術の視点で広域的なフィールド調査を行い、その系譜と継承過程を宗教・民族・イデオロギーに偏らない視点で再構築することを目的とし、またその成果を文化遺産の保存と活用へ還元することを目指す。 本研究では、Balkan Heriage Field Schoolと連携した中世の教会建築の保存事業においてこれまで実施した現地調査の成果をもとにドキュメンテーションデータベースを完成し、現地研究者と連携し、今後の保存修復にむけた活用方法を検討するとともに、中世のバルカン半島における教会建築様式の系譜の再構築にむけた分析を行った。 また、トルコ・カッパドキアの岩窟教会堂においては、現地研究機関と共同で実施した高精細写真撮影データをもとにベースマップを作成し、保存状態を詳細に記録したデジタルアーカイブを構築した。建築と壁画の全体像と詳細な保存状態を1つのデータで判別可能とする本データを活用し、建築と壁画の形式の技術的な解明を行い、教会の建設プロセスの再解釈を行った。また、壁画保存の専門家、自然科学的手法分析チーム、地盤解析チームと共同で劣化のメカニズムに関する分析を行い、岩窟教会堂の保存にむけた複合的な研究を実施した。 以上の調査を集約し、黒海周辺地域の中世建築の系譜について、俯瞰的な視点と現場での調査の双方から再解釈を行うとともに、文化遺産保護の観点からも現場に還元しうる研究の成果が得られた。
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Research Products
(3 results)