2013 Fiscal Year Annual Research Report
ポリアニオン型リチウムイオン電池正極材料におけるX線分光の高精度第一原理計算
Project/Area Number |
24760537
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
池野 豪一 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (30584833)
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Keywords | リチウムイオン二次電池 / XANES / 第一原理計算 / 量子化学 / 密度汎関数理論 / 多体効果 |
Research Abstract |
リン酸、ケイ酸等のポリアニオンを持つ遷移金属化合物は次世代リチウムイオン2次電池の正極材料として期待されている。充放電過程における遷移金属の酸化・還元状態変化を調べる上で遷移金属L2,3端X線吸収分光(XANES)は有力な実験手法であるが、その解析には量子論に基づく理論計算が欠かせない。本研究では、多数の軌道に存在する電子間の相互作用をあらわに取り扱う新しいXANESの多電子系計算法の開発し、ポリアニオン型正極材料における遷移金属L2,3端XANESの理論計算を通じてスペクトル形状と電子状態の関連を明らかにすることが目的である。 平成24年度においては、多数の電子間の相互作用をあらわに取り扱う計算手法として直接配置間相互作用(直接CI)法および密度行列繰り込み群(DMRG)法のプログラムの開発を行った。また、得られた基底状態の波動関数から、グリーン関数法によりXANESスペクトルを計算するプログラム開発を行った。 平成25年度は、リン酸塩系正極材料LiMPO4(M=Mn,Fe,Co,Ni)についてM-L2,3端XANESの系統的な計算を行った。まず、Li脱離前後の原子構造をバンド計算により決定した。得られた構造を元にM-L2,3端XANESの価数,スピン状態,および結晶構造依存性について、DMRG法を用いて系統的に計算した。 本研究で得られた理論スペクトルは theoretical fingerprint として、実験スペクトルと直接比較し、解析を行うことが可能であり、新しいリチウムイオン電池正極材料の評価へと利用できる。また、本研究で開発したDMRG法は遷移金属d電子、希土類f電子といった強い電子間相互作用を精密に扱える計算手法であり、今後これらが関わる物性(光学特性、磁気特性など)の高精度計算へと応用が期待される。
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