2012 Fiscal Year Research-status Report
ポリアニオン型リチウムイオン電池正極材料におけるX線分光の高精度第一原理計算
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24760537
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池野 豪一 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 助教 (30584833)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リチウムイオン二次電池 / XANES / 第一原理計算 / 量子化学 / 密度汎関数理論 |
Research Abstract |
本研究では,ポリアニオン系リチウムイオン二次電池正極材料における遷移金属L2,3端X線吸収端近傍微細構造(XAENS)スペクトルの理論計算を系統的に行い,充放電時における遷移金属の電子状態変化とスペクトル形状の関係を明らかにすることが目的である.複数原子からなる配位子を持つ遷移金属化合物L2,3端XANESの解析には,多数の軌道からなる活性空間を考慮し,電子間相互作用をあらわに取り扱うことができる計算手法が必要である. そこで,平成24年度においては,多数の原子,分子軌道を含むモデルにおいて,電子間相互作用をあらわに取り扱電子状態計算手法として,直接配置間相互作用(直接CI)法および密度行列繰り込み群(DMRG)法のプログラムの開発を行った.また,得られた基底状態の波動関数から,グリーン関数法によりスペクトルを計算するプログラムの開発を行った. 新しく開発した計算プログラムの妥当性を検証するために,まずは単純な遷移金属酸化物のL2,3端XANESの計算を行い,多電子系ハミルトニアン行列を完全対角化して得られる固有関数から計算したスペクトルを参照として比較した.その結果,直接CI法による計算では,同形状のスペクトルが得られることが分かった.一方,DMRG法においては,軌道の順序付けの仕方によっては,基底状態よりもエネルギーが高い状態に収束してしまうことがある.その様な場合にはスペクトル形状が大きく異なっており,今後,最適な軌道順序を求めるため更なる検討が必要である.プログラム開発と並行して,密度汎関数法に基づくバンド計算を用いてリン酸塩系正極材料LiMPO4(M=Mn,Fe,Co,Ni)について,リチウム脱離前後の原子構造を決定し,スペクトル計算に用いるモデル構造を構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,遷移金属L2,3端XANESの計算に必要なプログラムの開発が平成24年度にほぼ完了している.また,モデル構造構築についても,予定通り,リン酸塩系正極材料において遷移金属原子のスピン状態や,Jahn-Teller歪みの有無を考慮したバンド計算が完了した.
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Strategy for Future Research Activity |
リン酸塩系正極材料について,バンド計算で得られた構造を元に,直接CI法および相対論DMRG法により遷移金属L2,3端XANESの計算を系統的に行う.リン酸塩系正極材料の計算に引き続き,ケイ酸塩系のLi2MSiO4,およびそれからLiイオンが脱離したLiMSiO4,MSiO4についても同様の計算を行う.これらの計算を通して,遷移金属L2,3端XANESスペクトル形状の電子状態(価数,スピン状態),局所構造(配位数,結合距離,対称性)依存性を明らかにし,実験スペクトルの解析に利用できる”theoretical fingerprint”集として発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度おいては,ポリアニオン系正極材料について系統的な計算を実施する予定である.それに伴い計算能力の増強が必要であることから,新規にワークステーションを導入する予定である.また,得られた成果を学会,投稿論文として発表するための経費にも活用する予定である.
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