2012 Fiscal Year Research-status Report
金属固溶体中における軽元素の固溶限と拡散性を計測する新たなメソドロジーの確立
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24760540
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
関戸 信彰 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主任研究員 (10462516)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 拡散 / グロー放電発光分光分析 / 軽元素 |
Research Abstract |
希少金属の使用量低減は,持続可能な社会の構築に不可避な命題である.社会基盤材料である構造用材料には,種々の希少金属が添加元素として使われている.とりわけ,鉄鋼は生産量が莫大であるため,添加元素の濃度は微量でも,トータルでは大量の希少金属が消費されている.もし,資源として豊富であり,B(ホウ素),C(炭素),N(窒素)等軽元素の挙動をより詳細に理解し,制御することが出来れば,希少金属を使わずに同等の材料特性を引き出すことが可能となり,ひいては希少金属使用量の削減に繋がる. 軽元素の挙動を理解する上で最大の難関は,その局所領域での定量分析の困難さにある.一例として鉄鋼材料におけるBの効果を上げると,僅か20 ppm程度のB添加で焼入性が著しく向上することが知られているが,EPMA-WDSの感度ではBの局所的な存在状態が定量分析できないため,メカニズムは未解明のままである.さらに,金属固溶体中おける固溶限といった基礎的な熱力学データですら,信頼性に欠く現状である. 以上の背景から,本研究では軽元素の固溶限を計測する新たな手法を提案し,その有効性を確認することを目的とした.本手法の骨子は,まず金属基材表面にBあるいはCを蒸着し,それらを内方拡散させ,グロー放電発光分光分析(GD-OES)で深さ方向の濃度を計測し,濃度プロファイルから固溶限を求めることである.本年度は,比較的研究データが充実しており,状態図が簡素であるNi-C二元系において,本手法の有効性を検討した.その結果,計測したNi中におけるCの固溶限を過去のデータと一致しており,本手法が固溶限の決定に有効であること確認した.この結果を受け,本手法をPt-C系に適用して,現在までに報告例のないPt中におけるCの固溶限を決定することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置の故障により当初の計画を上回る成果を出すことはできなかったが,おおよそ計画通りに進んでいる.本手法の有効性をNi-C系で確認できたこと,そして今までに報告のないPt-C系での測定データを獲得したことは評価できる.現在Pd-C系のCの固溶限を測定しているところであるが,データがまとまり次第,投稿論文として結果を公表する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における目的の一つは,軽元素の固溶限を計測する新たな方法論を確立することである.現在までに本手法の有効性をNi-C系で確認することが出来たが,さらに手法の信頼性を確保する必要がある.そこでPd-C系についても測定を行うとともに,本手法以外での固溶限の測定を行い,比較検討を行う. また,本年度は,本題のBの固溶限の計測に挑戦する.Bは定量分析が困難であるため,C系よりも固溶限測定の難易度が高い.実際に,固溶限に関する研究報告例が少ない,未踏の領域である.すなわち,本手法によりFe中におけるBの固溶限やMo中におけるBの固溶限が正確に計測することが出来れば,学術的価値が高い.予備実験では,測定結果のばらつきが大きく,結晶粒径の違いが影響している可能性が示唆された.そこで,結晶粒を大きくし,その影響を低減することとした.その際,高純度のFe箔を汚染することなく結晶粒を粗大化する熱処理を行う必要があり,湿水素雰囲気中での熱処理を計画している.さらに,Fe2B単相を合成し,それと純Feとの拡散対実験からの固溶限の決定にも着手し,可能であれば拡散係数を求める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の主な使途は,実験消耗品および外部依頼の組成分析料である.本研究では,高純度溶解原料からアーク溶解し,結晶粒を粗大化した試料を基材に用いる.軽元素の固溶限が極めて小さい場合は極微量の不純物の影響が懸念されるため,超高純度の原料の購入が必要であり,また粗大粒組織が得られない場合には単結晶を購入する必要がある.そのため,原料費に50万円程度確保する.平行精密治具の購入には40万円,外部依頼分析料に50万円確保する.拡散対治具,真空封入管などのガラス用品,有機溶剤,研磨紙,理化学用品等の消耗品ならびに熱力学計算ソフトウェアに120万円確保する.2度の国内学会参加のための旅費と研究成果発表費用などに20万円確保する.本年度繰り越し分を含め計280万円の研究費を使用する予定である.
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